風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

この道一筋

2017-05-11 12:18:16 | 雑感







MEGADETH [Dystopia] 2016




今年の2月、アメリカ最高の音楽賞、グラミー賞のメタル・パフォーマンス部門において、デイヴ・ムステイン率いるヘヴィ・メタル・バンド、メガデスが賞を受賞しました。


この式典においてグラミー側に笑えない不手際がありました。メガデスが登壇する際、生バンドによるBGMが演奏された曲が、メガデスの曲ではなく、長年不仲であったメタリカの曲が演奏されてしまったのです。


デイヴ・ムステインといえば、頭は良いが皮肉屋で、喧嘩っ早いトラブルメーカーというイメージが強い。事情を知る人たちは一瞬青ざめたことでしょう。両バンドは近年仲直りしたとはいえ、なんたって「あの」デイヴ・ムステインですから……。


しかし周囲の心配もどこ吹く風、デイヴは終始上機嫌であったとか。このグラミー側の不手際に対し、メガデスのファンから多数の抗議が寄せられたらしいですが、

「やつら(バンド)がメガデスを演奏できなくても攻めるなよ」と、メガデスの曲はそれだけ難しいのだというジョークを込めてファンの気持ちを汲み取りつつ、グラミーの不手際を赦す発言をしています。


丸くなったね、デイヴ。



若い頃、まだインディーズ・バンドの一つに過ぎなかったメタリカに在籍していたころのデイヴ・ムステインは大変酒癖が悪く、飲んでは喧嘩、飲んでは喧嘩を繰り返す。余りの素行の悪さに辟易したメタリカ側はついにデイヴを一方的に解雇してしまう。このほぼ騙し討ちといっていいような仕打ちに激怒したデイヴは、「絶対奴らには負けない!」と、打倒メタリカを胸に、音楽活動に邁進していきます。


古巣のメタリカはその後メジャー・デビューし人気は鰻登り。その存在はもはや社会現象といって良いほどの大物となっていき、いまやアメリカを代表するモンスター・バンドとなりました。メタリカによって、アメリカの音楽シーンにおけるメタルの位置は大きく変えられたといっていいでしょう。



一方のデイヴ・ムステインは、偶々同じ安アパートに住んでいたベーシスト、デイヴ・エレフソンの知遇を得、自らのバンド、メガデスを結成。以来30年、ひたすら己のメタル道を突き進んできました。

アルコールの問題はデイヴ・ムステインを苦しませ続けました。体調の悪さから活動もままならず、一時は解散状態に陥ったこともあり、その性格の悪さはバンド・メンバーとの軋轢を生み、度重なるメンバー・チェンジを繰り返し、盟友であったはずのデイヴ・エレフソンでさえ、一時期バンドを離れたこともありました。


このままではイカンと、ムステインは自ら酒断ちを行い、アルコール中毒の治療を受けることを決意します。その後体調は順調に回復し、無事バンド活動を再開、一時期離れていたデイヴ・エレフソンもバンドに復帰し、地道に無骨に自らのメタル道を進み続け、何時しかメガデスは、メタル・シーンの中で確固たる地位を築いてきました。



己のメタル道をひたすらに進み続けているうちに、いつの間にかメタリカに対する怨念は雲散霧消してしまったようです。お互いが過去のいきさつを水に流し、今では「それなり」に親しい関係が続いているようです。

口に出しては言わないかも知れませんが、ムステインには分かっているのでしょう。


メタリカがあったから、今の自分があると。



苦節30年、様々なことがあった中ひたすら突き進んできた、己自身のメタル道。その苦難の道のりは、ムステインの人間性に「深み」を与えたように私には思えます。


どのような道であれ、道を極めた先にある「境地」とは、実は同じなのかもしれない……。


なんてことを思いつつ、今後メガデスがどのようなメタルを我々に示してくれるのか


楽しみです。





METALLICA [The Four Horsemen] この印象的なギターリフが、デイヴ・ムステインの手によるものであることは、ファンの間では有名な事実です。