温泉クンの旅日記

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読んだ本 2015年11月

2015-12-02 | 雑読録
  <読んだ本 2015年11月>

「あのぉ・・・良かったらこれ食べてください」

 猫好きの同僚が差し出したコンビニの袋を覗きこんで、思わず腹を押えて「にやんじゃー、これは!」と松田優作をちょっとアレンジした一発芸をかまそうとする自分を間一髪押しとどめた。職場で男を下げて人格を疑われてもしょうがない。



 市販はされていないそうで、わたしは丁寧にお礼の言葉を言った。ただ、無類の猫好きとしては猫のイラストが可愛くないところが気に入らない。

 というわけで、化学調味料着色料不使用の「猫好き用ラーメン『にゃーん麺』」を土曜日の昼に自分で作ってみた。注意書きには「猫ちゃんにはたべさせないでください」とあった。

 袋麺だけは裏にかいてある「召し上がり方」などを読まずに、最後まで鍋の前を離れずに自分の「感」だけでつくる。袋麺は子どものころからつくっていたのだ。
 鍋に適当な量の水を入れいきなり乾麵を投入する。何度もひっくり返しているうちに湯が煮立ってくるので、ていねいに麺をほぐし、ほぐし切ったら蓋をしてしばし待ち、麺の茹でぐあいを何度も点検して通常より軟らかくなったところで火を止める。
 スープの素を投入してよく混ぜる。鍋のなかのものをすべてラーメン丼に入れきって出来上がりである。水の量がすこし足らなかったかもしれないが、まあいいか。



 なにも載せないので彩りもなく絵ヅラは相当に悪いが、初めて食べる袋麺を自分でつくるときは必ず「具無し」で味見するのだ。
 麺はすこしだけ軟らかくしたことにより、乾麵っぽくなくなりまあまあの食感である。鍋のなかで丁寧にスープを混ぜたから麺に絡みよく馴染んでいい線いってる。
 スープは、猫が好きなかつおぶしをたっぷり使ってあるので和風で美味しい。

 あっという間に食べきった。旨かった。
 昼の一食には足らないとわかっているので、仕上げのサイドメニューは納豆巻にしたのだった。



 ブログを書いている途中で、水木しげるさんの訃報が耳に入った。その昔に鬼太郎ファンであり、はるばる水木しげるロードを訪れたことを思いだす。残念である。心からご冥福をお祈りします。

 さて、11月に読んだ本ですが、今月は7冊、累積で69冊でした。今年は80冊には届きそうもありません。
 なんと、一カ月読んだ本、珍しくすべて時代小説であった。

 1. ◎御奉行の頭の火照り  物書同心居眠り紋蔵   佐藤雅美 講談社
 2.○八朔の雪    みをつくし料理帖①      高田郁  ハルキ文庫
 3. ◎花散らしの雨  みをつくし料理帖②      高田郁  ハルキ文庫
 4. ◎想い雲     みをつくし料理帖③      高田郁  ハルキ文庫
 5. ◎今朝の春    みをつくし料理帖④      高田郁  ハルキ文庫
 6. ◎小夜しぐれ   みをつくし料理帖⑤      高田郁  ハルキ文庫
 7. ○初花 吉原裏同心五              佐伯泰英 光文社文庫

 居眠り紋蔵シリーズはさすがに佐藤雅美、達者でジツに面白い。

 将軍家斉は退屈しのぎに「吹上上聴(ふきあげじょうちょう)」を度々行ったそうだ。
 江戸城の奥にある吹上という広い庭に、仮の桟敷と御白州をもうけて将軍や将軍世子が傍聴するところで寺社、町、勘定の三奉行所八奉行が実地にお裁きをしてみせ、これを公事上聴とか吹上上聴といった。
 要は将軍の暇つぶしである。

  『将軍はふだん中奥の御座之間にいて政務をとる。「伺いのとおりたるべし」「いま一度とくと考えよ」
  などと伺いに応答するのだが、それらにさして時間をとられるわけではなく、おおむね暇にしている。
  そこで、あれこれ暇潰しをする。

   三代将軍家光は日光東照宮に父の二代将軍秀忠との同行の二度を合わせて十度もでかけた。
  京へは秀忠と二度、単独で一度と三度も出かけている。
  五代将軍綱吉は金がないから京はおろか日光にもでかけられなかったのだが、かわりにお気に入りの
  重臣柳沢吉保の屋敷に実に五十八度も出かけた。ほかにもやはりお気に入りの重臣牧野成貞の
  屋敷に三十二度、側用人松平輝貞の屋敷をも頻繁に訪れた。
   八代将軍吉宗は財政再建に、法整備にと政務に没頭したが、十一代将軍家斉は大奥の女に目を向けた。
  手をつけた女はほぼ四十人。正室も含めて十七人から子女を五十四人ももうけている。』





「『鬼平犯科帖』とか江戸モノが好きなんです」
 テレビから聞こえた会話に思わずパソコンの手を止めた。発言したのはJUJUという歌手らしいのだがわたしは知らない。女性で池波正太郎好きはなかなかシブいが、好感が持てる。

「テレビをご覧の皆さまに、なにかお薦めの本はありますでしょうか」
 そうして答えたのが、この「みをつくし」シリーズだ。
 騙されたつもりで二、三冊読んでみるかと思い、読みはじめたら面白くて一気に五冊読んでしまった。

 口入れ屋からの手伝いの老婆りうが若い料理人の娘、澪に言う。

  『「あんたはまだ、恋、という厄介なものを知らない。女は恋を知ると変わるんですよ。
  良い方にも、悪い方にもね」
   僅かに身を固くしている娘の肩を、優しくぽんぽんと叩いて、りうは俎橋を渡り始める。
  澪は慌てて追い駆けて、
  「りうさん、恋は厄介なものなんですか?」
   と問いかけた。ふぉっふぉ、と歯の無い口で笑いながら、りうは澪を振り返る。
  「厄介ですとも。楽しい恋は女をうつけ者にし、重い恋は女に辛抱を教える。淡い恋は感性を育て、
  拙い恋は自分も周囲も傷つける。恋ほど厄介なものはありゃしませんよ」
   両の眉を下げて、澪は少し考えた。
  「なら、楽しくて拙い恋には手を出さないようにします」』
   一瞬、りうはぽかんと娘を見て、それから腹を抱えて笑い出した。もとから二つ折れの身体を
  さらに丸めて高笑いする老女を、行き交うひとが珍しげに眺めている。
  「そうそう思い通りに行かないから、厄介なんですよ」』

 
     高田郁「花散らしの雨 みをつくし料理帖」 ハルキ文庫より

 剣豪同士の斬り合いもなければ盗賊も出ない、料理がテーマの笑いあり涙ありの人情もの時代小説でわたしがこれほどハマった本はとにかく初めてである。



  →「水木しげるロード(1)」の記事はこちら
  →「水木しげるロード(2)」の記事はこちら
  →「読んだ本 2015年10月」の記事はこちら

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