入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’23年「春」(40)

2023年04月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 山桜の開花がここらでも始まるというのに今朝の寒さ、午前5時半の外の温度は零度、室内5度、薄霜が降りていた。
 それでも第2検査場の「朝日に匂ふ山桜花」を見にいったら、まさにそれに相応しい情景に出会えたのは良かった。ただし、その清(すが)しい姿を「匂う」、つまり薄桃色の花が朝の光を浴びて少しづつ染まっていく様子を写すことなど妖精を写すくらい難しく、諦めた。

 連休初日、さすがに入笠の登山口や湿原には多くの人を見掛けたが、そういう人たちが無名の峠を超えてここまで足を伸ばすことはなかったようだ。魚釣りが1名と、何が目的か分からない猟師風の男たちが乗った車が2台来ただけだった。
 今は猟期ではないが、それでも山を見回っているうちに、ここでの朝の7時から始めた鹿の殺処分の銃声を耳にして来たのかも知れなかった。

 今回捕獲した鹿は18頭、一度にこれだけの頭数なら、罠師としては及第点を貰らえるかも知れないが、有害動物駆除という観点、目的からすれば、果たしてどれほどの意味があったのか分からない。
 何しろ、鹿の頭数が減ったと思っていたが、先日の撮影の下見の時にはどう見ても150頭近い群れが、ほぼ切れ目もなく草原を駆け抜けて逃げていくのを目撃している。群の長さは、もちろん一列であるわけがないが、200㍍はあったと思う。
 牧場や付近に生息する鹿が減ったと思ったのは、いつもの早とちりだったと認めるしかなく、あの数が記憶にあるうちは、18頭の捕獲などあまり意味がなかったのではと思えてくる。

 用事があって里へ下り、再びここに戻ってきた。少し雲行きが怪しくなってきたが、まだ雨は降っていない。これをもって、連休初日の天気予報が当ったということなのか、それとも、日中はまずまずの好天だったから出掛けるのを控えた人たちは立腹し、行楽客を待っていた観光業者も同じ気持ちになっただろう。
 海外からの旅行者が落とす金額が5兆円、国内旅行者はその4倍以上、約22兆円とか。

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 本日はこの辺で。明日は沈黙します。

 
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      ’23年「春」(39)

2023年04月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 真っ青な空、気温も上がってきた。この天気のせいもあってか、罠の中には20頭くらいの鹿が入っていた。23日に逃げられた鹿もその中にいるのかどうか、ともかくこれで前回に来てもらった鉄砲撃ちたちには何とか面目を施すことができるだろう。
 殺処分は土曜日、29日になる。鹿たちの身になれば、緊張と不安の落ち着かない日々となる。(4月27日記)

 標高1700㍍のキャンプ場、連休はまだまだ余裕がある、空いている。covid-19も大分下火になって、もう少し予約が増えるかと思っていたがこの分ではそうでもなさそうだ。
 ただ、27日、きょう28日は、昨年から決まっていた撮影の方を優先せざるを得なかった。こうした仕事も受け入れていかなければ、牧場ばかりかここの自然を守り、維持していくことは難しい。きょうは早朝6時からすでにその準備が始まっている。
 もっとも連休中は山小屋とキャンプ場の営業を第一に考えて、訪れる人を、懐かしい顔を待っていたい。

 そんな中、昨日で「追い上げ坂」に新設していた牧柵がようやく完成した。これも昨秋から始めた仕事で、夜は一人でその完工をささやかに祝った。
 追い上げ坂はこれまでは、第1牧区へ牛を移動させるために利用する、単なる通路の役目でしかなかったのだが、今年からは放牧地としても使えるようにした。いきなりでは無理な若い牛や、出産を下牧後に控えた身重の牛たちでも、牧場の暮らしに慣れてくれば、あの急な斜面を登っていくだろうと期待している。
 
 牛の入牧頭数が減少し、今までのように牧場全域を使用する必要がなくなってしまった。となれば、限られた領域を効率よく使用した方が経費的にも助かるし、管理の上でもやりやすくなる。
 昨年も、第2牧区の放牧面積を縮小し、地形の複雑な渓や林など、放牧に適さない場所を切り離した。それによって、今まで利用を控えていたこの牧区へも牛を出すことができるようになって大分役に立った。
 畜産業は輸入飼料の値上げなどで大分苦戦していると聞いている。今年はそれが入牧頭数にどう影響するか、まだ山の上までは聞えてこない。

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     ’23年「春」(38)

2023年04月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 夜中の激しかった雨音が止んだ。雨雲の中に、時折太陽の位置が分かる。しかしきょうは天候の回復を見込むことは無理だろう。細かい雨は依然止もうとしない。



 追い上げ坂の新しい牧柵設置がこの3日ばかりの間に予想以上に進んだ。これで、有刺鉄線がもう100㍍もあればきょうにも完成するはずだが、それを回収する先が思い当たらない。
 支柱も、有刺鉄線も昨秋以来、放牧に必要でなくなった牧区の既存の物を使い回しでやっている。その殆どが、ここで働くようになった以前からあったものだから、恐らく20年以上は経っているだろう。
 面白いことに、その当時の有刺鉄線の方が耐用年数があって、今の新しいのはすぐに錆びるし、強度も落ちる。
 
