杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・子どもの生理痛 ~ 鎮痛剤と人権問題と

2012-01-14 14:03:36 | 教育
今でこそ生理用品に関しては、テレビで四六時中実物を映しながら、若い女性がコマーシャルをしていますが、
でも、その実態についてはどれくらい科学的に理解されているでしょうか。

かくいう私も、つい最近「そうだったの」と知るようなこともあり、
一度取り上げてみようと思いました。


まず、なぜ働く女性には生理休暇があるのになぜ生理休校がないの?


働く人には、生理休暇というものが以前からあります。
<生理休暇>
第68条
「 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。」

・生理休暇を取得するにあたっては、請求をしなければなりません。
・本人の口頭による申し出以外の要件(医師の診断書)などを提出する法的義務はありません。会社がそれらの手続きを求めることも労働基準法違反と判断される可能性が高く、結果として生理休暇は申請さえすれば取得できるという事になります。
・ここでいう労働者とは全ての雇用形態を含んでいますので、契約社員だから、パートだから生理休暇が取れないという事もありません。

・ 生理期間、その間の苦痛の程度あるいは就労の難易は個人差があり、客観的な一般基準は定められないので、就業規則その他によりその日数を限定できません。

<休暇中の賃金については>
生理日の就業が著しく困難な女性が生理日に休暇を請求した場合、その間の賃金は労働契約、労働協約又は就業規則で定めるところによって支給しても、しなくても差し支えないことになっています。


<生理休校は?>
 では、なぜ、学校に通っている子どもには生理休暇がないのでしょうか?
これには2つの理由がありました。

1 子どもの生理痛と大人の生理痛は違う
  子どものいわゆる「生理痛」即ち月経困難症の一つである月経痛は、成熟した人におこるいろいろな原因とは異なり、
  未熟なために起こる生理的なものが多いのです。
  だから、その痛みは鎮痛剤などによる対策出収まることが多いのです。

これに対して、成熟女性の場合は、子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症・性感染症による癒着などの原因が考えられます。
 鎮痛剤を増量しても効果少なく、むしろ、それでぐずぐずしていると診療の機会を逃す可能性があるのです。

  従って、子どもの月経困難症の場合は、むしろ、早めに痛み止めを飲み、痛みを軽減し快適に過すことが適当です。
もし薬が今まで効いていたのに効かない場合は、若い世代でも、他の出来事(卵巣脳腫等.)が生じた可能性もあるので、受診を勧めます。

 ※ 薬物療法
  ア 第一選択は鎮痛剤。市販されているような薬品で自分に合うものでよいです。
                       (頭痛薬・歯痛薬etc.)
  イ 第二選択は低用量ピルの服用。
 若い人の服用は健康によくないと反対する人もいますが、月経が始まっているという事は  
   卵巣・脳中枢の働きが開始しているということで ピルの使用を禁止する理由にはならないと報告されています。
 
    排卵すると、プロスタグランデインという子宮収縮ホルモンが分泌され、これは月経痛の一因になります。
   なぜなら、未成熟の段階では、プロスタグランデイン分泌の調節が出来ず、過剰な分泌・子宮収縮増強が、痛みを増強するからです。
  成熟するにつれプロスタグランデイン分泌の調整が整うと、子宮収縮も適当になり痛みも軽減します。
   この未熟な間に鎮痛剤が有効な人もいますが、効果がなければピルを薦めます。
   ピルによる排卵抑制・プロスタグラン分泌抑制により、子宮収縮軽減=月経痛緩和になります。
   服用している間に、プロスタグランデイン分泌の調節が完成します。
 月経が開始したばかりの人は、まだ毎回排卵するとは限らず、プロスタグランデインが原因でない人も多いので、
   鎮痛剤のみで耐えることが可能かもしれません。
   でも、受験その他、大切なときに、月経のトラブルにまきこまたくない場合、
   ピルで月経の時期をずらすなども、最近は、保護者が希望することがあります。

  ※ ピルって安全?
  ピルは、今妊娠したくないが、将来良い妊娠・出産をしたい人が、一定期間服用し、
   自分の計画にあわせ服用中止し妊娠・出産に備えるものです。
   もしその際、妊娠しなかったり,胎児に異常が生じるような薬剤なら、認可されません。
    受験など直前に飲む事は、好ましくありません。薬剤に伴う副作用(ムカムカ,眠気など)は皆無ではないので、
   前もって服用し薬になれることも必要です。
これは思春期の性中枢の周期性が確立していないとき(月経不順・卵巣機能不全)、
   周期性を獲得する治療法としての役割もあります。

 ※ 痛み止めは出来るだけやめた方がいい?
「痛み止めは癖になる、将来妊娠etc.にマイナスだ」など言う母親などは、勉強不足です。
    子どもが快適に学生生活を送れるように、適切な理解を得るため、学校とか地域とかの工夫が必要です。
 ※ 母の姿勢?
また、母親が、毎回月経時辛そうにしていると、それを見て無意識に学習し、自分も大変と思い込む子もいます。
    朗らかに大切なものとして学んで欲しい。親の態度も大切です。        

2 子どもの学習の必要性
  子どもに休校を認めない理由として、一方で、月経で痛みがあときに学校を休んでもいたみが軽くなるわけではありません。
 むしろ、2~3日あるいは4日(年に30日前後)休んで、登校したとき授業が理解できない遅れを
 どうやって取り戻すかの方が問題です。
  この点、ある程度成熟した女性の場合は、学問なら後から自分で学ぶことが出来るし、
 勤務なら、休む前あるいは休んだ後に、その間の自分の業務を補充する努力が出来ます。
 つまり、自分自身の自覚の下に対処出来る可能性が高いわけです。

 以上のように、1つは痛みが緩和できる可能性が大きく、それで足りること、他方休むと勉学の上で不利になることです。  


<環境の整備の重要性>
 ただし、1度、辛い、恥ずかしい思いをすると、次回の月経が怖くなります。また、無理解があると、大きな支障を残すこともあります。そこで、学校を休まなくても学校に通って勉強をしやすい環境の整備が必要です。
  ① まわりの友だちの理解・・・適切な知識をもつこと、そのための学校で同レベルの知識の共有のための指導が必要と思います。
② 保護者の理解・・・保護者も以外と知識がなかったりします。子どもの男女を問わず、親が適切な理解と対処を行うことが必要です。
     ※ たとえば父子家庭などの場合に、電話などで相談して正しい情報をもらえるところがあるといいと思います。

  ③ 教職員の配慮・・・教職員の理解とそのための対処方法の確立・ 教職員に対する指導
  

<生理の問題を権利として考えると>
憲法13条、25条、26条、子どもの権利要約24条が関係します。

 憲法13条は、それぞれの人が尊重されること、ひとり一人が幸せに暮らすことが保障されています。
        女児が身体の安全と健全な育成の元、学業を行うことは保障された権利です。
憲法25条は、健康で文化的な生活を保障するように、環境の整備は度を国や自治体に求めていけます。
 憲法26条 生理時にもちゃんと教育を受けられるように、大人や社会にその整備、を求めることが出来ます。

児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)
   24条  到達可能な最高水準の健康を享受すること・・・について児童の権利を認める
いかなる児童もこのような保健サービスを利用する権利は奪われない。       

このように、生理にまつわる問題も、ちゃんと権利として保障されています。


注:医療についてのご指導は、産婦人科 堀口貞夫医師、同 堀口雅子医師 でした。

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