おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「エスケープ!」 渡部建

2009年09月09日 | わ行の作家
「エスケープ」 渡部建著  幻冬舎 (09/09/08読了)

 お笑コンビ・アンジャッシュの渡部建の処女小説。週刊誌か新聞か忘れてしまいましたが、どこの書評で絶賛されていました。帯には映画監督の「映画化させて下さい!!」、放送作家の「悔しいけれど面白い!」と激賞コメントが並んでいます。「へぇ~、そんなに才能がある人だったのか」と、見事にセールストークに乗せられて買っちゃいました。

ちなみに、私は、アンジャッシュのファンというわけではありません。「顔は知ってる!」という程度。なにしろ、この本を読み終わった今に至っても、「著者は、わたなべさん? それとも、わたべさん?」というぐらいの知識レベルです。

読み始めて30ページ。「失敗した!営業トークに騙されたよ!」と軽い失望感に襲われました。平凡な大学生が、大して努力もせずに内定をくれた企業に妥協で就職を決め、社会人になったら結婚したがっている彼女からは逃げられないだろうなぁ、まあ、そんな人生もしょうがなないっかなぁ…などと考えている。いかにも、いまどきの草食青年っ感じなのですが、たまたま読んでいた雑誌に、空き巣の手口を紹介する記事があったことをきっかけに、なんと、彼は、自分の彼女の友達であるお金持ちのお嬢様の家に空き巣に入ってしまうのです。

この時点で、私のツッコミモードは全開! 「おいおい、いまどきの草食男子が、そう簡単に空き巣なんてしないでしょう。犯罪に手を染めるには、どうしようもなく追い詰められて、やむにやまれずという舞台設定が必要だよ!」「だいたい、今どきのお金持ちの家が、そんなセキュリティが甘いハズないでしょ。ピッキングで解錠する前にセコムが飛んでくるって!!」と心の中でブチブチと文句。やっぱり、芸能人が本を出すと、面白さを5割ぐらい水増しして、売りまくるんだなぁ…などと考えながら惰性で読み進む。

しかし、草食男子の一人語りである第1章が終わり、第2章に突入すると…「あれ、もしかして、このストーリーって、それほどツマラナイわけではない???」という気分になり、第3章に入ると「激賞とまではいかないけれど、処女小説としては、すっごく頑張ったんじゃない!?」と、ちょっと見直す。最終章の4章に至り、「なるほど、そういうことだったわけね! 結構、練られてますなぁ」と感心してしまう。確かに、映画監督が「映画化させて下さい!」と言いたくなる気がわかるような気がする。

2章以降も詰めの甘いところはあちこちにあり、突っ込みどころ満載ではあるのですが、それって、編集者がもうちょっとアドバイスしてどうにかできなかったのかなぁ…。アイデアは面白いので、磨けばもっともっともっと光る作品になったに違いありません!

頑張りました! 敢闘賞!!!