小首をかしげてこっちを見ている顔があまりに愛らしい。
ブチャは母猫シマコを真似て縁側へ座るようになった。
なんでも真似るのが見ていておもしろい。
縁側のガラス戸を開けると、ハァーッと威嚇するのも真似らしい。
東京での住まいの近くに野良猫の赤ちゃんを発見した。
この子を拾って下さいとばかりに道路脇で寝ていた親子‥5頭。
クルクルとした眼で母のお腹の上から周囲を見ていた。
用事を済ませて引き返したらチビはもういなかったがどうしたものか。
かわいい子をみると我が家のベイビーを思い出し無性に気になる。
このごろ夜寝るまでかまってあげる暇がないことがずっと気がかりでも
あって、ベタベタついて回るのをテキトーにハイハイとやりながら仕事
している毎日。だからよけいに気になるのであった。
そんでもって、失敗した。
爪切り! ベイビーは緊張するので切っている最中に足を引っ込めたり
する。だからほんの少しづつ削るように切っていく。
なのに引っ込めようとするのを止めようとしたら、切りすぎてしまった。
血が止まらないので、大慌てで消毒し、雲母液で血止めした。
舐めると血が止まらないのでバンドエイドを貼るが、3枚貼り替えて
やっと舐めなくなった。
その間ずっとひざ枕してもらってベイビーはごきげんちゃんであった。
こっちはドジな自分にうんざり、ごめんごめんと謝りっぱなし。
爪切りで思い出した。
死人を見守る神を冥爪神(くらつめのかみ)という。
冥界へすぐには移行できない死人を葬礼が終わるまで見守る。
爪は手足の端っこで身体内と外界との境である。
ツメとは押し迫る最後をさす言葉でもあるが、死は生の終わりであり、
また死後の幽身の甲(始め)である。
そういう意味から冥界のツメを見守る付き添い神を表す名を冥爪神と
言うのである(旧事本紀、陰陽本紀より)。
諸神が死人の汚れと醜さを忌みてそばにいないのでそれらに代わって
付き添う神、ありがたきことかな。
爪は大事である。
物事、ツメが甘いと失敗する。ま、いいや、では事は済まない。
「おおざっぱ」はおばちゃんの専売特許と心得るので気をつけている。
生来、ツメないと気が済まない質(タチ)であったので若い頃から
周囲に疎ましがられた事も数々あれど、歳を重ねてきたらことさらに
注意しないとツメが甘くなることに気づく。
逆だろ、オマエって自問する日々である。
「まあいいか ひとりごちたら オバタリアン」