長篠落武者日記

長篠の落武者となった城オタクによるブログです。

池田恒興の刀『笹の雪』 ~ 美談ではないとおもう・・・ ~

2014年06月03日 | 戦国逸話
久々に甲子夜話などを読んでおりました。
美談として載っている話が、どうにも「そうかねぇ・・・?」というものがありまして。
世の中の判断基準や価値観が変わったから、ということを実感させられる話です。

〇池田勝入斎恒興の刀「笹の雪」(巻69)
 (儒家の)林家の人に聞いた話。このごろ阿部大学の家で集まりがあった際、その家の昔話の話になり、池田勝入斎恒興の持っていた刀といわれる『笹の雪』を見たという。

※池田勝入斎恒興(参照:ウィキペディア)

 この刀がその家に伝わる来歴だが、そもそも笹の雪は、小牧・長久手の戦いで永井伝八郎直勝が池田勝入斎を討った際に分捕って持っていたものである。その永井伝八郎の娘に醜女(ひどい不細工)がいて、歳をとっても結婚できないでいた。阿部大学の先祖がこれを聞き、人を介して永井家のその娘に縁談を申し込んだ。その際、阿部家では引き出物として笹の雪を希望。永井家も承諾してめでたく縁談成立。約束どおり刀は阿部家のものとなった。そして、今まで伝わっているとのこと。
 縁談当時は、まだまだ武が盛んな時代であったようで、百年たった今でも臆病者でも勇気が湧いてくる話だ。愛人を馬と換えるよりは愉快な話で、武人の鑑のようだ、と。

 うーん・・・。
 甲子夜話の作者、松浦静山は刀を重視して不細工を承知で嫁にもらった話を「武夫の鑑たるべきこと也」と手放しで絶賛しています。
 しかしこの話って、フェミニズム研究者達が聞けば卒倒するような内容。現代の我々からすると、美談ではなくて人の弱みにつけこんでるような結構ひどい話のような気がします。むしろ娘を持つ親となった私なぞは、娘の幸せを願って家宝クラスの刀を手放した永井伝八郎の気持ちの方に共感してしまいます。

 似たような話が毛利元就の息子吉川元春にもあります。熊谷信直の娘がブサイクで引き取り手がないのをあえてもらい、武勇に優れた熊谷信直が感動して吉川元春に助力したので吉川は強くなった、というのがあります。
 ただ、実際信直の娘が本当にブサイクだったのか、と、いうのは疑問があるようで、元春はこの嫁を愛しており子どもも沢山いるし側室を持たなかったと、言われています。

 阿部家も子孫が続いていると言うことは、永井の娘と夫婦関係が正常に行われたことが推測されますが、ひょっとすると養子かもしれない。そこまではわからない。

 女性と物の価値を比較した場合、物の方が上になることがありうる時代。
 現代の感覚からはわかりませんが、そういう時代だったんでしょう。

 でも、『ドカベン』の岩鬼が「夏子はん」にベタ惚れだったように、「あばたもえくぼ」と言う諺があるように、実は阿部は永井の娘がどストライクだったのかもしれません。。。

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