Que ma vie est belle!

私とは、美しいもの、美味しいもの、楽しいものの集合体。

「彼は天才よ!」イーヴォ・ポゴレリッチ@ロイヤルフェスティバルホール、ロンドン

2010-11-25 19:30:00 | コンサート

イーヴォ・ポゴレリッチといえば、第10回ショパンコンクールの第三次予選で落選した際、マルタ・アルゲリッチが「彼は天才よ!」と抗議、審査員を辞任した、という伝説があまりに有名。それなのに、なぜかこれまで生で聴いたことのなかった演奏家。

さて、本当に彼は「天才」なのか?期待半分、不安半分で会場に向かう。いつもの通り、たった8ポンドのコーラス席。席に向かうと、誰かがステージの端に置かれたピアノを弾いている。コートを脱ぎながら、ステージの方向に顔を向けると、

目が合った。

え?もしかして、これがポゴレリッチ?

はっきり言って、どこの浮浪者か?といわんばかりの格好である。ニットの防寒帽をかぶって、ぼろぼろになった楽譜を横に置いて。でも、こんなに美しい音でピアノを弾くことが出来るのだから、これがポゴレリッチに違いない。しかし、広告の写真とあまりに違う。

曲はチャイコフスキーのPf協奏曲第1番。うわぁ、これまで聴いたことのあるこの曲とは全然違う。それにしても、このオケは何だ?淡々と弾いているだけ、全然ピアノに寄り添おうとしない。

ちゃんとポイントの音のタイミングはピアノとオケで外れないのだけれど、その音へ向かうアプローチがピアノとオケで全然違う。それをお互いが少しも合わせようとしないって、一体どういうこと?

既に62歳のポゴレリッチ、何故だろう、他の人たちと全然違うのに、心をつかんで離さない。ああ、やっぱり「天才」なのだわ、この人。

ロンドンでは10年振りの演奏だったらしい。空席があったのが不思議(勿体無い!!どこでもドアがあれば世界中から友達を呼びたい)-素晴らしい演奏家なのに。ちょっとエキセントリックなのかしら。

後半はショスタコのSym No.5。先ほどの演奏が嘘のように魅力的に聴こえた。このオケには、あるいはこの指揮者(Tugan Sokhiev)には、流れるような曲より、このショスタコのような縦に割ったようなリズムの曲が合っているのかもしれない。

今夜も素敵な演奏をありがとう。