~プロローグ~
【古城の風景1 宮城谷昌光】より
『作手はふしぎな村である。のちにぎょう名を天下に馳せる奥平氏と菅沼氏を産んだといえるからである。こういう縁起の吉い地は、踏んでおいたほうがよい。』
作手は合併して、現在新城市となりました。
新城市内には中央構造線が走っており、近年、知る人ぞ知るパワースポットの穴場として知られています。
市外からパワースポットを求めて多くの方が来訪しているようで、住民にも「パワースポットって何?」と知られつつあります。
そんな話をしていたとき、仲間内で『古城の風景』の話になり、
「これって、パワースポットってことなんじゃないか?」
と、いう話となり、
「ならば、その効果を検証してみたらどうか?」
と、いう話になる。
パワースポットをネットで検索してみると、『気』だの『ゼロ磁場』だの様々な説明があるのですが、それを実感できる者はこの中にはいない。。。
どうやって効果測定しろというのか?
困惑した我々を重苦しい空気が覆った。
その時、
「パワースポットと思われるところへ宝くじを買って持っていったらどうか。」
と、誰かの口を借りて神が言った。
これならば、客観的な効果検証が可能な上、我々は実利を得ることができる。
これぞ『一石二鳥』。
欲にまみれた凡人の集いだけに、
「それだ!」
と、即決。
話は決まった。
しかし、我々には気がかなりなことが一つあった。
『高額当選をした場合、揉めるのではないか。』
と。
「あれだけ仲の良かった我々は、一体どこで間違ってしまったのだろう・・・。」
小田和正の「言葉にできない」の調べとともに、誰かが刃物を手にして呟くことになってしまうかもしれない。
欲にまみれた凡人の集いだけに、皆、同じ光景が頭に浮かんだ。
そこで、我々は予めルールを決めた。
『高額当選した場合、新城以外のパワースポットとその威力を比較する旅費として利用する。』
・億単位で当選⇒飛行機ファーストクラスで世界のパワースポットを訪れ豪遊する。
・千万単位で当選⇒新幹線グリーン車で日本のパワースポットを訪れ豪遊する。
・百万単位で当選⇒新幹線指定席で日本のパワースポットを訪れ豪遊する。
・十万単位で当選⇒自家用車乗りあわせで日本のパワースポットを慎ましやかに訪れる。
・万単位以下で当選⇒次回の原資とする。
ルールを決め終えたとき、誰かが言った。
「すごいじゃん。ファーストクラスだってよ。」
皆、億単位で当選を決めたかのような錯覚に捉われたのだった。
行動に移さねば。。。
こうして我々は、検証作業を始めることにした。
第1章 アタック1,425
我々が、この記念すべき企画の最初に選んだ場所は、
古来より霊験あらたかなことで知られる『煙厳山 鳳来寺』
今から1300年前に利修仙人なる仙人が開山。
仙人の霊力は大変強く、その噂は時の朝廷にも伝わり、時の天皇、文武天皇の病を治したといわれます。
そして、奈良の朝廷に向かう際に、利修仙人は鳳凰に乗って飛んでったとか。
※鳳来寺入口に立つ利修仙人像。どことなく「せんとくん」に似てますよね。それもその筈。作者は一緒。
そんな鳳来寺が大ブレークを果たしたのは戦国時代。
三河の領主松平広忠は、尾張の織田、駿河・遠江の今川などの強豪に挟まれ国の存続すら危うい状態。しかも、なかなか後継に恵まれなず、思いあまって妻の於大とともに子宝祈願のためこの鳳来寺に参篭します。
そして見事男児を授かります。
寅の年、寅の月、寅の日、寅の刻。
この男児が産まれた時、鳳来寺にあった十二神将のうち、鳳来寺の本尊薬師如来を守護し、寅神でもある真達羅大将の神像が忽然と姿を消し、この男児が薨ずるといつの間にやら戻っていた、と言われています。
誰あろう、その男児の名は、
『徳川家康』
奥さんが怖かったり、食い逃げ未遂を起こしたり、うんこ漏らしたり、できもので死にかけたり、と、色々とありましたが、最後にてんぷら食って死んだ人です。
すごく断片的な情報ばかりでわかりにくいですね。
関ヶ原の戦いで勝って、260年続く江戸幕府を開いた人です。
その男を産んだ寺、それが『鳳来寺』なのです。
そんな訳で、江戸時代は多くの寺領を有し大変に栄えたのですが、江戸幕府を倒した薩長明治政府に目の敵にされてしまい、廃仏毀釈の流れも相まって寺宝は散逸、寺は荒廃、挙句の果てに火災により焼失します。しかし、日本でも有数の広大な山林面積を所有していたことが幸いし、山林景気で復活。
今に至ります。
祈ったら天下人を産んだ。
これをパワースポットと言わずしてなんとする。
実際、恋愛・安産・子宝祈願の寺として有名です。
まずは、ここをターゲットに定め、この企画の無事を祈ろうではないか。
「折角行くのであれば、車で頂上に登っちゃうんじゃなくて、1,425段の石段を上がれば御利益が大きいんじゃない?」
誰かが不用意に発したこの一言が、後に我々をさいなむこととなります。
まずは今回の検証に使用する宝くじを購入する。
この時期、残念ながらジャンボが発売しておらず、やむなくスクラッチを購入。
当選しても最大200万円ですが、これならば、その場で結果が見えるので効率的。
ついでに、7月4日発表の自治宝くじも購入。こちらは当たれば1億円!
