「誇」-URAWA REDS-
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ハンドルに遊びがあり過ぎるのかな。
どうも軽くてブレ易いんだよ。
しっかり握ってないと、示した方向に進んでいかないんだ。
ドライバーがコロコロ変わるから、クセを覚えきれないんだね。
確かね、僕の記憶に間違いがなかったらね。
長い旅になるって聞かされてたと思うんだ。
いや、もしかしたら聞き間違いかも知れないんだけど。

「ステアリングの甘い車をフルモデルチェンジしよう!」
って合言葉だったよね。
頑強な車でガツン!と突っ走ったけど、
メンテナンスが難しくて誰も整備出来なくて困っちゃった時、
ドイツから老練なエンジニアを呼んだのが2008年の冬。
個性的な車を分解しながら、新しい技術を導入した2009年。
新車発表会は驚きだったね。
ウチでもこんな製品を作れるのか、なんて。
それから2か月くらいかな、他メーカーさんも泡食ってたみたいだった。
結構いい感じで走ってたんだよね。
でも、そんなに世間は甘くない。
エンジンもシステム回路も暑さに弱かった。
開発途上だからかな、決められた動きしか出来ずに
おんなじ壁にいつもぶつかってた。
それでもね、
それまでのマニアックで強固な部品のおかげもあって、
まあまあの成績はあげられたんだ。
未完成で荒削りだけど、輝くダイヤの原石も見つけられたしね。
「お、この車、もしかしたらロングセラーになるかも」
なんて期待させる片鱗は見せてくれたね。

でもね、一方で???と思ったこともあってさ。
開発サイドと経営陣との間で販売方針が違うんじゃないかなって。
だって、会社の将来を左右する大事な案件を抱えているのに、
株主総会を前倒ししてまでトップ人事を断行したんだよ。
しかも新体制の顔ぶれは、筆頭株主から送られた人ばかり。
旧経営陣の一掃。
これで“刻んだ歴史=イズム”を継承出来るのか、不安だったんだ。


高価で車に与える影響は絶品だっただけど、
使い難かった部品をライバル会社に無償で譲って、
ドイツからエンジニアさんのルートで新しい製品を導入。
先駆的な技術を持った広島からも優秀な国産品を導入。
前年に蓄積したデータをもとに、やっと新技術をフル活用し始めたのが2010年。
繋ぎは良くなったんだけどね。
ガツン!と来るものはなくなっちゃったんだよね。
この車をずっと見てた人には面白い車だけど、
そうでない人から見たら凡庸で分かりづらい車だったかな。
圧倒的なスピードがある訳でもなければ、
華麗な足回りがある訳でもない。
ましてや総合力では簡素な造りの他社メーカーにも劣っている。
これじゃ、売れないよね。
それでもマニアな人たちは“イズム”“スタイル”という言葉を信じてたんだ。
2008年に発表された会社の理念は、いつか必ず永遠のものになると。

あれは当時の社長が独断で決めたことだったのかなぁ。
会社の方針ではなかったのかなぁ。
残念なことに、
職人気質だった会社は、
いつの間にかどこにでもある普通の会社に成り下がってたみたい。
非常にファンの多い車だからね。
意見も多種多様、厳しくなってしまうけど、
それだけみんな期待してるんだよね。
だって、あんな鮮やかな赤い車作ってるの、
ウチだけだよ。
他のはどす黒いのやら朱色がかったヤツとかさ。
カッコ悪いパチもんだよ。
そんなのに負けて悔しいじゃん。
だから頑張ってほしいし、
どんなに情けなくても支えてやろうって気持ちになるんだよ。

スタイルの構築とエンジニアの交代は、どんな関連性があるんだろう。
継続って、現場責任者を総取り替えしても出来るのかな。
第1ステージって、何なんだろう。
マネジメントって、今さら何言ってんだろう。
「快適で安全」って、ウチの車っぽくないな。
試走データや新製品、新技術情報が漏れるなんて、どういうこと?
なんてね、突っ込み所は沢山あるけど、
文章にしてリリースしたことを評価したいし、
文章では上手く伝えられない部分も大きいからね。

だって、ウチの車って、気持ちで走るんでしょ?
みんなで頑張って、みんなで協力して、
みんな同じ方向いて、みんなで同じ絵を描いて走るんだよね。
wonderlandって、いい名前の車だよね。




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