そのご老人は、何度も何度も、同じ話を繰り返していました。
そして最後に必ずこう言いました。
「おらァ、心で涙出だった」
そのご老人は一人暮らしのようです。離婚したのか死別したのか、奥さんはおらず、子供もおらず当然孫もいない。日々酒ばかりを飲み、やさぐれた生活をしているらしい。
ある日、いつものように飲み屋にいくと、子供連れの客がいました。酒場に子供を連れてくる親も親ですが、ともかくそこに子供がいた。
ご老人は随分と、その子供に、初めて会った子供に懐かれたようです。
ご老人はそのことが大変にうれしかったらしい。飲むのも忘れて子供の相手をずっとしていたようです。
言葉の端々に社会に対する斜に構えた姿勢を含ませながら、子供には分かるんだ、だの、自分は近所の犬猫にも好かれてるだの、なにやら自慢げに語りながらも、最後には
「おらァ、心で涙出だった」
そんな話を、何度も
何度も。
懐かれるということは頼られるということ。信頼されるということ。
小さな子供には嘘も打算もほとんどない。少しはあるかもしれないが、ほぼないといって良い。
そんな小さな子供に懐かれる。普段やさぐれた身にとって、それは身が打ち震えるほどの感動だったのでしょう。
自分にもまだ、見込みはあるかもしれない。それは、ご老人の心の中で微かに燃え残っていた「良心」の炎が、一瞬激しく燃え上がった瞬間だったのかもしれない。
他人に無条件に信頼されることは、人にとって無上の喜びであり、人に力を与えるものです。

1978年公開の、宮崎駿監督によるアニメーション映画『ルパン三世 カリオストロの城』。
公女クラリスをカリオストロ伯爵の魔の手から守るため、命がけの戦いを挑むルパンとその仲間たち。
ルパンは若い頃、公女クラリスの助けられたことがありました。
カリオストロ公国の秘密を探るため、城内に侵入したルパンでしたがあえなく失敗、手傷を負わされ、大公の城に逃げ込みますがとうとう動けなくなり、庭の片隅でうずくまっていました。
そこへ現れた5~6歳の少女。少女はルパンを見つけると、どこかへ駆けて行ってしまいます。
年貢の納め時か……ルパンは諦めかけますが、そこへ先ほどの少女が駆け戻ってきました。
水で満たされたコップを手にして。
少女は誰にも知らせることなく、この一杯の水をルパンに与え、ルパンはその水によって息を吹き返し逃げることが出来たのです。
その少女クラリスが、国の摂政を務めるカリオストロ伯爵と無理矢理結婚させられると知り、ルパンはクラリスが幽閉されている塔に潜入します。
ルパンとクラリス久々の邂逅。クラリスはルパンのことを憶えてはいませんでしたが、泥棒を名乗るルパンを、何故かそのまま受け入れます。
その真っすぐな瞳、あの時と変わらない純粋な瞳でルパンを見、クラリスは無条件にルパンを、こんな「悪党」を信頼してくれてる。
その時、ルパンは決意したに違いありません。
命かけてでも、この子を守る、と。
悪役カリオストロ伯爵登場に、クラリスは必死にルパンを庇い守ろうとします。そこに一切の計算はない。クラリスはただ、この自分を救ってくれるという泥棒を無条件に信頼し、庇おうとした。
しかしルパンは落とし穴に落とされてしまいます。その場に頽れるクラリス。
その時、何処よりかルパンの声が聴こえ、クラリスを励まします。ルパンは、クラリスの指に嵌めた指輪に仕込んだ無線機を通じ、必ずクラリスを救い出すと宣言するのです。
その時のセリフが
【女の子が信じてくれたから、空だって飛べるさ!】

どんな悪党の心の中にも、「良心」の光は残ってる。
純な瞳の無条件な信頼は、その微かな残光を一瞬でも強く煌かせるきっかけとなるのかもしれない。
そこで一時なりとも、「良心」の光を取り戻すことが出来るか否かが、
分かれ目、なのかも
知れませんねえ。

本当にクラリスと美智子皇后陛下は、永遠の理想の女性です。
神が君帰依
こんな私にもそんな無条件で無垢な瞳で信じてくれる女の子がおりまして、、、だからわかるのです、やさぐれたおじさんとルパンの気持ちが…。
生きていく一縷の光なっておりまする〜( T_T)\(^-^ )