おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「ダブル・ジョーカー」 柳広司

2009年09月07日 | や行の作家
「ダブル・ジョーカー」 柳広司著 角川書店 (09/09/07読了)

 凡庸な人間として生まれ、取り立てた能力は無くとも食う寝るに困らずに暮らしていけるのは幸せなことと感謝しています。お金持ちを羨まない。美しい人を羨まない。痩せている人を羨まない-と思っていますが、でもでも、こういう本を読むと、才能がある人が猛烈に羨ましくなってしまいます!!! もう、とにかく面白い! 久々の「やめられない・とまらない」で、読み終えたら朝4時でした。

 4月29日読了の「ジョーカー・ゲーム」(角川書店)の第二弾。第二次世界大戦中の陸軍内部に作られた諜報組織・D機関を指揮する結城中佐と、その配下のスパイたちの物語。トーンを落とした、淡々とした文章。それでいて、読者を楽しませることに徹した緻密で、大胆なストーリー展開。「一筋縄ではいかない」と分かっていながら、ページを繰るたびに「おぉっ、そういうことだったのかぁ」「そこまでやるか?」という驚きが必ず隠されています。

 そして、2作目に至っても、主人公である結城中佐の人となりが未だにナゾのままです。読者に対しても、結城中佐がスパイであることに徹しているのがステキ。極上のスパイ小説にして、極上のエンターテインメント。

 それにしても、これがコミックカ化されているのが残念(余計なお世話ですが…)。可視的にしない方が読者の妄想の余地が大きくて面白いのになぁ。よもや、誰かが、映画化を思いつかないことを祈るばかりですが…でも、きっと、映画化したくなる人がいてもおかしくない。それぐらい、面白いです。

「精霊の守り人」 上橋菜穂子 

2009年09月07日 | あ行の作家
「精霊の守り人」 上橋菜穂子著 新潮社文庫 (09/09/05読了)

 スタジオジブリのアニメーションは世界に通用するファンタジーだと思う。上橋菜穂子は、活字の世界で世界に通用するファンタジーの書き手だと思う。ミヒャエル・エンデの「ネバー・エンディング・ストーリー」のような壮大さと、生きるとは何か、運命と向き合う勇気を持つとはどういうことなのか-を考えさせる深さがありました。
 
 帝の第二皇子・チャグムは、知らぬ間に精霊の卵を身体に宿してしまい、それが原因で、父親からたびたび命を狙われる。チャグムの命を救い、追っ手から逃れる旅に誘うのが女用心棒のバルサ。

 チャグムの成長譚であり、職業的闘士であるバルサが再び人間らしさを取り戻す物語でもありました。

普通、ヒーローと言えば若い男。そうでない場合でも、ナウシカのような強いけれど、強いだけではない、若く美しい女。この物語の真骨頂は、薄汚れた身なりで、肌はボロボロの、30歳過ぎの疲れたオバサンを主人公としたことだと思います。

あえて日本ではないどこでもない国を舞台とするために、国の名前、人の名前を初めとして耳慣れない響きのカタカナがたくさん出てくるのが、ちょっと、キツかった。