勘違いしてる。思い上がっている。強くも無いのに、口だけ。後でだったら、いくらだって言えらあ。
そう言われても仕方のない、長嶺克則のブログだった。
上の写真は今年2012年11月4日、後楽園ホールで行われた「東日本新人王決勝戦」、フライ級の試合の一瞬を切り取ったもの。
写真右側、薄いピンク色のトランクスをはき、茶髪の立て髪で、渾身のチカラを込めた左ストレートを放っているのが、佐藤拓茂(石神井スポーツジム)。
コーナーに詰め寄られ、ロープを背にして、右アゴにその威力あるパンチを喰らっているのが長嶺克則だ。
この試合、当日試合会場か、その後、CS放送の「日テレG+」で見た人は分かるだろうが、開始1ラウンドは、お互い見合って、相手の出方を探り、ポイントはどちらにも付かない、ドロー展開。
それは、試合後の控え室で、長嶺も認めたところ。
2ラウンドからは、互いに手を出した。長嶺は足を使い、佐藤は追う展開。
一進一退ながら、的確に、手数を多く出していたのは佐藤。数こそ劣るが、1発のパンチ力は、長嶺の方があった。
どちらが、ポイントを明確に取ったか、分からない試合展開。会場で見てた時は、ドロー(引き分け)かなあ、と。しかし、新人王戦はトーナメントで勝ち上がっていく形になっており、ドローの場合は改めてジャッジする3人に、どちらかに優勢点をつけさせる。
それで、辛くも長嶺の勝ちかなあと、判断していた。
ひいき目が無かったか? と、問われれば、あった。そう言わざるを得ない。私が書いた、長嶺の文を一読すれば、一目瞭然だ。
キャツチとして、KOの2文字を使ったが、初めて長嶺を見て、書きたい気にさせられたのは、スパーリング中、たえず先を読んだり、戦法を変えてみたりしてゆく上手さ、賢さだった。
担当トレーナーが仕事の時間の関係で、外部のジムへ行ってのスパーリングには付き添いにくいという事情がある。そのことにより、自分一人でラウンドごとの組み立てを考えざるを得ない。そういう背景も、あった。
そして、この日の相手は佐藤。高校時代からの、アマチュア歴はダテじゃなかった。
見るからに、長嶺はイッパイいっぱい、精一杯。余裕も無く、打ちあぐねていた。芯を打ち抜いたパンチは、少なかった。
勝負は、コレ! という決め手のないまま、全5ラウンド終了。
判定を待つ間、赤コーナーの佐藤は背中をリングに向け、立っていた。
一方の青コーナーに立つ長嶺は、明らかに不安そうな表情を見せていた。そこには、勝った!という自信のカケラも、覗けなかった。今回もまた、KOを逸した。
結果が、読み上げられる。
48-47で長嶺。次いで2人目は、逆に48-47で佐藤。これで、1対1。そして、最後。
客席は、その声をかたずを呑んで待った。
48-47で・・・・・・・・・・・・・・長嶺! 2対1の、わずか1ポイント差で、首の皮1枚つながり、長嶺が、やっと勝ち残った。
その瞬間、佐藤は背中を見せたまま、ヒザからガクッと崩れ落ちた。
一方、長嶺はホッとした表情に。
控え室に戻った長嶺は「痛え~」といって、顔や頭を冷やしていた。取材陣、と言っていいだろう、7人ほどが詰め掛け、囲み取材は踊り場で急きょすることに。
聞かれる質問は、試合のことより、長嶺が自身のブログに、浮かれた熱愛の如く登場させている「Rio」なる女との関わりについて、殆んどが費やされた。
初めて知った。その女が、AV”女優”だということを。それまで、あえて聞かずにいたから。
そうなんだあ。その世界なら、実態をよく知っている。
疑似が許された時代は、とうの昔。今はすべてホンバン。
世に出ているプロフィールは、全部うそ。親バレ、友バレ、故郷バレがこわくて、年齢、生年月日、出身地、経歴・・・・1つとして、本当のことは出さない。そして、借金と、重ねる整形。。Rioも、同様か。
彼女のキャッチ 「努力は、自信」? AVに身をどっぷり浸して、7年? 一体、その間に費やした「努力」って? 「自信」って?・・・・・・・・
「女優」という名ばかりの、ココロと虚栄心をくすぐる虚業。わずかなインタビュー料でさえ、ケータイ1本が「事務所」になるオトコに取られる。そのカネ、本人に渡してください。そう言われたのは、たった1人だけだった。
アダルトDVD業界の今も変わらぬ、いや、もっとひどくなった実態と、彼女の実像を、おそらく知らずに、憑かれたように、しゃべりまくる長嶺。多くの記者に囲まれて、嬉しそう。俺、スター?
その光景をデジカメで撮る友達数人。ギャルさえいる。
今のスポーツ新聞は、試合のことより、この類の「プラスアルファ」が無いと、書かない、取り上げもしない。
おかしな傾向だが、ジムも許容の範囲内とみてる。書かれてナンボということか。
医務室へと向かう長嶺に、声をかけた。
さっきAVの子のことばっかり聞かれて話してたけど、いいの?