売り場の方と話をすると、
「こないだドリームジャンボでうちから1億出たけど、その人、鳳来寺山に登って祈願したと言ってたよ。」
『ななななななんだとぉぉぉぉ!』
我々のやろうとしたことを既に実践し、実際に御利益を得た者がいるだとぅ!
ならば、我々も御利益を得ることができる筈。
そう思ったのでしょう。
皆で出し合ったお金で宝くじを共同購入した後、「自分の分をついでに買っておこう。」と抜け駆けする者が現れ、気が付けば全員自分用も購入していました。
※『修羅の群れ』という言葉を図示するとこうなる、の図。
「どうしよう。高額当選したことがバレると変な寄付依頼が殺到したり、親戚が突然増えるというから。気をつけないかんね。」
鳳来寺へ向かう車中、我々は既に当選後の心配をしていた。
高額当選の。
鳳来寺山麓の無料駐車場に車を止め、歩いて山頂に向かう。
途中、我々の目に飛び込んできたのは弁財天だった。
「弁財天。インドの神様から来てるらしいが、財を司る神だと。」
財と司る神!
神は一瞬で我々のハートを鷲掴みにした。
これは、効果を試さないといけないでしょう。いけないでしょうよ。
修羅の群れは一斉に弁財天に群がり祈りを捧げる。
そして、いよいよスクラッチを削り、皆が息を潜め見守る中、初の結果が現れた。
この模様は動画で!
「鳳来寺の階段も登らずに霊験を得るなど、虫がよすぎるんじゃないか?」
この一言は妙に説得力があった。
そうだ。
栄光は苦難の末にある。
楽して儲かる話にろくなモノは無い。
我々は大いなる心得違いに気がついた。
さて、気を取り直した我々一行は、鳳来寺本堂を目指して進む。
そう。まだ、石段まですら行っていないのであった。
アスファルトで舗装され、少しだけ傾斜が付いた平坦な道を進んでいるだけなのに、既に眉間に皺が寄っている者がいた。
「あかん。私、もうエライは。」(エライ、は、「疲れた」「しんどい」の方言)
これから1,425段の石段を登る。
しかし、既に音をあげそうな者が。
『大丈夫なのか?、本当に登れるのか?』
という疑念が、真夏の入道雲のように湧き上がった。
途中、若山牧水の碑を見つける。
※なんとなく同じポーズを取ったら、想定外に似ていたの図。
この若山牧水。
鳳来寺の仏法僧の声を聞くために訪れ、鳳来寺紀行なるエッセイを書く。このエッセイがヒットし、鳳来寺の参詣客が激増したとか。
ちなみに、若山牧水は酒の飲みすぎで、死去した際、残暑の時期にも関らず遺体が腐敗しなかったといわれています。
生きながらアルコール漬けに。。。ちなみに、この鳳来寺にいるときも、妻に酒代をくれ、と、ねだっていたりします。
そんな小ネタで体力を図りつつ、ようよう参道入口に到着。
この石段。運動不足には結構きついが登ることは可能、という絶妙な設定。
我々はここで、『石段を苦労して登ること自体に御利益があるのでは無いか』と考えた。
そこで、0.1t近い体重を誇り、明らかに石段向きでないM田氏が、もっとも石段踏破の御利益を得るはずと考え、彼の帽子の中に宝くじをありがたく押し頂き登ることとした。
※タオルを頭に載せ、
※帽子をかぶる。
※こんな感じ。
鎌倉時代に源頼朝が整備したと言う石段。
石段を登りパワースポットの効果を得ることはできるのか?
いよいよ石段を登り鳳来寺本堂へ!
