二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

過去と現在-Ⅰ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-05-25 01:11:35 | 習作SS

「戦闘配置にっ・・。避けろォ!!!」

警報音に合わせたように低空から侵入してきたラロス改の機銃掃射が始まる。
人類の航空機と良く似た姿形は識別が困難なことに加えて、レーダーなしのこの時期ゆえに奇襲が許されてしまったのだ、

地面に伏せてすぐに熱風と生温かい代物が私の体に襲う。

「くそが、被害状況・・・・・・。」

訓練生時代と実戦で体に染み付くほど覚え込まれた反射動作。
爆風から守るために『その場に伏せて口をあける』行動から将校としての義務を果たそうとする。

「ちっ・・・。」

ここでやっと体に降りかかった生温かい代物が分った。
爆風で人がパーツへとなり果てて私に降り注いで来たのでなく、唯の赤いペンキだ。
平和な日ならば間違えて腰を抜かしただろうが、脳が最高に興奮しているためか何の感傷も浮かばない。
まあ幸い、人体のパーツはなく普通のペンキだし。だから心は制服が汚れたとかそういったのしかない。

「中尉!ウィッチは全員無事です、行けます!!」

炎上する管制塔を背景に指揮所からオフレザー少尉が飛び出る。
かつて、そして<史実>でもスーパーエースとして成長しつつあったエーリカの戦果に、
疑いの感情を嫉妬交じりに抱いていたが、実際に彼女あるいは<彼>の戦いぶりを目撃して以来素直に評価するようになった。
何せエーリカはこの6年後に、世界中から崇拝と尊敬を集める人類最強の航空歩兵として歴史に名を残すことになるほどだからだ。

「ユニットは?」
「こちらも全機問題なし、対空砲座へと攻撃が集中しているようですし。」

空を見上げればさっきのラロス改以外いない。
代わりに都市外延部の対空砲座にイナゴの大群よろしく群がっている。
離陸と着陸が一番無防備で<史実>ではそのせいでエースが戦死した例があるから敵前離陸は推奨できないが、今しかないか。
だまってやり過ごすのは私たちの柄じゃないし。

「よし、全員私に続け!飛ぶぞ!」

格納庫は爆撃が逸れて、銃撃のみの被害しか受けていない。
私の声に反応した娘っ子たちが駆け寄り整備員もあわただしく準備に邁進する。

「ん・・・。」

靴を脱ぎ捨て、用意してあったストライカーユニットに足を入れて使い魔の『カラス』を出現。
ええい、なんか体がムズムズするから変な声を挙げてしまうのは不可抗力だが整備士どもの視線が気に食わん。
おまけに『男』の気配が濃厚なもの、元男だから痛いほどそこらへんよくわかってしまう。
くそ、見てる側なら最高だったのに。

「出力よし、回転数よし、全機発進準備完了。」
「MGよし、安全装置よし、装具よし」
「整備班はこの後、可能な限り退避してください。」

部下から次から次へと報告が入る。
見た感じスクランブルマニュアル通りに事を進めている。
いいぞ、ルーキーばかりだが案外期待できるかもしれん、ここまでは。
ふと、横にいるロスマン軍曹に行けるかと意味合いのアイコンタクトする。

「・・・・・・。」

黙って軽く頷き返した。
つまり、全員出撃以外なしだ。

「よし、52戦闘航空団第2飛行隊、全員出撃せよ!!」

刹那、浮遊感。射出台から発射されたのだ。
五感が前へと押し出される感覚を掴み、何千時間目かの飛行がカウントされる。

「・・・・・・ッ」

やがて滑走路から浮かび上がり重力に逆らう。
空に飛べる嬉しさと楽しさを堪能せず、今はひたすら高度を稼ぐことに専念。
この時間帯は夜で真っ暗なはずだが、嫌に赤く明るい。原因は知っている、すでに爆撃されたのだ。

「よく聞け、高度をできるだけ稼いで一撃離脱を繰りかす・・『警報!上からラロス!!!』なっ!!?」

インカムで戦術行動を示し、行動に移る前にネウロイが襲いかかる。
まだ離陸したばかりなのに、と叫ぶ前に視界に入れたネウロイが容赦なく発砲。
狙いは先頭の私でなくヨタヨタと飛ぶルーキー共。

「避けろ―――――!!!」

私と幾人かが叫んだらしい。
が、その願いはかなわず、いくつかの血吹雪を赤い空に咲かせた。
コメント
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