入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’22年「春」(66)

2022年05月31日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 時々激しい雨の音がする。それでも恐らく、この雨はやがて止むだろう。それが鳥たちには分かるのか、近くの林のあちらこちらいろいろな鳴き声が聞こえてくる。
 キャンプ場のコナシの蕾が大分赤みを帯びてきた。ここらの木は、すでに開花の始まった北門近くのコナシよりかも遅れるのだが、それでも赤い蕾はここ2,3日で真っ白い花に変わるだろう。できれば、牧場のコナシの木には競うように一斉に花を咲かせてほしいのだが、そういう年はこれまでの記憶では少ないように思う。多くを期待し過ぎずに、ともかく待ってやろう。
 クリンソウの蕾も目に付くようになったし、昨日の芝平の谷ではレンゲツツジの花が咲いていた。遠からず、そういう花の咲く風景をここでも楽しめるようになるだろう。

 4件ばかりの用事を抱えて里へ下り、それらをすべて手抜かりなく済ませるには思いの外神経を消耗した。特に街中を車で走るのは山の中と違って、信号やノロノロと前を走る車などについイラつき、この気の短い、せっかちな性格は年を取っても直らないことを改めて痛感した。
 悪癖は車に乗る時ばかりでなく、牧場における日常にも現れる。よく物を落とすし、忘れるし、間違える。その度に自分を叱り、イラつく。
 以前に、PCに独り言を呟く際、あまり間違いが増えるようならそれがボケの兆候ではないかと言ったことがある。とすれば、すでにボケが始まっている虞がある。昨日も「令和」を「冷和」と誤記して、それを指摘されるまで気付かなかった。
 ただし、ここに現れ、現れるであろうそういう様子をこれから先もあまり隠さずに晒していこうと思う。「一顧すれば城を傾け、再顧すれば国を傾く」ような美女であっても、やがては老いを隠せなくなる。そこへいけば牛の尻を追うことをもって生業とする身、その罪は軽かろう。
 
 やはり雨音が止んだ。それを喜んでいるのか遠くから鳥の声がする。それも歌い手の声が今までと変わって、あれはホトトギスか。
 
 ハップスブルグのKさん、お礼の伝えようもなく、止む無くここでお伝えするしかありません。有難うございました。今度は是非来牧を事前に知らせください。お預かりした本は大切に読ませていただきます。
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     ’22年「春」(65)

2022年05月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょうは入笠山の開山祭が行われる日だ。今年もcovid-19の感染防止のため大袈裟なことは行わず、山の安全を祈る神事だけが行われるという。
 ついでに言えば牧開きは牛が上がってきて行われるが、すでに昨日第2牧区の区画変更を完了させたので、個人的には僭越ながらそれを祝うことにした。きょうの写真は、そのための食料と、不足している部材を入手するため、高遠へ下る際に目にしたクリンソウで、文字通り、ささやかな祝いに花を添えてくれた。

 この牧場内にもクリンソウは咲く。まだ少し早いがその大群落もある。このころになれば、コナシの花同様、例年楽しみにしているのだが、近年は鹿に食い荒らされてしまうことが多い。それも茎を齧って、口に合わないのか無残に花がそこら中に捨てられている。ならば食べなければいいと思うが、取り敢えず口にしてみたいのだろうか。
 他所ではクリンソウのこんな姿を目にしたことがないから、ここの鹿は特殊だと思って、その話を鹿狂いのオトトイタ氏にすると、「口直しに食べているのだろう」と言う。さて、どうだろうか。



 ご質問にお答えします。回収した有刺鉄線の上に無造作に置いてあるのが、牧柵を打ち込む作業に欠かせない「ランマー」です。この名前は最近、電牧関連の機器を扱う会社の営業案内で知ったのですが、関係者の間で一般にそう呼ばれているのかまでは知りません。「バズーカー」などと呼ぶ人もいます。
 これは大ハンマー以上の威力があります。このラッパのような筒の中に支柱を入れて、器具の重さを利用して両の腕に渾身の力を込めて打ち込むのです。前任者からは一言の説明もないまま小屋の隅に打ち捨てられていて、何に使うかも知らなかったのですが、これを使って、もう何百本の支柱を打ち込んだことか。軽トラ同様、頼りにしている道具です。

