おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「男は敵、女はもっと敵」 山本幸久

2011年01月25日 | や行の作家
「男は敵、女はもっと敵」 山本幸久著 集英社文庫 11/01/24読了 

 文章のリズムは良いし、主人公の高坂藍子はエラい美人だけど、ちょっとワケありで、なにやら、面白げな設定である。不倫していた男が、いつまでも妻と離婚しないことにキレて、手近にいる中で最も冴えない男と結婚するものの、凡庸で刺激の無い男との暮らしにウンザリしてあっさり半年で離婚。こういうふうに衝動的に行動出来る人にはちょっと憧れるな(でも、好きでもない男と結婚するのは、やっぱり得策じゃない)。

 で、藍子の元不倫相手、元夫、元夫の新しい妻、不倫相手の元妻―それぞれの思いや、恋愛模様をアンソロジー風に綴っていく。パーツ、パーツは「上手いなぁ~」と激しく頷くところも多々あり。人間関係の機微って難しいんだよね~と思わされる。

 でも、全体のストーリーとしては散漫だし、面白みがイマイチですなぁ。物語としての醍醐味は最後までわからないままでした。「いったいこの人は何のためにここにいるの???」と聞きたくなるような存在意義がよくわからない登場人物もたくさんいた。

 どうせなら、藍子とその不倫相手ファミリーに絞った方が物語としては面白かったんじゃないだろうか。不倫相手の息子がなかなかいいキャラなのだ。そして、もとの鞘に戻ることはないけれど、一度は別れてしまった不倫男と元妻が新たなつながり方を見つけていくエピソードはステキだなと思った。この4人をメインプレーヤーにして同じぐらいの分量の原稿にしたら、グッと心に響いてくるような気がする。

 ついでながら、文庫版の最後に「オマケ」として収録されているストーリーには著者の代表作である「笑う招き猫」のメインキャラクターである女性漫才コンビが登場する。「笑う招き猫」を読んでいない読者は、「なんでここで漫才コンビが登場するのだろうか?」という唐突さに困惑するのでないだろうか?山本幸久ファンにだけ通じる(私はファンではなくて、たまたま読んだことがあったというだけ)内輪ウケっぽいネタふりは、なんか感じ悪いなぁ。まぁ、オマケだからいいけど…。


 ところで、「男は敵、女はもっと敵」なのだろうか? 少なくとも、ストーリーからはそんなニュアンスは微塵も感じなかった。


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