Far-red light inhibits lateral bud growth mainly through enhancing apical dominance independently of strigolactone synthesis in tomato
Song et al. Plant Cell & Environ (2024) 47:429-441.
DOI: 10.1111/pce.14758
赤色(R)光/遠赤色(FR)光比の低い光(遮光シグナル)は、わき芽の生長を抑制する。この過程には、オーキシン、サイトカイニン(CK)、ストリゴラクトン(SL)などの植物ホルモンが関与している。中国 浙江大学のXiaらは、トマトのFR光によるわき芽生長阻害機構について解析を行ない、頂芽を除去するとFR光照射によるわき芽の成長抑制が消失することを見出した。よって、わき芽生長は頂芽優勢と関連していることが示唆される。qPCR解析の結果、FR光照射に応答して、SL生合成遺伝子のCAROTENOID CLEAVAGE DIOXYGENASE 7(CCD7)、CCD8、MORE AXILLARY GROWTH 1(MAX1)、オーキシン生合成遺伝子のFLOOZY 1(FZY1)、FZY2 の発現が増加し、CK生合成遺伝子isopentenyl transferases 1(IPT1)、IPT2、ブラシノステロイド(BR)生合成遺伝子のde‐etiolated 2(DET2)、constitutive photomorphogenesis and dwarfism(CPD)、DWARF(DWF)の発現は抑制されることが判った。SL生合成変異体ccd7、ccd8 は、わき芽量が増加するが、FR光照射することでわき芽生長は強く阻害され、頂芽のIAA濃度は野生型植物と同様に有意に増加した。また、頂芽におけるFZY1 の発現は、野生型植物、ccd 変異体ともにFR光によって誘導された。FR光の代わりにオーキシンアナログであるNAAを処理することでもccd 変異体のわき芽生長は有意に抑制された。これらの結果から、FR光によるわき芽の伸長抑制は、SLとは独立しており、オーキシン生合成の誘導と関連していることが示唆される。節茎におけるCK生合成はオーキシンによって阻害され、CKはわき芽の生長調節においてSLと拮抗することが知られている。そこで、節茎中の内生CK量を調査したところ、トランスゼアチンリボシド、イソペンチルアデニンリボシド量は野生型植物と比較してccd 変異体で増加していること、FR光照射は野生型植物とccd 変異体の両方でCKの蓄積とCK生合成遺伝子(IPT1、IPT2)の転写を阻害することが判った。さらに、ほとんどのCK応答遺伝子もFR光照射によって有意に発現量が低下した。また、NAA処理をすることでccd 変異体のCK蓄積とCK生合成遺伝子の転写量が減少した。合成CKの6-BA処理は、野生型植物のわき芽成長を促進し、FR光下での野生型植物とccd 変異体のわき芽の生長阻害を緩和した。BR生合成遺伝子(DET2、CPD、DWF)の発現は、FR光照射によって抑制されたが、6-BAを処理すると光条件に関係なく発現量が増加した。これらの結果から、わき芽の生長は低R:FR比に応答したCK量の減少によって制限されることが示唆される。ウイルス誘導遺伝子サイレンシングによってFZY1、FZY2 をサイレンシングさせて茎頂でのオーキシン生合成を阻害すると、わき芽生長が有意に増加し、FR光によるわき芽生長抑制は消失した。わき芽生長を抑制しているBRANCHED 1(BRC1)の転写は、FR光照射によって増加するが、FZY1/FZY2 サイレンシングによってBRC1 の発現誘導は消失した。これらの結果から、オーキシン生合成がトマトにおけるFR光による分枝制御に必須であることが示唆される。FZY1/FZY2 サイレンシングや頂芽除去によりオーキシン量を低下させると、BR生合成遺伝子の発現が増加し生理活性BL量が増加した。また、6-BA処理はBR合成遺伝子転写産物量を増加させた。さらに、BR生合成遺伝子DWF の過剰発現によるBR量の増加は、側芽の成長を有意に促進し、わき芽生長はFR光の影響を受けにくくなった。したがって、オーキシンによるBR生合成抑制もFR光によるわき芽生長抑制に関与していることが示唆される。以上の結果から、トマトのわき芽生長の光による制御にストリゴラクトンは関与しておらず、オーキシンがR:FR比に対する応答を媒介することでサイトカイニンとブラシノステロイドの生合成を抑制することによってわき芽生長を抑制していると考えられる。