そこで我々は驚きの光景を見る。
次回『鳳来寺本堂から愛が見える』
お楽しみに。
【古城の風景1 宮城谷昌光】より
『作手はふしぎな村である。のちにぎょう名を天下に馳せる奥平氏と菅沼氏を産んだといえるからである。こういう縁起の吉い地は、踏んでおいたほうがよい。』
作手は合併して、現在新城市となりました。
新城市内には中央構造線が走っており、近年、知る人ぞ知るパワースポットの穴場として知られています。
市外からパワースポットを求めて多くの方が来訪しているようで、住民にも「パワースポットって何?」と知られつつあります。
そんな話をしていたとき、仲間内で『古城の風景』の話になり、
「これって、パワースポットってことなんじゃないか?」
と、いう話となり、
「ならば、その効果を検証してみたらどうか?」
と、いう話になる。
パワースポットをネットで検索してみると、『気』だの『ゼロ磁場』だの様々な説明があるのですが、それを実感できる者はこの中にはいない。。。
どうやって効果測定しろというのか?
困惑した我々を重苦しい空気が覆った。
その時、
「パワースポットと思われるところへ宝くじを買って持っていったらどうか。」
と、誰かの口を借りて神が言った。
これならば、客観的な効果検証が可能な上、我々は実利を得ることができる。
これぞ『一石二鳥』。
欲にまみれた凡人の集いだけに、
「それだ!」
と、即決。
話は決まった。
しかし、我々には気がかなりなことが一つあった。
『高額当選をした場合、揉めるのではないか。』
と。
「あれだけ仲の良かった我々は、一体どこで間違ってしまったのだろう・・・。」
小田和正の「言葉にできない」の調べとともに、誰かが刃物を手にして呟くことになってしまうかもしれない。
欲にまみれた凡人の集いだけに、皆、同じ光景が頭に浮かんだ。
そこで、我々は予めルールを決めた。
『高額当選した場合、新城以外のパワースポットとその威力を比較する旅費として利用する。』
・億単位で当選⇒飛行機ファーストクラスで世界のパワースポットを訪れ豪遊する。
・千万単位で当選⇒新幹線グリーン車で日本のパワースポットを訪れ豪遊する。
・百万単位で当選⇒新幹線指定席で日本のパワースポットを訪れ豪遊する。
・十万単位で当選⇒自家用車乗りあわせで日本のパワースポットを慎ましやかに訪れる。
・万単位以下で当選⇒次回の原資とする。
ルールを決め終えたとき、誰かが言った。
「すごいじゃん。ファーストクラスだってよ。」
皆、億単位で当選を決めたかのような錯覚に捉われたのだった。
行動に移さねば。。。
こうして我々は、検証作業を始めることにした。
第1章 アタック1,425
我々が、この記念すべき企画の最初に選んだ場所は、
古来より霊験あらたかなことで知られる『煙厳山 鳳来寺』
今から1300年前に利修仙人なる仙人が開山。
仙人の霊力は大変強く、その噂は時の朝廷にも伝わり、時の天皇、文武天皇の病を治したといわれます。
そして、奈良の朝廷に向かう際に、利修仙人は鳳凰に乗って飛んでったとか。
※鳳来寺入口に立つ利修仙人像。どことなく「せんとくん」に似てますよね。それもその筈。作者は一緒。
そんな鳳来寺が大ブレークを果たしたのは戦国時代。
三河の領主松平広忠は、尾張の織田、駿河・遠江の今川などの強豪に挟まれ国の存続すら危うい状態。しかも、なかなか後継に恵まれなず、思いあまって妻の於大とともに子宝祈願のためこの鳳来寺に参篭します。
そして見事男児を授かります。
寅の年、寅の月、寅の日、寅の刻。
この男児が産まれた時、鳳来寺にあった十二神将のうち、鳳来寺の本尊薬師如来を守護し、寅神でもある真達羅大将の神像が忽然と姿を消し、この男児が薨ずるといつの間にやら戻っていた、と言われています。
誰あろう、その男児の名は、
『徳川家康』
奥さんが怖かったり、食い逃げ未遂を起こしたり、うんこ漏らしたり、できもので死にかけたり、と、色々とありましたが、最後にてんぷら食って死んだ人です。
すごく断片的な情報ばかりでわかりにくいですね。
関ヶ原の戦いで勝って、260年続く江戸幕府を開いた人です。
その男を産んだ寺、それが『鳳来寺』なのです。
そんな訳で、江戸時代は多くの寺領を有し大変に栄えたのですが、江戸幕府を倒した薩長明治政府に目の敵にされてしまい、廃仏毀釈の流れも相まって寺宝は散逸、寺は荒廃、挙句の果てに火災により焼失します。しかし、日本でも有数の広大な山林面積を所有していたことが幸いし、山林景気で復活。
今に至ります。
祈ったら天下人を産んだ。
これをパワースポットと言わずしてなんとする。
実際、恋愛・安産・子宝祈願の寺として有名です。
まずは、ここをターゲットに定め、この企画の無事を祈ろうではないか。
「折角行くのであれば、車で頂上に登っちゃうんじゃなくて、1,425段の石段を上がれば御利益が大きいんじゃない?」
誰かが不用意に発したこの一言が、後に我々をさいなむこととなります。
まずは今回の検証に使用する宝くじを購入する。
この時期、残念ながらジャンボが発売しておらず、やむなくスクラッチを購入。
当選しても最大200万円ですが、これならば、その場で結果が見えるので効率的。
ついでに、7月4日発表の自治宝くじも購入。こちらは当たれば1億円!
