フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

しゃちょ日記バックナンバー/2009年11月②

2010年09月11日 | しゃちょ日記

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 2009年11月11日/その135◇王子にて

 端正な語り口と大らかなユーモア。
 心のざらざらを洗い流してくれる、
 温か味がにじみ出るようなアートだ。
 私の中のフラメンコの水準で云えば、
 それはチャノ・ロバートのカンテに匹敵する。
 
 この秋他界された三遊亭円楽師匠。
 笑点の司会はいただけなかったが、
 そのライブの高座は巨大なオーラに充ち満ちて、
 言葉には言い尽くせない贅沢な味わいがあった。
 
 ソレア系みたいな大ネタも素晴らしいが、
 アレグリ系の中くらいのネタを私は好む。 
 有名な『目黒のさんま』の録音などは天下一品だ。
 それらライブ録音は、今も私の日常をじんわり潤す。
 
 円楽.jpg
    
 師匠が旅立った翌週の午後、
 円楽CD全集を10枚ばかりリュックに詰め込み、
 そのアルテを偲ぶ散歩に出かけた。
 唐突に名作『王子の狐』が聴きたくなったので、
 じゃあそこだと、国電(←死語)で王子に出た。
 名人の「星の王子さま」という若き日の称号からの
 連想もあったかもしれない。

 八代・暴れん坊吉宗の頃の江戸時代。
 王子・飛鳥山は江戸庶民のための桜の名所だった。
 いつの間にやら、飛鳥山モノレールなんかが出来てた。
 全長が50メートルもないところが、王子らしくてステキ。
            
  飛鳥山のモノレール.jpg
                    
 何の用事で行ったのかは忘れたが、
 学生時代にお世話になった明治通り沿いの
 老舗ホテルも健在だった。
      
 王子のラブホ.jpg

 東京北部特有のアップダウンが楽しめる飛鳥山は、
 落語を聴きながら散歩するにはもってこいのコース。
       
 飛鳥山1.jpg
        
 飛鳥山3.jpg
        
 ここらで『王子の狐』と『目黒のさんま』の、
 円楽節の名調子を懐かしんだが、
 聴いても聴いても聴き足りず、
 さらに石神井川をさかのぼるコースを歩く。

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 2009年11月12日/その136◇秋の石神井川

 きのうの続き。
 とりとめもなく、円楽師匠の明るい至芸に没入。
 飛鳥山から、滝野川親水公園を経て、
 石神井川をさかのぼるパセオ(遊歩道)を歩く。
 
 石神井川7.jpg
 
 いっとき練馬に住んでた頃は、
 この石神井川を、豊島園あたりからから
 隅田川に抜けるコースを好んで歩いた。
  
 石神井川3.jpg
 
 ぶらぶら歩いちゃ一服を繰り返し、
 師の名演『宮戸川』、『厩火事』、『万金丹』、
 『らくだ』などを次々に聴く。

 石神井川2.jpg
 
 想えば昔から、大好きなアーティストの追悼は、
 こんな風にやっていた。
 桂枝雀師(落語界のパコ・デ・ルシア)がなくなった時には、
 仕事を投げて、10日ばかりそんなことを続けたものだ。

 石神井川6.jpg

 五代目、三遊亭円楽。
 ニッポンの誇り。
 来年六代目を襲名する楽太郎師匠も、
 必ず凄いことになる、と私は想う。
  
 石神井川8.jpg
      
 石神井川両岸は紅葉の頃に、その実力を発揮する。
 また来月、仕事さぼって歩きにこよう。
 って、まあ、なんてとりとめのないフラフラ日記。

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 2009年11月13日/その137◇ダヴィ・ラゴスのソロデビュー盤

 この数週間、ほとんどパセオで流れっぱなし。
 なんだかホッとするような、久々の本格フラメンコだ。

 davidlagos-hp.jpg
 DAVID LAGOS/EL ESPEJO EN QUE ME MIRO
 (フラメンコ・ワールド/2009年)

 このところ、日本人のフラメンコ公演に、
 これもやはりチョー凄腕ギターの兄、
 アルフレッド・ラゴスと共に活躍する
 カンタオールのダヴィ・ラゴス。
 森田志保さんや石井智子さんの公演でも、
 私たちを心底シビれさせた。

 それもそのはず、2007年には本国スペインで、
 踊り伴唱の最高賞グラン・プレミオを受賞している。
 だが、彼の本領はむしろカンテソロにある。
 余分な派手さを制御する誠実な声質。
 ふくよかに密度高く、よく伸びる。
 しみじみと深い抒情。
 コンパス、音程がすこぶるよいが、
 何よりホカホカにあったかい。

 がしがしプーロや思いきり現代的なノリの、
 そのどちらでもない。
 じゃあ、誰も聴かないのか?
 いーや、その真逆なんだよね!!!
 誰もが入り込んで聴ける、ストライクゾーンの広いプーロ。
 入門者とマニアを同時につかむ、とっつき易さと高純度。

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 2009年11月14日/その138◇100万光年

 マウリツィオ・ポリーニ。
 1942年、イタリアはミラノの生まれ。
 今年67歳となる、国際的な大ピアニスト。

 高校三年生の時にポリーニを聴き、
 私はピアニストになることを断念した。
 向こう1000年間、ピアノ修行に没頭したとしても、
 この私にポリーニを超えることは不可能であることを、
 瞬時に悟ったからである。
 ちなみに、もうひとつの理由は、それまでの私には、
 ピアノを練習したことが一度としてなかったことだ。

 当時18だった私に対する、当時のポリーニは31歳。
 それから36年間、私は彼のバッハを日々待ち望みながら
 暮らしてきたことになる。

ポリーニ.jpg
 マウリツィオ・ポリーニ/
 バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻
 グラモフォン制作(2009年2月録音)

 やはりそー来たか。
 待望のバッハ着手は『平均律』だった。
 ゴルトベルクだともっとうれしかったが、
 贅沢を云ってはバチが当たるな。

 老境を迎えたポリーニの枯淡の境地……なのか?
 って、そんなわけあるハズもねーよ。
 世界中を唖然とさせた、あの明晰にして
 完璧なピアニズムはいまだ健在。
 うっ、そこまでやっちゃうの、てな感じで、
 いつものようにアグレッシブなアプローチで
 鍵盤をバンバン叩く。
 およそ誤魔化しというものとは無縁な、
 真っ向勝負のガチンコ・バッハ。
 
 ふうっ。
 シビれるような快感。
 やってくれるよなあ。

 18歳の私と31歳のポリーニには、
 かつて天地の差(約1000年)があった。
 ところがどっこい、私もがんばった。
 驚くべきことに、現在では
 100万光年ほどの差があるのだが、
 ……それがどーした。

 両者のすき間が大きければ大きいほど、
 逆に大いにラクチンな気分で、
 ポリーニの真似をするのではなく、
 オレ様にしかできないやり方で生き抜いてみたくなるのだ。

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 2009年11月15日その139◇よっ、日本一!

 木曜会がチョー午前様だった金曜日は、
 日がな本誌のインタビューづくし。
 たまった疲れをゆったり湯船で落とし、
 行きつけで一杯やる。

 居合わせたタワケ者どもと
 日刊パセオ『シュール・アホリズム』の爆笑ネタで
 盛り上がっている内に、なぜかナゾかけ大会に突入。
 
 「新聞の朝刊」と掛けて、
 「坊主」と解く。
 その心は、
 「今朝(袈裟)きて、今日(経)読む」

 「朽ち果てた教会」と掛けて、
 「彼女の結婚式」と解く。
 その心は、
 「神父(新婦)の心労(新郎)、いかばかりか」

 小粋な佳作を次々と繰り出すのは、
 地元のボスで町会長の金ちゃん(本名・金之助)。
 どー見ても893だが、心やさしいインテリあら還だ。
 新設する町会事務所の地鎮祭が無事に済んだとかで、
 ゴキゲンの絶好調である。
 ならば私もと、とっておきを披露する。
 
 「相合傘」とかけて、
 「女と男」と解く。
 その心は、
 「私が開いて、あなたがさす」

 とほほ3.jpg

 珍しく一定の格調を保っていた座のアイレは、
 イッキに吹き飛んで、
 これをもって、いつもの下ネタ大会に突入する。
 さあ、そこでもギンギラ絶好調な金ちゃんは、
 やんやの喝采を浴びつつ、
 お仲間の勘定をすべて引き受け、さっ爽と退場。
 よっ、金ちゃん、ニッポンイチっ!

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 2009年11月16日/その140◇人気爆発! 中田佳代子のSin Frontera

 「フラメンコ舞踊家。
  国境なきフラメンコを目指し、日々奮闘中」

 『中田佳代子のSin Frontera

 中田佳代子.jpg

 中田佳代子は、
 スペインのペーニャ・ペルラ・デ・カディスの
 アレグリアス・コンクールで、外国人としては初の
 準優勝に輝いた筋金入りの実力派バイラオーラ。

 明るくてアイレもビンビンな文章に惚れこんで、
 即座に連載をお願いした。
 日刊パセオフラメンコで、人気爆発中の連載ブログだ。
 現在はスペイン・バルセロナのタブラオで踊る様子を
 リアルタイムで読むことができる。

 度胸と愛敬。

 時代がどうあれ、やっぱ人間はコレだわなと、
 毎度ふんふん納得しながらこれを読む。 

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