二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

501統合戦闘航空団の戦いⅡ-Ⅲ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-05-01 20:55:58 | 習作SS

視点:リーネ

『宮藤さん、リーネさん、お願い。ネウロイがそちらに向かっているわ・・・。』

海面の反射と混ざって銃器のマズルフラッシュを眼目に捉え戦闘を観戦していたが、
先行していた隊員の驚愕と焦りの声がインカムから聞こえ、ミーナの通信が入る。

「こっちにくるよ!」

宮藤の叫び。
ネウロイは米粒大の大きさから徐々に大きくなる。
リネットはミーナの通信と宮藤の叫びに釣られてトリガーをロクに照準に定めぬまま、引く。

対戦車ライフル独特のひと際大きな発砲音。

「・・・っ!!」

リネットはボルトハンドルを上げ、手元に引き。火薬が延焼した熱を保つ薬莢を排出。
硝煙の臭さが鼻につくがそれを意識する間もなく今度はハンドルを押して薬室を閉鎖。
薬室には新たな13.9ミリ弾がライフルの上部にあるマガジンから薬室へ装填される。

発砲、二度目の外れ

今度はボバリングの揺れでライフルの先がブレて弾を外した。
訓練の動かぬ的と違い、実戦の動く的に独自の緊張感が飛行の集中力を乱す。
三度目の正直とばかりに体にしみ込んだ装填の動作を実行。

先の2回よりも集中力を高めて、弾道を計算。
飛行魔法と射撃制御の魔法のコントロールがぶつかり、脳内修正を繰り返す。
訓練通りの理想的なコントロールができていなかったけど慌てず焦らずゆっくりトリガーを引く。

発砲、外れる。

「だめ、全然当てられない!!」

時間はない、ここで逃せば後がない。
逃せばネウロイは慈悲も情けも容赦もなく基地を蹂躙するだろう。
着任して短いとはいえ愛着はあるし、なによりも基地にいる戦えない人間を見殺すことはできない。
焦燥感が精神を侵攻し、絶望がリネットの心を暗く閉ざしかけ、

「大丈夫、訓練ではあんなに上手だったんだから。」

宮藤からの励ましの声。
けれどもリネットは励まされる事実が己の不甲斐なさを強調された気をした。

「わたし、飛ぶのに精一杯で、射撃を魔法でコントロールできないです・・・。」

リネットの言葉は後半に入ってからさらに小さく弱弱しく変化する。
やはり自分にはできない、そう諦めのマイナス思考が脳に染み込み。出撃のさいにあった自信が萎縮されてゆく。
しかし、宮藤芳佳はまだ諦めていないかった。

「じゃあ、私が支えてあげる。だったら撃つのに集中できるでしょ?」

リネットが返事をする前に宮藤は行動に移る。
高度を下げてリネットの足の下に回る込む。
戦闘中の突然の奇行にリネットは呆然としたが何をしたかったかすぐに悟る。

「ん・・・。」

股間に宮藤のこげ茶色の柔らかな感触を感じた。
布越しのくすぐったさにリネットはつい色っぽい声を小さく挙げる。

「どう、これで安定する?」
「あ、あ・・・はぃ」

股間の感触のもどかしさで顔が赤く染まる。
困ったように太い眉が下がるが、宮藤が支えてくれるおかげでボバリングは比べものにならないほど安定。
それに気づいたリネットは希望を確かに捉え、冷静さを確保し思考がクリアなものへと移行。

いける
これなら絶対いける!

「西北西の風、風力3。敵速、位置――-。」

しっかりとライフルを敵に向けて構える。
狙撃に必要な要素を声に出して思考をより狙撃に適したのへと暗示させ、銃と一体化する。
だが、足りない。正確無慈悲にその数値を叩きだしてもまだまだ外してしまう。

一体何がたりない?
一体何が足りない?

空戦の基本を思い出すんだ。
思い出せ、リネット・ビショップ!!