「いんすよお」
またも、タメグチか・・・・
この日、同僚ボクサーらが見守る中、踊り場でトレーナーと最終調整してた時も、いきなりのタメグチ。
ほんの短期間で、礼節は忘れ去られ、見事にどこかに吹き飛んでいた・・・・
「負けた」佐藤にも話しを聞きたく、探し回った。やっと、リングに近い客席にいた所を見つけ、歓声と応援の声が交錯するなか、聞き始めた(写真下)。
「僕自身は、勝ってたと思ったんですよ。だから、2-1で負けたっていうのは、信じられなくって・・・・」
ヒザから崩れ落ちたのは、その心の現われだった。
その時は、実は軽く聞いていた。接戦でも、負けた人は大抵そう言うし、と。
「これで勝てないんだったら、どうしたらいいのか・・・。もうボクシング、やめたくなりましたよ」
そうですか、というしかなかった・・・・・・。
さて、どう書いたらいいのか、正直、ココロ揺れてた。佐藤に抱いていたイメージも、会って崩れ、話しを聞いて、ガラッと変わった。
一言でいうと、いいひと。
「そうなんすよねえ、いい人なんですよ~」
長嶺に聞いた答え方が、コレ。
気持ちがまとまらないまま、この試合映像をテレビで見た。じっくりと、見た。
えっ!? 勝ってる、完全に勝ってる、佐藤拓茂が!
解説をしていた、元世界チャンピオンの飯田覚士(さとし)は、佐藤の良さを終始指摘し、佐藤のリードと勝ちをクチにしていた。判定結果には、疑問を滲ませていた。
テレビは、試合を自分でも驚くほど冷静に観られる。どんなに親しくしているボクサーでも、熱くならず。テレビ画面は第三者として、一歩引いて観られる。
2度目は、改めてメモをとりながら観た。
やっぱり、長嶺が明らかに負けていた。ひいき目に観ても。
佐藤の手数多く、的確に打ち込んでいるし、叩き込んでいる。何としてでも勝ちたい! という積極性もある。ワンサイドではないが、長嶺が「痛え~」と言ってたほど身体に叩き込み、ポイントも取っていた。
3-0とまではいかなくても、2-0は有りだ。
う~ん・・・・思わず、心でうなった。どないしょ?
決して、ジャッジが大きく間違っていたわけじゃない。見方、取りかたによって、シーソーのように上下する試合だったともいえる。
そんななか、何気なく長嶺のブログを見た。
ええ~っ!!!
それは、試合を録画中継放送する「日テレG+」の放送前。見る人に、俺は試合中、こんなコトを考えながら、戦っていたんだよねえ、というようなものだった。
その中身たるや、どう考えても、あの苦境に立った試合とは、似ても似つかぬ、程遠いシロモノ。
”俺はさあ~。試合中、こんなに余裕持って、試合展開、アタマ良く、組み立てていたのさあ。すごいでしょ? 俺って、すごくない?”
”もう、実際は完勝だったのさ、じ・つ・は! 楽勝だったのさあ~、余裕さ~”
てな本音が飛び出してきそうな「長峰克則センセの、レクチャー論文」
そうかあ~???????
この思い上がり、この精神、事実経過とかけ離れた、浮かれきった勘違い。後出しジャンケンなら、いくらでも書ける、打てる。
ついでに、試合会場で無料で配布されている、ボクシングのフリーペーパーに、今度取材受けるのさと自慢げに予告吹聴。
・・・・・・・・う~ん・・・・・・・・・・・
率直な感想を、と聞くと、苦笑い。
「まだ学生でしょ?カレ。若いからねえ・・・」
「そうそう、言っておきます。私、ボクシング、続けることにしました。もう、ジムへ仕事終えて、通ってます。このままじゃ、終われませんよ!」
明るい声が、返ってきた。
そうですか。次、期待してます!
すぐ、そう返答した。
長嶺の、最近のブログを見ると、相変わらず、浮かれてる。ふわふわ、フワフワ。読んでて、この先の人間としての将来性にまで不安がよぎる。まだチャンピオンでもないのに、もうコレ!?
12月16日(日)、午後2時半頃か、東京の後楽園ホールで拳を合わせるのは、すぐ上の写真のボクサー、川村琢磨(たくま・畑中ジム所属)。彼と「全日本 フライ級新人王」の冠を争う。
勝者が、日本フライ級12位に、ランクインされる予定だ。
写真の川村。試合は残念ながら直接見たことは無いが、今までの戦績たるや、7戦して6勝1敗。6勝のうち5KO(TKO含む)を飾り、写真を撮った10月28日の「新人王 西軍代表決定戦」でも、先規鷹也(井岡ジム)を相手にして、2ラウンドKO勝ち。敢闘賞まで手にした。
パンチが、小さく鋭いとも、左ストレート、右ジャブが良いとの評もある。
愛知県春日井市出身。16日の3日後の12月19日には、23歳の誕生日を迎える。
またも気負ってKO狙いにきた長嶺に対して、逆に川村得意のカウンターで、浮かれた根性までも叩きつぶして、リングに這わす可能性もある。
その方が、長嶺克則という人間にとって、今は、良薬かもしれない