売り場の方と話をすると、
「こないだドリームジャンボでうちから1億出たけど、その人、鳳来寺山に登って祈願したと言ってたよ。」
『ななななななんだとぉぉぉぉ!』
我々のやろうとしたことを既に実践し、実際に御利益を得た者がいるだとぅ!
ならば、我々も御利益を得ることができる筈。
そう思ったのでしょう。
皆で出し合ったお金で宝くじを共同購入した後、「自分の分をついでに買っておこう。」と抜け駆けする者が現れ、気が付けば全員自分用も購入していました。
※『修羅の群れ』という言葉を図示するとこうなる、の図。
「どうしよう。高額当選したことがバレると変な寄付依頼が殺到したり、親戚が突然増えるというから。気をつけないかんね。」
鳳来寺へ向かう車中、我々は既に当選後の心配をしていた。
高額当選の。
鳳来寺山麓の無料駐車場に車を止め、歩いて山頂に向かう。
途中、我々の目に飛び込んできたのは弁財天だった。
「弁財天。インドの神様から来てるらしいが、財を司る神だと。」
財と司る神!
神は一瞬で我々のハートを鷲掴みにした。
これは、効果を試さないといけないでしょう。いけないでしょうよ。
修羅の群れは一斉に弁財天に群がり祈りを捧げる。
そして、いよいよスクラッチを削り、皆が息を潜め見守る中、初の結果が現れた。
この模様は動画で!
「鳳来寺の階段も登らずに霊験を得るなど、虫がよすぎるんじゃないか?」
この一言は妙に説得力があった。
そうだ。
栄光は苦難の末にある。
楽して儲かる話にろくなモノは無い。
我々は大いなる心得違いに気がついた。
さて、気を取り直した我々一行は、鳳来寺本堂を目指して進む。
そう。まだ、石段まですら行っていないのであった。
アスファルトで舗装され、少しだけ傾斜が付いた平坦な道を進んでいるだけなのに、既に眉間に皺が寄っている者がいた。
「あかん。私、もうエライは。」(エライ、は、「疲れた」「しんどい」の方言)
これから1,425段の石段を登る。
しかし、既に音をあげそうな者が。
『大丈夫なのか?、本当に登れるのか?』
という疑念が、真夏の入道雲のように湧き上がった。
途中、若山牧水の碑を見つける。
※なんとなく同じポーズを取ったら、想定外に似ていたの図。
この若山牧水。
鳳来寺の仏法僧の声を聞くために訪れ、鳳来寺紀行なるエッセイを書く。このエッセイがヒットし、鳳来寺の参詣客が激増したとか。
ちなみに、若山牧水は酒の飲みすぎで、死去した際、残暑の時期にも関らず遺体が腐敗しなかったといわれています。
生きながらアルコール漬けに。。。ちなみに、この鳳来寺にいるときも、妻に酒代をくれ、と、ねだっていたりします。
そんな小ネタで体力を図りつつ、ようよう参道入口に到着。
この石段。運動不足には結構きついが登ることは可能、という絶妙な設定。
我々はここで、『石段を苦労して登ること自体に御利益があるのでは無いか』と考えた。
そこで、0.1t近い体重を誇り、明らかに石段向きでないM田氏が、もっとも石段踏破の御利益を得るはずと考え、彼の帽子の中に宝くじをありがたく押し頂き登ることとした。
※タオルを頭に載せ、
※帽子をかぶる。
※こんな感じ。
鎌倉時代に源頼朝が整備したと言う石段。
石段を登りパワースポットの効果を得ることはできるのか?
いよいよ石段を登り鳳来寺本堂へ!
そこで我々は驚きの光景を見る。
次回『鳳来寺本堂から愛が見える』
お楽しみに。