「そうだ、敵の避ける未来位置を予測して・・・。」

空戦の基本。
それは未来位置を予測してそこに弾を一度に叩きこむ。
言う事は簡単だがやるとなると経験則に依存する技術ゆえに非常に難しい。

大概人間は的を見て的に合わせて狙いを定める癖がある。
的が低速で二次元での移動なら簡単に予測できてしまうが三次元空間である空中はそうはいかない。
上下左右、のみならず広大な空間は無限にも等しい選択の自由を秘めている。

そんな高等技術を習得した者だけが5機撃墜から始まるエースにやっと成れて、
250機撃墜記録を保持し、今も更新を続けるスーパーエースのエーリカ・ハルトマンの後を追いかける権利を得られるのだ。

「宮藤さん!」

マガジン装填。
弾道修正、ライフルを持ち上げる。
リネット・ビショップの固有魔法は『弾道の安定と魔力付加』
念動力で放った弾丸をコントロールして、魔法力付加で威力と射程を底上げするという正に狙撃手向けの才能だ。
高い集中力を有するゆえに今の今まで訓練以外はまったく才能を生かせなかったけど、宮藤が支えてくれている。

「うん!」

リネットは心の中で叫ぶ。わたし、否。
わたしたちは一人じゃない。
2人合わせれば一人前で何があっても怖くなんてない。

「わたしと一緒に撃って!!」
「わかった!」

下の宮藤に機銃を撃たせて行動の範囲を限定させる。
この場合、予測して算出される機動は下は海面なので左右か上にネウロイは逃げる以外ありえない。
さらに、リネットはネウロイが100パーセントそれ以外逃げようがないタイミングを図り、一撃必殺を狙う。
ネウロイは先行したミーナ達に攻撃されたのとリネットに撃たれたのでリーネから見て微妙に十字軌道をとっている。

狙うは腹を見せることになる、体を斜め上に傾ける上昇機動。
だからリネットは視界の遥か先でネウロイが微妙に上に傾けた瞬間を逃さなかった。

「今です!」

口に出すと同時にライフルと機関銃が光を放つ。
重量60グラム、13.9ミリ徹甲弾の秒速747メートルの矢。
重量52グラム、12.7ミリ曳光弾の秒速780メートルの矢。
ちっぽけな金属の塊は光の軌道を青い空に曳き、人類の敵ネウロイに襲い―――。

リネットは見事に初戦果を挙げた。
ネウロイは宮藤の機銃弾を避けるため上昇した瞬間、大きく腹を見せる。
標的の面積が拡大した上にあらかじめ計算してリネットが放った対戦車ライフルの弾が黒いボディを貫く。
唯でさえ高威力だった上に固有魔法で威力が挙げられたため回復する余裕もなく、ネウロイは白く散り始めた。

「当たったぁ!!」

歓喜に解放感、達成感がリネットに満ちる。
彼女はようやく弱い自分という名の敵に打ち勝ったのだ。

「すごーい!」
「やった、やったよ。宮藤さんわたし初めて―――。」

喜びのあまり宮藤に抱きつく、
傍に他の隊員がいたら注意していたが、今この場にはいない。
こうしてはしゃいでしまうのは止む負えない。

けど。


『宮藤、リーネ、避けろォォォぉ!!』


けど帰るまでが戦闘というルールを分っていない。
油断大敵、戦場では僅かな隙を作ったとたん簡単に命を落とす。
ネウロイが崩壊しつつも海面を水切り遊びの石ころと同じく彼女たちに襲って来たのを見ていなかった。

「――――――!」

リネットは坂本少佐の声でやっと気づくが遅い。
瞬時に絶望へと叩き落とされ、悲鳴を挙げ―――。

「大丈夫」

リネットの視界に宮藤が現れ、ネウロイに立ちはだかる。

「私が友達を、リーネちゃんを守るんだから。」

それが数分間の連続した緊張の糸が途切れ、
リネットの薄れゆく意識が見届けた最後の光景だった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする