想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

田舎であるが田舎者ではないよ

2011-02-23 14:45:03 | Weblog
ひさかたぶりの知人に会った。
いまは田舎で暮らしてるわよというその女性(ヒト)は
かつては都心にいて流行の先端を行く派手好みで鳴らしていた。
「トーキョーなんて久しぶりよ、もう田舎田舎、いいよー、道端歩いてるだけで
ほっとするもんね、落ち着いてるっていうか…」
「田舎から出てきたわよ~」と、会うなり言ったその人の言う田舎は別な意味が
込められているらしかった。

カラッと明るく人が変わったというか憑き物が落ちたように軽やかであった。
「みかけ変わらない、あいかわらずにしか見えないですよ」
美しいままの顔を見て言うと、そうお~とクシャクシャにほころんで笑う。
昔は目だけは笑わない人だったから(私の前でだけだったかもしれないが)
会わなかった歳月の、長かった時の流れを感じた。

センスのいい、愛嬌たっぷりのその人が、わたし、いま何と呼ばれてると思う?
と言って、ぷーちゃんよーと大きく笑う。
え、うちの犬と一緒じゃない、ぷー? ぷーちゃん?

そう、職場の法事の集まりでしーんと静まり返ってるとき、あれよ、
あれやらかしたのよ、あははははは。
我慢できなかったっていうより、油断したわけよね。
あはっ、周りの人、何て言った?
うん、あなた?と言われたから、そう、と答えて、だってそっとするつもりだった
のに失敗失敗、って言ったら笑われたのー、それからずっと、ぷーちゃんとか
ぷーさんとかみんなに呼ばれてる、あはははは。

へーっ、それ、うちの犬も同じ、だから二つ目のあだ名がプーちゃんだよ、
でも話し安くなったんじゃない? みんなよく話しかけるでしょ?
そうそう、そうなのね、とっつきにくくなくなったみたいで。



そりゃそうだろうなあと思った。昔、彼女は美人で気どり屋で、おまけに強気だった。
けれど、本当に隠し持っていたのは今目の前にあからさまになっている朗らかさと
美しい物が好きなだけの女の人のかわいらしさだった。

肩の力を抜いたというより、鎧を脱いだら華奢な女人が現れた、そんな変貌
ぶりに驚くというよりほっとして話がはずんだ。
カフェの店員がコーヒーのお代わりはいかが?と言ってきた二度目を断ると、
また近々会おうと約束して席を立った。
店の外でコートを羽織りながら、楽しかったーっと彼女は言って、そして、
ピョンと跳ねたのであった。

会ったら昔のことを謝ろうと思っていたが、そんな成り行きにはならず、
わたしは新しい友と出会ったような気がし、なんだかワクワクした。
手を振って別れ、帰り道、わたしもピョンとしたかった。
腰骨のコルセットがなかったら、二、三度、跳んでみせたいくらいだった。


コメント (2)
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