他人なんかいらない

　俺ひとりでいい。もういい。
　他人と会話するのには正直疲れた。
　
　互いに噛み合ない主張を、それぞれの立場から言ってみてもはじまらない。俺はこれでも雇用されている身分だから、ずいぶんと譲ってはいるが、それでもまだ足りないらしい。

　小声で本音を言うなら、俺はあんたの理想とする手下になんかなりたいとは思っていない。

　誰とも会話したくない。
　他人なんかもう誰一人いらない。
　そっとしておいて欲しい。

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　まぁなんだね。お気楽に生きられりゃ、本当はそれでいいんだ。ただ、仕事を神聖視しすぎる人が多いので非常に疲れる。たかが、パン屋じゃん。パンに命をかけるなと言いたい。なんで、他人に精神的苦痛を与えつつ、自分も地獄の苦しみを味わいながらまでしてパンを作る必要性があるのかが、俺には正直わからん。

もう駄目

　もう駄目、もう許してと思いながら毎日働いている。
　頭を空っぽにして、怒りと焦りを忘れるようにして働く。

　人としてなら普通のごく優しい人が、職場という「現場」では人の心をなくし、平気で人の心をズタズタにするようなことを言う。感情的にへたりかけても、やる事は山ほどある。手だけは休めてはいけない。

　山ほどある仕事を、時間内に終わらせなくてはならない。
　気は焦るが、焦っては駄目だ。焦ると間違えたり、物を落としたりして、結果としてロスタイムを生む。結局、早く仕事を終わらせるコツは、手を休めない、そして間違えたり失敗したりしないという事だけだ。

　長時間立ちっぱなしの労働で、呆然となりかける精神を、必死で目の前の仕事に集中させる。心の集中を邪魔するかのように上司の小言が飛ぶが、怒ったり怖がったりしてはいけない。心の動揺はミスを生む。

　泣きそうになるが、泣いている暇もない。
　誰か助けてと思うが、誰も助けてくれない。

　なんで、こんなに仕事って辛いのだろう。

月曜の朝

気がつかなかったが、寝ている間に雨が降ったらしい。しかし、たいした雨ではなかったようで、地面がわずかに濡れている程度だ。今朝はくもりで、空全体を雲が覆っている。もう一雨ぐらい降るかもしれない。