発行日 2006年5月11日(木) 発行・文責 長坂 徳久
【子どもの季節を感じていますか?】
人は誰もが「偉くなりたい」と思っています。これは人間の欲求であり、おとなも子どもも関係ありません。「偉くなりたい」というのは、勉強なら、かしこくなりたい。スポーツなら、うまく・つよくなりたい。仕事なら、成果をあげたい、出世をしたいということでしょうか。
そして、これらをもう少し突き詰めていけば、偉くなることにより、「他人(できるだけ多くの人に)に認めてもらいたい。」という人間の本能に結びつきます。
人はもともとこのような本能を持っているのですから、誰もがみんな「がんばろう!」という意欲があるのです。いや、あったはずなのです。しかし、どこかで「やる気」をなくしてしまった子どもたち、おとなたちはたくさんいます。そして、そのように「やる気」をなくさせてしまったのは、実は、その人たちと関わっている周囲のおとな、親、指導者だと長坂は思っています。(詳しくは紙幅の関係で割愛しますが、また機会があれば書いてみます。「最初から勉強の嫌いな子はいない。」が長坂の持論。)
さて、子どもたちは新しいことをはじめるとそのことにすごい関心を示します。しかし、この関心が「高いレベル」で長く続くことはまれです。みなさんもおとなになってから何かを始めたことがあるでしょう? それは今も続いていますか? もしくは始めた頃の高いモチベーションで続いていますか?多くの子どもたちは少林寺拳法を「自分から進んで」始めた場合でも、長く続けていれば、きっと次のような過程を大なり小なり経るものだと長坂は考えています。(ここでいう季節は、実際の季節ではなく、「気持ち」としての季節、です。)
①春・入門して緊張もするし、とけこむことで大変なこともあるが、最初なのでわくわくして何をしても面白い。楽しくて仕方がない。→ ②夏・どんどん熱中し、これこそが自分の天職(自分の求めていたものだ!)と思えるぐらい熱中する。意欲満々!→ ③秋・同じことの繰り返しで、緊張感や刺激を感じなくなり少し飽きて、惰性になる。→④冬・不満(自分が悪いとは思わないので他人のせいにする。)や嫌気が出てきて、辞めたくなる。また実際に足が遠のき、辞めてしまう。
当然、辞めずに続く子どもたちも多くいます。橋本西支部はその典型でしょう。それは、③や④になっても、新たな刺激を感じ、次のレベルに自分自身が変化できたからです。 また、少林寺拳法を辞めることが悪いことではありません。その子にとってはそのことでプラスになることも多々あります。 この①→④は何かに似ていると思いませんか?恋愛?確かにそうかもしれません(笑)。
実は次のように「新商品」を売る場合のライフサイクル(成長カーブ)と似ています。
①導入期(季節でいえば冬から初春。)開発費や宣伝費がとてもかかるが、市場には新しい商品なので「当たる」と大きい。→ ②成長期前期(春から初夏)導入期のような宣伝や説明をしなくても、なぜかお客が買っていく。黙っていても売り上げが上がる。これが一生続くかのように錯覚する場合もある。→ ③成長期後期(晩夏から秋)少しずつかげりが見える。しかし、導入期のようなコスト(投資)はかからないので、収益は残る。→ ④成熟期(秋から冬) 衰退する。本来ならばこの時期にはその商品は撤退(一線から)をして、次の新商品の開発に取りくむことが必要。そうすれば、新たな成長カーブを描いて、次のステップの導入期に入ることが可能。
お子さんの少林寺拳法とビジネスでは少し例えが不自然かもしれませんが、この成長カーブと「季節論」は人生すべての事柄に当てはまるのではないでしょうか。(ちなみに人生春夏秋冬論というものがあり、ひとつの季節が3年サイクルで循環するというものです。これが当たるのです!) さて、今のお子さんの少林寺拳法はどの季節でしょうか? 当然、2回目の春、3回目の冬など、すでにワンサイクルを終えた拳士も多いでしょうね。特に、長くやっている拳士や保護者の方には、上のサイクルを読むと、「そういえば、そんな時期があったなぁ。」とか「これの繰り返しだな。」と思えるのではないでしょうか? ちなみに、少林寺拳法では、春から季節が逆行して「冬」(辞めたい)になることもあるでしょう。盛夏から突然、冬になる場合もあります。それには、本人だけでなく指導者や周囲の影響も多々ある場合が多いです。
上の例は、「どんなに長く続けていても(しかも、周囲から見れば、とても高いレベルやいい環境でやっているように見える人でも)、誰もが大なり小なり通る道」の説明だと思ってください。 次号では、お子さんの「今の少林寺拳法の季節」に応じた、接し方、対応の仕方を考えてみましょう。