
Photo by Ume氏
一昨日の2頭の残留牛とのやり取りをここで再現するのは気が重い。と、呟けば分かると思うが、失敗した。あそこまで激しい抵抗を見せるとは、あれは家畜ではなく正しく野生動物、猛獣、言葉がない。
いつものように塩場で警笛を鳴らしたが、遠く御所平に牛の姿はなかった。それでもそのまま囲いのある現場に向かい、途中で、軽トラに同乗して来た応援の職員4名を森の中に降ろし、待機してもらうことにした。
一人だけでそのまま御所平に向かい、その先で2頭の牛を発見、そのまま捕獲用の檻の近くまで軽トラを乗り付け、誘導を始めた。
牛たちはすぐに反応した。一人で檻の入り口を1本の鉄パイプとアルミの梯子で塞ぐには、いくら素早くやっても時間がいる。そのため、多めの配合飼料を餌箱と、いつもより奥の草の上に撒き、少しでも時間を稼げるように配慮した。餌箱のは老牛27番が、草の上のは25番の若い牛に食べさせるためだが、一瞬25番が警戒を見せ、入るのを躊躇った。しかし、この牛も後に続いた。
まず鉄パイプを左から来ているパイプと交差するよう、50センチばかりの高さに差し込み、さらに上段にアルミの梯子をかけた。そして6本の番線でそれらを固定した。25番がこっちの行動を見て、一瞬ぎょっとしたふうを見せたが、またすぐ関心は餌に戻った。
もう捕獲の成功を確信した。50㍍ばかり離れた茂みに待機していた4人に「入ったぞー」と大きな声で合図した。
ところがである、下方から課長の頭が見えた途端に、老牛の態度が一変した。檻から飛び出さんばかりに激しく動き出した。25番も同じように暴れ始めた。牛の頭が2本のパイプの中に入り、上下に揺さぶられると檻が脆くも軋み出した。今にも檻を破壊し、飛び出しかねない2頭の牛の激しい動きに、縄を打つ暇を与えてくれない。そうこうするうちに、ついに25番がわずかばかりずれたパイプの間をすり抜け、逃げた。
そうなると老牛27番に集中するしかなく、課長が危険を犯して檻の中に入った。そして闘牛さながらの息詰まる闘いの末、ロープが角に掛かった。そのときすでにあの特徴的な曲がった角は折れ、額にまで血が流れ、もの凄い形相になっていた。
その後何とか2本のロープを掛け、27番だけは近くのモミの大木に繋いだ。しかしそこからトラックが待機する1㌔以上の距離を、時に死に物狂いで暴れる牛を連れていくなど到底不可能だと知った。そこでトラックを向けることができるか、そしてそれが可能ならそれを先導するため現場から離れた。
案の定、トラックの運転手に無理だと言われ、再び現場に戻ってみると、もうそこには牛も人もいなかった。どうやら27番まで逃がしてしまったようだった。(つづく)
本日はこの辺で。O澤さん、いつでも。M.gzwさん、通信多謝。また出掛けてください。