風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

北林谷栄

2020-09-12 05:35:47 | 名バイプレーヤー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20代のころから老婆を演じ続けた、所謂老役(ふけやく)の第一人者で、「日本一のおばあちゃん女優」と言われた方でした。

 

都会の老婆、田舎の老婆。大富豪の老婆から貧乏人の老婆。怖い老婆に優しい老婆。なんでもできますが、私が特に感心したのは、「訛り」なんです。

 

映画『人間の証明』と『野生の証明』に相次いで出演されているのですが、どちらも東北の田舎町に住む老婆で、その東北弁が余りに自然で、初めて見たときは、本物の東北のおばあちゃんかと思いましたからね。

東京生まれの東京育ちの方なのですが、そのイントネーション、発音等、本当にネイティブかと見紛うばかりの完璧さでした。

きっと耳が良いのでしょうね。素晴らしかった。

 

 

そうかと思うと、鬼平犯科帳の「笹屋のお熊」というエピソードでは、鬼平さんの古い馴染みで、威勢のいいチャキチャキの江戸弁をまくし立てるお熊ばあさんを演じ、見事な江戸弁を披露しておりました。

 

今や、まともな江戸弁を話せる方はほとんどいなくなってしまいましたからね、あれは貴重です。

 

アニメ映画『となりのトトロ』では、サツキのクラスメート、カンタのおばあちゃんの声を演じ、その絶妙な訛り具合が見事でした。

 

田舎の婆さんを演じると、本当に田舎の人になってしまう。田舎のご老人が持つ独特の空気感をも醸し出す。本当に完璧な「田舎者」になる。

都会生まれの都会育ちなのに。

 

改めて思う、凄い女優さんでした。

 

 

衣装はすべて自前だったそうです。例えば盛岡の朝市で働いていたおばあさんが、実際に着ていた古着など、市井に暮らした名もなきおばあさんたちが着ていた古着を買い集め、役に合わせてご自分で衣装を選んでいたのだそうです。

老役の第一人者であることの誇り、でしょうか。今や老役専門の役者さんなど、ほぼ皆無といっていい状態です。北林さんのような役者さんはもう、

 

出てこないのでしょうねえ。

 

 

 

1911年、明治の御代に生まれ、2010年、平成の御代に亡くなられました。大往生です。

 

その類い稀なる素晴らしき女優人生に、心よりの惜しみない拍手を送りたい。

 

お疲れ様でした。

 

 

ありがとうございました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