「誇」-URAWA REDS-
共に…
 



不要不急な外出は控えるように。
気象予報が伝えている。
「これくらいで済めばいいけどね」
風は弱く、雨も決して強くない。
「本当に荒れるのかなぁ」
もし外れたなら、
気象庁が恨めしいほど人の少ないスタジアム。

GK加藤
DF森脇・那須・槙野
MF梅崎・啓太・阿部勇樹・宇賀神・柏木・原口
FW興梠
リザーブ山岸・暢久・坪井・平川・関口・マルシオ・矢島
矢島が今季初のベンチ入り。
ACLを戦った水曜日から、中2日で迎えるリーグ戦。

「何だそれ?」
北側に陣取るカメラの放列。
試合とは全く関係のない、デスゴールを撮りに来た輩たち。
「感じ悪いな」
今のウチなら落ちることはない。
まるで自分たちが発見したかのように騒ぐ奴らは嫌いだ。

「そうそう!」
PA外側から原口がシュート。
「風あるからね、打てば何か起こるよ」
冷たい雨と風、寒い。
「追い掛けて来るなぁ」
松浦がバックラインにプレスを掛ける。
「啓太のところも食い付いてくるんだよな」
思うように縦パスが入らない。
「磐田が強いって感じもしないんだけどな」
静かなスタジアム、腕を組む場面が増える。

「PKだ!」
前線の選手が倒される、主審がスポットを指す。
「誰が蹴るんだろう、槙野?」
阿部勇樹がボールをセットする。
「代えるのか?」
興梠が近づく、スタンドが沸く。
「騒ぐなよ…」
拍手まで起こる有様。
「静かに!」
ヨシカツが弾く、詰めたボールはクロスバーの上。
19分、PK失敗。
「また絶好機を逃したか…」
決められないと苦しくなる。
「余計なことしないで阿部勇樹が蹴ってりゃ…」

啓太が最終ラインまで下がる。
「組み立てが上手く行かないのかな」
中央のラインがいつものようにいかない。
「陽介がイマイチか…」
ピッチに水が溜まる前に何とかしたい。
右からクロスを入れられる。
「交わされた…」
26分、磐田先制0-1。
「前田かよ…、こういうのはウチ得意だよな…」
決められなければ決められる、
3日前に学んだばかりなのに。

「それにしても何もしないな」
観戦するゴール裏。
「跳ねないと寒いよ」
パスを繋ぐ、急ぎ過ぎてトラップミス。
スピードを上げる、ボールが落ち着かない。
「焦るな、しっかり」
次につなげるためにも、連敗は避けたい。

前半終了、浦和0-1磐田。

「滑ってるよね」
降り続く雨、踏ん張りの効かない選手たち。
柏木が狙う、ミドルシュートはクロスバーの上。
「そうだ、打って行こう」
磐田の守備なら引かれても怖くない。
「落ち着いて、絶対綻びるから」
興梠が倒される。
「PKじゃないの!?」
笛は鳴らず。
60分、ヨシカツ警告。
「何ひとりで怒ってんだ?」
上手くいっていないのは磐田の方のよう。

後半、漸く動いたゴール裏。
跳ね続けたお陰で身体が温まる。
「浮かせたか…」
森脇のシュートはクロスバーの上。
「ウメ!」
カウンターから持ち上がった梅崎。
「そのまま打たなくても…」
徐々に得点の匂いがしてくる。

67分、宇賀神out関口in。
「なるほど、雨ならこれもありかな」
73分、柏木outマルシオin。
「何歩いてんだよ!」
項垂れる柏木。
「負けてんだから早く出ろよ!」
不調の理由はメンタルにあるのか。

槙野から興梠へのパス。
「これも決まらないのか…」
マルシオのCK。
「決まった!」
75分、浦和同点1-1。
「森脇か、さあこれからだ!」
一気にボルテージを上げる。
「勝てる、この相手なら」
興梠が抜ける、決められない。
「頑張れ!」
「勝てる、勝つんだ」
86分、梅崎out平川in。
「この方が安定するかな」
疲弊するWB、失点する可能性も少なくしたい。

アディショナルタイム4分。
ハーフラインで原口がボールを奪う。
「行け、走れ!!」
興梠が、マルシオが前線に駆け上がる。
「打て!決めろ!!」
ヨシカツが触れる、ゴール前に転がるボール。
「入れ、入ってくれ…」
90+2分、浦和逆転2-1。
入り乱れる、雄叫びを上げる。
「集中しよう、守り切ろう!」
浮かれないように、しっかり最後まで。

4分を回る、時計すら見ない主審。
ベンチからスタッフが飛び出す。
「終わりだよ、終わりだろ?」
相手CK。
「それはないだろ…」
集中、集中…、やらせない、絶対やらせない。

試合終了、浦和2-1磐田。
苦しい試合をものにした。
5試合で勝ち点13。
「さあ、次は韓国だ!」
意気揚々とスタジアムを後にした。


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