 昨日、牧柵の手直しに渓へ下っていった。清流の見える所まで下りていくと、すでにコナシの開花が始まっていた。大きな空の下の草原もいいが、野生の動物しか訪れることのないあんな渓の中で、川音を聞くともなく聞きつつ、しばらく我を忘れて過ごせたのが良かった。

 きょうは3組、20人くらいの人がキャンプをするためにここを訪れる。
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 本日はこの辺で。明日は沈黙します。



 
 

 
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     ’22年「春」(64)

2022年05月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

 Photo by Ume氏

 5時半、気温9度。雨がかなり激しく降っている。恐らくきょうの午前中はこんな天気が続き、午後になって好天が戻ってくるだろう。例年と比べて雨が格別少ないとは思わないが、この1か月と少々の間に、そのせいで管理棟に閉じ込められたという記憶はない。
 
 昨日はきょうとは逆に、午後には雨が予想されたから、その前に放牧地の斜面に残してきた軽トラを何とかしたかった。早過ぎたら草はまだ濡れたままだし、そうかといって雨がいつ降ってくるか分からないような空模様だったからあまりゆっくり構えてもいられれず、判断に迷いながら外へ出た。
 取り敢えず一度動かしてみたが案の定草がまだ乾いておらず、また地面も柔らかで駄目だった。仕方なく、まだ残っていた有刺鉄線の回収を1時間ほどしてから、あまり良くなったとは思えない状況の中で再び脱出を試みることにした。
 やはり、わずかに動いただけでタイヤが空転してしまう。斜面に正対していては負荷が大きかろうと、後進して斜面に対し横転ぎりぎりまで車を横にして、エンジンの回転を一度上げてから「それ行けっ」とばかりに車を走らせた。加速が付いて「行けるっ」となって、車を斜面に向けた途端に後輪が滑り出し、止まってしまった。
 少し焦ってきた。もし雨でも降り出せばその雨は翌日まで続くと予想していたから、そうなるとしばらく車を使うことができなくなる。愛車への信頼はあったし、こうした場所や状況でのこれまでの運転経験にも恃むものはあったが、初めて車を乗り入れた草地とあって悪い方へ予感が傾きかけた。
 3回目だった、それで駄目ならウインチを持った専門業者を呼ぶしかないと決め、さらに大きめの弧を描くように車を走らせた。またしても後輪が滑り出し車は止まりかけた。駄目かな、と思ったら前輪がまだ頑張ってくれよろよろと前進を続け、そのままかろうじて作業道へ出ることができた。

 一昨日の突然の雹で、県下のリンゴやブドウに相当の被害が出たようだ。当牧場でも、多分その影響だと思われることがもう一つあった。例の大型囲い罠のことで、ゲートが落ちていることに昨日の午後第2牧区の作業を終えてここへ帰ってくる時に気付いた。
 恐らく、あの大粒の雹が仕掛けの釣り糸にも落下して、いわゆるフェザートリガー、羽が触れても作動するほど敏感な状態の引き金、にしておいた罠が作動してしまったのだろう。

 雨の降り方は激しくなるばかり、これで牧草の生育は進む。

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 本日はこの辺で。

 
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     ’22年「春」(63)

2022年05月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

    Photo by Ume氏

 昨日、午後の3時を過ぎたころだったと思う、地響きのするような雷鳴とともに大粒の雹が降ってきて、斜面に残しておいた軽トラへ駆けつけた時にはすでに草地は濡れてしまい、滑って愛車では帰ってこられなかった。天気の崩れは予想していたが、あんなものが降って来るとは、山の天候の気紛れには呆れた。
 牧柵をようやく渓の流れが見える場所まで3線張ることができたのに、そこで作業を中断することは、勝ちが見えていた勝負を、急に襲ってきた腹痛に耐えられず途中で棄権するようなもの、何とも恨めしかった。細かい作業は残るが、きょうで大方のことは終わらせる。
 これが済んでようやく、牛を迎えるために第1牧区、第2牧区、第4牧区の点検と補修、電牧の立ち上げなどにかかることができるが、しかし、入牧までにはとても間に合いそうもない。牛たちはしばらく囲い罠の中で馴化させるから、その間にも作業は続けられる。遊んでいたわけではない、今更慌てても仕方がないと思っている。
 そういえば、美ヶ原はすでに昨日に入牧が行われたようで、その様子をテレビでチラッとだが見た。あそこはいつもここよりか早い入牧で、下牧も遅い。300頭だと、差をつけられたものだが、ここへ来た牛たちはあの牧場に引けを取ることなく、大切に、存分な扱いをしてやる。

