入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「秋」(45)

2020年10月14日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日の天気とほぼ変わらず、曇天。気温も10度と特に寒さを感ずるほどではない。最低雲高が昨日より高く権兵衛山は霧に巻かれながらも見えている。先程からどこからかいい声で鳴く鳥の声がしている。声の主は姿を見せず分からないが、寒さを避けてやって来た渡り鳥だろうか。
 
 囲いの中の牛たちがいなくなったので、その代わりに鹿を入れようと昨日その準備をした。この時季ともなれば、昼と言わず夜と言わず鹿の活動が活発になり、雄が雌を呼ぶのだろう、鋭い独特の鳴き声が森の方から聞こえてくる。夕暮れ時、すでに立派に成長した角を持った雄鹿奴が、幾頭もの雌鹿を従えている群れを目にする。目下そのための用意が始まっているのだろうが、春になって捕獲した雌鹿の腹の中には大概小鹿が入っていて、鹿の世界の旺盛な繁殖力をまざまざと見せつけられる。
 くくり罠を仕掛ければ、ここならそこそこは獲れる。何年か前までは、有害動物の駆除を名目にそうやってたくさんの鹿を捕獲し、殺した。鹿による被害は牧場でも深刻だからで、有刺鉄線や電牧のアルミ線などはそれこそ糸でも切るように切ってしまい、それを修理し、保守することに割かなければならない労力は甚大である。
 いろいろな事情が重なって、今はもうくくり罠による猟を止めてしまった。伊那市の場合は1頭当り7000円の報償費が出るから、猟師として生活のためにするのなら分かるけれども、一人で使える20台(法による縛り)ばかりのくくり罠で、どれほどの鹿を駆除できるのか。毎日あれだけの数の鹿を見ていれば無力、徒労感を感ずるばかりだろう。
 ならば囲い罠は、ということになるが、あれは牧場に付属する施設で、牛のいないときには稼働させることが期待されている、まあ、業務の一環とまでは言わずも、それに近いだろう。
 ある猟師からは年間で300とか400頭の鹿を捕ったという信じられないような話を聞いたが、報償費が目的だけでそこまでできるだろうか。魚釣りもそうだろうが、狩猟という行為に対する楽しみ、面白さがその人の行動の根底になければそこまでは続けられないと思う。当牧場の管理人には、そうした傾向は皆無である。
 クマに襲われたという事故が続いている。野生動物そのもの、それらの棲む世界にも大きな変化が起きているような気がする。そのうちクマなどは今以上に人を怖れなくなるかも知れない。猿の王国もそこらに出現している。いつか鹿を含めて、野生動物は自然が許容できる限界を超えて、ようやく、その個体数を減らしていくのかも知れない。今がその瀬戸際であってくれれば良いのだが。夢物語。

 toirinjun殿、あの歌をしっかりと歌えるようになって、越年にどうぞ。本日はこの辺で。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする