世の人相逢ふ時、暫くも黙止する事なし。必ず言葉あり。その事を聞くに、多くは無益の談なり。世間の浮説、人の是非、自他のために、失多く、得少し。
これを語る時、互ひの心に、無益の事なりといふ事を知らず。
<口語訳>
世の人おたがい会う時、しばらくも黙止する事ない。必ず言葉ある。その事を聞くに、多くは無益の談である。世間の浮説、人の是非、自他のために、失多く、得少ない。
これを語る時、互いの心に、無益の事だという事を知らない。
<意訳>
世の多くの人、出会うと黙ることない。必ず会話がある。その話を聞けば、多くは無益な話である。世間の噂に知人の評価。会話する二人の為になるような話でもない。
こうした無駄話をしている二人の心のうちには、無益な会話だという自覚がない。
<感想>
俺も世間話は苦手なんだが、この段の兼行みたいに井戸端会議に花咲かす人達をバッサリ一刀両断みたいなことは、なんか気の毒で言えない。だいたい、そうまで言うならどんな話が無駄話なんだかをハッキリさせないとね。
ところで。
パチンコに少しだけハマっていた時期がある。
パチンコをおぼえて、はじめて一人でパチンコ屋に足を運んだ日だったかな。千円ほどつっこんだら三千円ほど稼いだ。それでパチンコが面白いと思った。パチンコ台の前に座っているだけで実質にして二千円のもうけかよ、おいしいじゃんてなもんだ。
それから、原付で国分寺のパチンコ屋まで通うようになったのだけど、そのうち、プラスマイナスで考えたなら、なんか俺の方がパチンコ屋よりも損しているような気がするなと気がついた。ルールが単純なゲームは、馬鹿だから好きなんだけど、さすがにパチンコはルールが単純すぎる。パチンコ台の前でタバコくわえて黙って座っているだけというのが、なんとなく時間の無駄に感じられた。それで、色んな事を考えてヒマをつぶそうと思うのだけど、なにぶんパチンコ屋の店内は大音量の軍艦マーチで、店員はコアラのマーチとマイクでがなりちらしているから、自分の世界にひたってモノを考える事ができない。パチンコ屋の騒音に心も頭も流され、気がつくと無為にパチンコ台の前に座っている自分がいる。
パチンコは俺には時間の無駄だ。俺にはむかない。パチンコ台の前にずっと座っているのなら、道路工事の警備員のバイトでもして道路に突っ立っていた方がずっといい。確実に時給ももらえるしな。
パチンコやパチスロが好きな人ってのは、騒音にも流されない強靭な精神力を持った人か、静かにものを考える事が嫌いな人かの、どちらかなんだろう。とにかくパチンコ屋は俺には騒々しすぎる。
原作 兼好法師