音楽にこんがらがって

音楽制作を生業としている加茂啓太郎の日常

アルバム「エクセルシオール」について

2019年04月05日 | 音楽

フィロソフィーのダンスのサード・アルバム「エクセルシオール」が本日発売になりました。

プロデューサーとして僕がどんな気持ちでこのアルバムを作ったか書いてみたいと思います。


僕がディレクターとしてアルバム1枚を作ったのは ちわきまゆみというシンガーの「エンジェルWe-are beatiful」という作品で86年6月のリリースでもはや33年前なんですね

それからコンピや再発などを含めれば100枚以上は作ったと思います。

そして33年前には思いもつかなかった、故プリンスもコメントしたように「アルバム」という概念がなくなろうとしています。

そもそもアルバムというのは45分程度しか入らないアナログレコードのフィーマットから考えられた、まずは入れ物ありきのもので、

音楽は彫刻、絵画や小説のように、そのサイズを選べない芸術表現だったわけです。

レコーディングというのも1曲ごと録るのはロスが多いのでまとめて何曲が録る事しか出来ませんでした。

でもこれを逆手にとってビートルズ以降、45分の時間の中で表現するアーティストが多く登場し「名曲」ではなく「名盤」という概念が誕生しました。

CD時代はパッケージという部分では変わりませんが80分近く収録出来るようになりましたが、この時間量を生かして何かが変わったかというのは、あまりなかった気がします

むしろ本来なら捨て曲になるような作品まで収録出来てしまい、結果としては水増しされたアルバムも多いような印象すらあります。

アーティストも業界も従来のアナログレコードからの発想を切り替えられなかったんでしょう

(アメリカのパンクバンドのCDに同じアルバムが2回入ってるというのがあって、それは流石と思いました)

配信になるとシングルのカップリングやアルバム曲は名曲であっても埋もれる可能性があります

今はまだ、従来のシングル、アルバムという形で配信していますが、これからはそんな事をするのは無為無策、具の骨頂です。

前述のようにアナログからCDに移行した時に何も創意工夫をしなかった失敗をもう一度行わないようにすべきなのです。

チェインスモーカーズの最新アルバムは基本的には配信リリースした曲を集めただけですが、これが今のスタイルだと思いました。

今回の「エクセルシオール」も12曲中10曲は揮発曲で他の曲も先行配信出来たのですが、それでは流石にアルバムを買った時の楽しみがないと思いやめました。

での僕は10代からアルバムで音楽を聴いてきた人間です。

アルバムのリリースを楽しみに待つ、アーティストのインタビューでアルバムのコンセプトを読み、それを聴き解くながら聞く。

ライナーノートやクレジットを読みながらさらに情報を深読みする。

今でこそ謎が解けましたが、アルバムのマトリックス、これはなんなんだろうと思っていました。

英盤、米盤のジャケの紙質の違い、さらに盤の匂いの違いまで情報としてチェックしました。

過去のアーティストのアルバムをコレクションして悦にいる

アルバムの多面的な楽しみ方は配信では満たされないと思います


なのでこのアルバム「エクセルシオール」には失われていく「アルバム」という概念だけが持つ楽しみを出来るだけ詰め込んでみました。

ジャケットは今までも全てアルバムは紙ジャケですが、これはわかる人が見ればわかるのですが、コストが通常のプラスティックケースの倍はかかります

紙ジャケにしたからといって、それで売れるわけではないのでよほどの事がないとメジャーレコード会社ではOKは出ません

これがなぜ出来たかというのは企業秘密で内緒です。

邦楽ではまずつかないライナーもつけました

クレジットも極力詳細につけました。

もちろん宮野弦士君の協力を得てのエンジニアリング、マスタリングも最高のものだと思います。

あと何枚アルバムが作れるかは分からないですが、最後のつもりで作りました

ぜひ隅々まで味わいつくしていただければ幸いです。