長篠落武者日記

長篠の落武者となった城オタクによるブログです。

中世の罪と罰

2020年02月14日 | 日本史
個人的な事情で長らく休止しておりましたが、復活することとなりました。
また、くだらぬ駄文を書き連ねていく所存です。

さて、復活一発目は、網野善彦等『中世の罪と罰』(講談社学術文庫、2019年)の御紹介。



だいぶ歴史系の本読むのから離れてたので、いざ、再開、となってもなかなか勢いがつかない。
久々に本屋をぶらついていたら発見したのが、この本です。
笠松宏至氏が書く第1章のタイトルが「お前の母さん・・・」。
悪口罪が御成敗式目に明文化されており、軽い悪口で拘禁、重い悪口は流罪だったとか。ただ、この笠松氏、興味を覚えたのは、現代刑法との比較とかではなく、当時の訴訟資料からわかる中世の具体的な悪口の事例についてのようです。
そこで笠松氏が拘った表現が「母開」。
やたら出てくるこの表現は何ぞや、ということに疑問を抱いた笠松氏、様々な文書にあたり調べていきます。
結果的に、わかった内容は、万国共通の相当に下品な悪口、アメリカのラップなどで使用されている「motherf●●●er」だったことを、学術的に立証していくのです。

講談社学術文庫で、まさかのフレーズ解説。
立ち読みで思わず笑ってしまい、気づいたら買ってました。

中世の法は、撫民法で、民間自警団の方が過激な刑罰をしてしまうので止めるように作られた条文があったり、「死骸敵対」という謎のフレーズの意味が解き明かされたり、盗みがなんでこんなに罪が重いことになってるのか、とか、家を焼くのはなぜか、とか、正直、知ったところでどうしようもない知識がオンパレード。

しかし、鎌倉時代~室町時代の、現代とは違ったおっそろしい世界を垣間見ることができて、「馬庭の末に生首絶やすな」で有名な鬼畜「男衾三郎」の世界へ誘ってくれます。(※男衾三郎・・・『男衾三郎絵詞』の主人公。武辺一辺倒で家の近くを歩いている旅人を捕まえては首を切って馬小屋近くに備えて荒々しさを保とうとしたり、兄が京都へ出張途中に山賊に襲われて死ぬと、兄の妻子を奴隷のようにこき使ったり、と、かなり鬼畜な所業を行う。ちなみに絵詞は途中で失われており、仏様の力で兄の家族は救われるといった話ではなかったかと推測されながらも、結果的に鬼畜男衾一代記で終わってしまっている。)

中世は現代から見ると「北斗の拳」の世界そのものといっても良さそうな感じ。
中世を法令から読み解くこの本。文章は学術的ですが、内容は相当にくだけてるので、お勧めです。


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