 昨日は40度位の斜面でバラ線(有刺鉄線)を張っていたら、激しく雪が降ってきた。そんな状況は、後期高齢者のやる仕事に相応しいかと言えば否とだろう。だが、本人にはあまりそういう認識がない。
 実際の体力は、オツムと同じく、あるいはそれ以上に劣化が進んでいるはずで、それでも、あまり身を庇うというわけでもなく、若いころとほぼ同じような気でやっている、やってしまう。身体に格別な問題がなければ、野良仕事をする人たちなら多分誰でも変わらないと思う。
 それでも、肉体上の年齢調整は無意識の裡に行われているような気がする。その証拠に、さんざん岩登りに励んだ身が、いつの間にか高所がすっかり苦手になってしまった。また、どこか他所の山に出掛けたいと思うこともない。

 古い鉄の支柱には細い穴が開いている。その穴に針金を通してバラ線と支柱を結び付けるのだが、風の強い日は、その穴を吹き抜ける風がボーボーとオーボエのような音を鳴らす。その心細くなるような不気味な音を、昨日は懐かしく聞いた。
 支柱やバラ線には、見覚えのあるステンの16番という針金が付いていたり、切れたバラ線を結線した跡もある。ステンは粘性がないため鹿に簡単に伐られることが分かり、今は使っていないからかなり以前の物だ。
 風の中、単身で牧柵の補修に専念しながらぼんやりと先のことを考えていたころから、当時では思いもしなかったほど長い年月が過ぎていった。

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     ’23年「春」(37)

2023年04月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 オオダオ(芝平峠)を過ぎて幾つかの曲がり道を過ぎた谷の中に、毎年指標木にしている山桜の木がある。今まさにそれが満開の時を迎えていて、芽吹きの遅い落葉松の薄暗い谷の中で、一際目立って見えていた。
 法華道を語るには欠かせない故北原のお師匠が、若いころに炭焼きをしたと聞かされた場所もこの谷の中にあったはずだ。もっともご本人は「オレは炭焼きは上手くなかった」と語っていた。入笠をこよなく愛した師の思い出は、どんなことも懐かしい。

 4月22日 大型の囲い罠の点検をする。意外なことに、かなりの頭数の鹿が出入りして誘引用の塩を漁っていたことが分かる。罠を仕掛ける。
 4月23日 朝、上に来て見ると7頭の鹿が囲い罠の中いるのを確認。いつもの鉄砲撃ちらに連絡をする。1時間半ばかりして4名が上がってきて3名が罠の中に入る。しばらくするも一向に銃声がしない。
 やがて3名が手ぶらで引き上げてくる。なんと鹿は仕掛けに接触せず、ゲートが落ちていなかったのだと。人の気配を察知して、当然その前に鹿たちは自分らが入り込んだゲートより遁走を決める。
 捕獲したとばかり思い、うっかりゲートを確認しなかった。気付いていれば打つ手はあった。ゲートが何かに引っ掛かって落ちず、鹿を逃がしたことならある。しかし、塩で誘引された鹿が仕掛けにも触れずひとしきら罠の中で遊んで、そしてまた森に帰っていった例は17年間で初めてのことだ。

 きょうから上に泊まることにした。(4月24日記)

 眩い朝の光が窓から射し込んでくる。午前6時半、牧の朝だ。昨夜は夜中に一度も目が覚めずよく眠れた。外の気温は零下まで落ちたようだが、この時季こういうことは珍しいことではない。そのため、外も内も水道の水は流しっぱなしにしてある。
 外へ出てみた。曇り空だと思っていたらよく晴れていて、雲ひとつない早春の透明感を感じさせる朝だ。忙しく鳴く鳥の声もすれば、まだ未熟なウグイスの声もして、3,4種類の鳥の声がよく聞こえてくる。
 これからは野生に還って、お前たちと一緒に自然の中で暮らす。

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     ’23年「春」(36)

2023年04月22日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 

 今の時季は目が覚めれば風呂に入ったり、弁当の用意をしたらすぐに家を出ることにしている。今朝はそれが6時だった。
 芽吹きの始まったばかりの芝平の谷は爽快で、とりわけ落葉松の萌え出たばかりの緑の色は真夏の黒に近い退屈な色とは違って、まるで滴り落ちてきそうなほどの鮮やかさで特に目を惹く。そのうち上で暮らすようになれば、この谷を上ってくることも少なくなるから、今のうちだけでもという気持ちでそれらを眺める。
 
 上に着いて温度計を見たら外の気温はたった3度、室内は6度と、この気紛れな天候に呆れるやら驚くやら。それでもこんなうすら寒さの中、今朝は北門を過ぎた左手の斜面で頭数20頭ばかりの鹿の群れを目にした。思わず妙な安堵感と、いまいましさとが殆ど同時に湧いてきて、この野生動物に対する複雑な気持ちを味わった。

 一日も早く牧の仕事を本格化させたいが、恐らく連休が終わるまでは無理だと思っている。今年は追い上げ坂の牧柵を完成させることが第1の課題で、冬の間に柔らかくなった地面に昨秋に打ち込んでおいた支柱の打ち増しをしたいところだが、まだそこまで手が回りそうもない。
 それほど予約は入っていないものの、それでもやはり連休前はキャンプ場や山小屋の管理を優先せねばならず、取り敢えず昨日ときょうはキャンプ場に散乱していたコナシの枯れ枝や、今年はいつもの年よりも少ない鹿の落とし物を片付けた。
 また露天風呂には水を張り、いつでも対応できるようにした。長年苦しめられた水漏れは、内面を合成樹脂で加工したお蔭で完全に解決し、後は蓋ができるのを待つだけだ。

 露天風呂だけでなく、いろいろなことについても友人知人のお蔭でここまで来れた。中にはお客さんだった人たちもいる。そういう人々も含め、大いに感謝している。

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