懐かしのバレエ

バレエ、パフォーミングアーツ等の感想、及び、日々雑感。バレエは、少し以前の回顧も。他、政治、社会、競馬、少女マンガ。

単行本「椿姫と娼婦マリ」

2009-03-16 00:17:26 | Weblog
小デュマの小説「椿姫」は、後世に名が残るほどヒットし、それ自体が面白いからオペラになってまたヒットしたとか、あるのだろうけど。

理想の女性マルグリットの心の美しさとアルマンの狂おしい情熱は、それはそれで、みごたえもあるのだけど・・・・。

でも、この小説のモデルとなった実在の女性と、作者小デュマとの関わりを知ってしまうと、自分的には、この現実がなかなか興味深かった。

実際の恋では、パリ・裏社交界の花、クルチザンヌのマリ・デュプレッシは、決して理想の女性ではなく、むしろ若い小デュマ、大作家の息子を翻弄し、大いに悩ませた金のかかるシックな美女だった。

センスがよく、満艦飾のおしゃれでなく、趣味の良い上品なおしゃれをする魅惑的な女性。そして、不実。少なくとも金のない青年にとっては。

小デュマがこの美人に恋し、付き合うほどの金も足りず、ブロークンハートで夢破れて別れた。

そして、この悔しい現実の中で、現実を凌駕する顔も美しく心も美しい高級娼婦、マルグリット像が誕生した。この現実との相克の部分が、私には最も面白く思えた。

こういった話を紹介した本が、「椿姫と娼婦マリ」だった。

そして、この史実に基づいたストーリーは、(ここは作者の想像も入ってるのか、日記か何かで詳細に確認とれてるのか知らないが)マリ・デュプレシが、小デュマと別れた後の事も描いている。

娼婦マリは、胸の病が進行する中、病み衰え、かつてより美貌が輝かなくなったころ、病んだ頬に濃い頬紅をつけ、厚めの化粧、そして自身を飾り立てた満艦飾のおしゃれで、劇場に観劇にゆく。

そのさまは壮絶であり、絵にかいたモチのように理想的なマルグリットより、私にはなんだか惹きつけられものを感じてしまった。

恋に苦悩し、ネガティブな想い、不実な美女にまつわる苦い現実を、ポジティブな理想に昇華させた小デュマの在り方も、その原動力となった現実の事も絡めてユニークだった。

一方、青年には裏切りを感じさせた金で愛を売る高級娼婦・マリの若き日の楚々たる美貌と、晩年の執念のような飾り立てての劇場通いにも、なにか心を動かされる美女の凄絶さを感じながら、私はこの本を読んだ。

本の後半には、傷心の作家が最晩年に本当の理想の女性とであう半分感動的な実話もある。不実で男を翻弄する、そして地に足のつかない生き方をする美女と、献身的な愛がなかなか伝わらない誠実な美女、前半と後半のコントラストも興味深い本だった。

どこまでジャスト史実でどこからが作者の想像が判らなかったが、こちらの方が、ノイマイヤー振付のバレエ「椿姫」より、私には面白かった。
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