昼、小雨降る中、敢えて外に出る。どんなことがあっても出ることが気分転換にいいということに気づき始めているようだ。カフェの深いソファに腰をおろして、この春フランスから訪ねてきた友人の贈り物 La première gorgée de bière et autres plaisirs minuscules を開く。そのページは、「アガサ・クリスティーの小説」 (Un roman d'Agatha Christie) だった。
雨の日に読んでいると、静かに落ち着く。雨に絡む表現が目に入る。
la pluie sur la pelouse au-delà des bow-windows
(出窓の向こうの芝生に降る雨)
Il y a des meutres, et cependant tout est si calme. Les parapluies s'égouttent dans l'entrée, une servante au teint laiteux s'éloigne sur le parquet blond frotté à la cire d'abeille.
(殺人がある。しかしすべてが静まりかえっている。玄関では雨傘から水が滴り落ちている。蜜蝋で磨かれた床を乳白色の顔色をした召使の女が遠ざかっていく。)
目を街路に向けると、緑が一段と深くなっている。今頃から夏にかけての外国出張から帰るといつも最初に気づくのが、街の緑が濃くなっていることだ。鬱蒼とも言えるくらいに。どこか違ったところに辿り着いたような錯覚に陥る。今年の夏はどうだろうか。