「誇」-URAWA REDS-
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「来年は来れないのかな」
大きなスタジアム、ちらつく影。
やってやる、やらなければ。
そう思ってるけど、不安なものは不安なんだ。

いつもとルートを変えようとしたけれど、
向く足は結局、無意識にいつもと同じ道。
切羽詰ってる。
堀くんが監督に就任してわずか2日。
何が出来るのか、
どう導いていくのか。
もし失敗したら、また罵詈雑言を浴びせる輩が現れるのか。
やりきれない気持ち、割り切れない気持ちを抱えたまま
いつもと違う、1階席に向かう。

GK加藤
DF平川・濱田・永田・宇賀神
MF柏木・啓太・直輝・梅崎・原口
FWセルヒオ・
リザーブ山岸・坪井・スピラ・小島・峻希・高崎・マゾーラ
ランコがいない、スピラはベンチ。
啓太の前に直輝と柏木。
セルヒオの1トップ。
「堀くんのサッカーだよね」
「2トップが機能してただけに、どうなんだろう」
「啓太がどこまで頑張れるか、かな」

繋ぐ意識の強い浦和。
「だよね、そうなるよね」
パスは回る、後は誰が決めるのか。
「しっかり、頼むぞ」
ここで躓けば、限りなく希望が潰える。
気合が入らない訳がない。
「真ん中空けるな!」
DFにスペースが出来る。
「あっ!」
4分、横浜先制1-0。
「やってないからな…」
監督就任3日目。
出来ることは限られていたはず。
「負けられない、頑張ろう」
萎えたら負ける、希望を捨てたら負ける。
選手たちと共に、戦い続けるんだ。

「啓太が起点になってるんだよな」
扇の要になる啓太。
「捌ける選手じゃないから、キツイんじゃないかな」
攻める浦和をコントロールする横浜。
「慌てるな」
前に向かう意識が強過ぎるのか、攻め急いでいる。
「ゆっくり、落ち着いて」
やってることは間違いじゃない、きっと追い付けるはず。

「出せよ!」
相手25番が倒れる、試合を止める。
「自爆だろ?」
主審は山本氏。
ナーバスな笛、接触プレーは悉くファール。
「やり辛いな」
直輝から原口にボールが渡る。
「打てる、打てるぞ!」
シュートはクロスバー直撃。
“形”が現れるようになる。

「もう25分か…」
中心から声が消える。
「何で?ワザとなのか?」
急いているのは、僕の方かも知れない。
ウガが上がる。
「うわっ!」
「シュートだよね?」
大きく上に外れていくボール。
「どうする?打つのか?」
「またか…、今度はシュート?」
積極的に駆け上がる宇賀神。
「もうちょっと枠に飛ばないかなぁ」
数少ないチャンス、何とか生かしたい。
45分、平川に警告。
「痛いな、これは」

前半終了、横浜0-1浦和。

「ボランチの所かな」
「前に急ぎ過ぎてるかもね」
選手たちから強い気持ちが伝わる。
その気持ちがちょっと、空回りしているかも知れない。

右サイドからクロスが上がる。
PA内、直輝が競る、倒される。
「よっしゃ!」
スポットを指す主審。
「今日の基準だとPKだよな」
「誰が蹴るんだ?」
「セル?柏木?」
「直輝だ、得意じゃないよな確か」
ぱらつく拍手。
「静かに!」
GKが弾く、柏木が詰める。
「押し込め!頼む」
原口がこぼれ球に反応。
4分、浦和同点1-1。
喜びに沸く選手。
「戻れ、早く!」
まだ追い付いただけ。
勝つ、勝つんだ。

57分横浜、渡邉out小野in。
「嫌な奴が出て来たな」
苦手が去り、苦手が入る。
ゴールキックは相手ボール、セカンドボールも拾えない。
それでもボールに食らい付く。
「セル、いいぞ!」
「柏木!啓太!」
永田、濱田も最終ラインを割らせない。
「頑張れ、しっかり」

早いリスタート、梅崎が右サイドを駆ける。
「あるぞ、どっちにする?」
セル、原口がゴールに向かう。
半身で下がるDF。
「打っちったか…」
「入った!!!」
狭いニアサイド、ミドルシュートが突き刺さる。
61分、浦和逆転1-2。
「やった!やったぞ!」
次々に仲間たちとタッチを交わす。
「勝てる、勝つぞ!」