 3,4日前になるだろうか、テイ沢に架ける丸太橋の材料が沢の登り口まで搬入されたようだったので、見に行ってきた。ところが、それを見て愕然とした。丸太はどれも太過ぎて、とても一人の人間の運べるようなシロモノではなかった。
 どうしたものかと案じていたら昨日、材木を斡旋してくれた森林管理署の森林官に会え、一緒に現場まで行き、そこで全とっかえをすることになった。折角運んでもらった材木で、それをまた積み直して戻る、そして新たな丸太を運ぶのでは二重の手間と時間の要る作業で実に心苦しかったが、さりとてあれではどうすることもできない。気を遣って、わざわざ太い丸太を選んでくれたというのに、申し訳ない思いだ。
 
 本当に後からあとからいろいろあって、一喜一憂の繰り返しばかり続く。しかし嘆いているばかりではない、結構面白がっている。コナシの蕾も表皮が大分赤くなってきて、今に真白い花が咲く。いい季節、美しい自然、山の暮らし・・・。

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 本日はこの辺で。



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     ’22年「春」(62)

2022年05月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 郭公の声がする。午前6時、気温8度、朝日が小入笠の上に顔を出し始めた。きょうもこの時季にふさわしい気持ちの良い朝を迎えた。ただし、午後になってこの天気は崩れるだろう。



 苦戦を続けながらも昨日で、グラスファイバー用の支柱に加え、鉄の支柱を約30本以上を打ち終え、さらに有刺鉄線も150㍍くらいを回収することができた。この牧柵の有刺鉄線は有難いことに断線している箇所がなく、それが支柱から外れて地表に落ちているのは拾い上げるようにして巻いていく。上手く行けば、3段張ることになる有刺鉄線の1段もしくは2段までをきょう中に終えることができるかも知れない。何とか目途が立った。
 
 それらを回収していくと、見覚えのある結線に使った緑のビニールで保護された針金がところどころにくっついていて、それらが16年前、この仕事を始めたころの名残りであることを思い出させた。今でも忘れないが、この種の針金は牧場の外周の牧柵を28日かけて補修した時の証と言ってもいいもので、それを消してしまうのには些か感じるものがあった。もうここで同じ作業をすることは二度とない。部分ぶぶんではあっても、牧場の一部を、なくしてしまおうとしているのだから。
 
 そういえば、この牧柵の近くに仕掛けた罠でクマを捕獲したことがあった。一度目は3頭だったと聞いたが確認はしていない。それでも、逃げようとしてか罠の近くの3本の落葉松によじ登った跡がはっきりと残っていた。二度目は1頭で、これはしっかりと確認し、写真も撮ってある。「ダケ」と仮称したこのダケカンバの林の中では、鹿の捕獲をよくやったものだ。
 
 牧場にとって、第2牧区の区画変更による利益は当然ある。そうでなければこんな苦労はしない。というのも、この牧区の半分は2個所を源頭とする初の沢の渓の中で、放牧には全く適さない。管理にも非情に手間をかけ、苦労してきた。放牧頭数が200頭を越えた時代ならいざ知らず、もうそんな時代は来ないだろう。
 こんな場所があるために第2牧区へ牛を出すのを控えてきたのは勿体ない話で、もうかなり以前からそのことには気付いていた。何とかしたかった。しかしその仕事を、果たして自分が買って出るべきだったかまでは分からない。

 入笠湿原の近くにある早稲田中学校・高等学校の「鈴蘭寮」が閉寮されるということを知った。丁寧な挨拶が学校からあった。いろいろな事情を抱えて、ここも変わっていく。

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 本日はこの辺で。

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