相変わらず煩い笛、プレーが止まる。
止まる度に流れが横浜に傾いていく。
「頑張れ、頼むぞ」
あらぬ限りの力をピッチに注ぐ。
スタンドが、ひとつになる。

67分、宇賀神out峻希in。
「なるほど」
左に流れる相手のケア。
理解し易い采配。
「セル!!」
右サイド、セルヒオが抜け出す。
「そのまま、そのまま突っ込め!」
「打ったのか…」
ロングシュートはバーの上。
68分、啓太に警告。
「異議だよね」
「気持ちは分かるけど、勿体ないな」
「代わりのいない選手だからね」
タテに裏に、ワイドな展開に持ち込む横浜。
競り合う、笛が鳴る、横浜のFK。
「何で、それで?」
厳しい判定に泣かされる浦和。

直輝から長いボールが前線に。
「グッチ!!!」
全速力で走る原口。
「追い付いた!」
「惜しい!!」
シュートはポストに嫌われる。
「凄いよ、これだよこれ」
あの世代が、輝いている。

80分、梅崎out高崎in。
「高崎、頼むぞ」
前線で身体を張る高崎。
「負けたっていいんだ、時間稼げ」
85分、直輝に警告。
「仕方ない、仕方ない」
FK、FK、FK。
右から、左から浴びせられるFK。
「ノブヒロ!」
「そろそろスピラじゃないのかな」
44分、セルヒオout坪井in。
「そっか、なるほどな」
峻希が1枚上がる、その後に坪井が入る。
「ツボ!」
ウチには、頼もしいベテランがいる。

アディショナルタイム4分。
「そんなに!?」
相手のパワプレー、必死に守る浦和。
「まだか?」
4分を経過しても笛は鳴らない。
「早く、早く終わってくれ」

横浜1-2浦和。
堀くんのもとに選手、スタッフが集まる。
「優勝したみたいじゃん」
毒づく口先、にやける口元。
苦しい時だから、みんなで戦うんだ。
浦和なら出来る。
「あと4試合、4試合だ」
広げるマフラーの横をすり抜ける。


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コメント
 
 
 
Yes, we can! (もぎゅりん)
2011-10-24 14:38:20
堀くんが引き受けてくれてから、08年の高円宮杯の決勝戦を見直したんですよ。

あの時の直輝・峻希・水輝と元気はチームになってから5年目だったけど、今は8年目。
阪野くんや田仲くんはいないけど、陽介と司がいて、セルもいる。

だったら、なんとかなるんじゃないのかな。

そんな気持ちで、録画した試合を見ていた前半半ば、直輝から元気にボールが渡ってクロスバーを叩いた瞬間に、「ああ、私が観たかったのは、これだったんだ」って「我慢してよかった!」って思ったんです。

ただ、さすがにプロ中のプロのマリノスだから、何度も胃が痛くなったけど…勝ててよかったです。

犠牲を強いられたユースメンバーも含めて、チームを思う人全員で掴んだ勝利です。
4Finalsとその前のFinalも、絶対に勝ち抜きましょう。

p.s.
小野ちゃんは、どこにいても浦和想いですね…。


 
 
 
大事な2試合目 (otteru)
2011-10-25 00:07:27
もぎゅりんさん、こんばんは。
直輝から原口へのパスは、互いが理解していないと出せないパスでしたね。
セルも漸く怪我に弱い体質から脱却出来たようです。
水輝も落ち着いてプレーしています。

ただ、みんな若い。
若い選手には波があります。
彼らを操る柏木は負傷を抱えています。
アンカーは、啓太しかいません。
ウメはこれから、研究されるでしょう。
現状はまだまだ、楽観視は危険だと思っています。

幸いなことに、ナビスコ杯があるんですよね。
ここで上手く次へ繫がる試合が出来れば、
磐田、仙台戦に僕らの持つポテンシャルが発揮できれば、
行けるんじゃないかと思っています。

戦うと決めた人たちとともに、
戦いましょう。

[追記]
伸二は“らしい”ゴールでしたよね。
今、伸二がいたらと本気で思いましたもん。
 
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