入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    ’17年「早春」 (27)

2017年03月31日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                                         Photo by Ume氏(再録)

 今月27日に起きた雪崩事故について、もう少しだけ。
 
 30日の毎日新聞は、この事故について那須町の高久町長が述べた「あまりに無謀」という言葉を待っていましたとばかりに報じ、「雪崩が発生しやすいため専門家でも入らない云々」と引用を続けている。町長の立場としてみれば、このような事故は大迷惑だったろう。この事故により町や、スキー場、他の観光事業に悪い影響が出たり、評判に傷が付きはしないかと心配した政治的発言だったようにも受け取れる。ただ、町長の言う「専門家」とはどういう人を言ってるのか分からない。また「素人から見ても、そこでのラッセルはあまりにも無謀」などと、「素人」の公人が言ってもよいものか。まだ充分な調査が終わっていない。「バックカントリースキー」などと呼んで、スキー場外の雪崩の巣のような場所を滑るスキーに人気が出てきている昨今、それを後押しするような危険な市町村があることも知らないのだろう。
 きょうの新聞では、野口某が「今回の事故は、責任者が現場を見ることもなく急きょ予定を変更するなど、責任者に基礎知識が欠けていた。問題の本質は判断ミス」と断じる記事を載せていた。彼のことは「世界的な登山家」だと説明されていたが、どういう意味だか分からない。まさか、世間で名前は知られているが、一流の登山家ではないという意味ではないだろう。それにしても「基礎知識に欠けていた」とまで言われた講師の先生たちは、さぞかし無念やるかたなかったと思う。彼よりも基礎知識だけでなく、経験も技量も優れた講師が恐らく幾人もいたはずだから。また、急きょ予定を変えたことが、果たして基礎知識の欠如によるものだったのか疑問でもある。
 現場の責任者とされる猪瀬修一教諭は「絶対安全だと判断」したという。こういう発言を実際に事故が起きてしまった後で耳にするのは、聞き苦しい。「絶対」などと言ってみても、その時の状況判断について味方してくれるわけでも、言い訳になるわけでもない。将来のある若い生命が多数失われたのだから、その重い事実を断腸の思いして背負ってほしい。

 言葉の揚げ足取りのようなことになったかも知れないが、もちろん自然ばかりでなく、われわれの文明とて「絶対安全」などありえない。3兆円もの財投が決まったリニア新幹線にしてまたしかり。飛行機も落ちる。原子力発電所も事故を回避できなかった。人間のやることは、過ちを犯す。政治もそうだ。検証し、学ぶことは大切だろうが、それで「絶対安全」になるわけではない。登山も同じだが、だからと言って、「冬山登山厳禁」では、この事故が提示した問題への回答として、正解とは言えないだろう。 
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    ’17年「早春」 (26)

2017年03月30日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など




 このごろ、早朝3時半といえば目が覚める。そして寝付かれない。こういう時に、布団の中でむにゃむにゃ考えると、どうも悲観的になりロクなことはないから、睡い思いをしても起きるようにしている。その日格別に予定もなければ、ビールを飲みなおすこともある。ただし、いつもというわけではない。そしてこの自由気儘を有難く思いながら、新しい日を始める。

 愛犬HALは賢いが、気が弱い、ということはすでに紹介済みだった。正当な川上犬としては、時に嘆かわしい。上の写真のように、相手をするのが面倒だと飼い主を無視して寝たふりをする。しかし食べ物には弱いから、紙袋をカサコソと音を立てるとすぐに反応する。それが2枚目の写真である。
 このHALは、これまで10年間、雪の入笠には必ずお供してきた。結構荒れた天気でも、深い雪でも感心に付いてきたし、一昨年の冬行方を絶ってしまったキクのような勝手な行動はしない。
 ところがきょう朝方、庭でHALを自由にしてやったら、飼い主の目を盗んで姿をくらましてしまった。その後、隣家の方へ行こうとしていたところを見つけ、大声で呼んだが無視をして逃げていってしまった。こういう態度はHALには珍しい、というよりか初めてのことだ。1時間ばかり近所をウロツキ帰ってきたので、即小屋に放り込み、〝反省犬″にしてしまった。
 犬小屋に閉じ込めたまま、朝飯もやらないで捨て置く。これが反省犬。虐待だと目をとがらせた人がいたが、そうは思わない。初代の川上犬、小太郎もキクも、このお仕置きを経験している。
 しばらくして小屋から出してやると、HALは悪びれたふうも見せずに近寄ってきた。反省ができたのか怪しい。

 東京から友人の庭師E君が来て、その助手をしなければならず、忙しい日がこれで3日続いた。ようやく終わった。もう当分、こういう仕事はしないし、できない。 
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    ’17年「早春」 (25)

2017年03月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 新聞は、昨日27日の雪崩による高校生の死亡事故を大きく扱っている。CNNも「スキー講習」と言っていたが、この事故のことを報じていた。前日の大雪注意報を受けて茶臼岳への登山は中止にしたらしいが、その代わりに行った別の講習中に雪崩が襲うという、思いがけない大事故だったようだ。
「判断は適切だったのか、雪崩はなぜ起きたのか―――。県教育委員会は今後、詳しい状況などを確認する方針で、原因究明に向けた確認作業が求められる」と、新聞は相変わらず。

 第一報を聞いた時まず思ったのは、雪崩の予測はつくづく難しいということだった。皮肉にも、雪山講習会を狙うようにして起きた。登山に詳しく、経験のある講師が何人もいただろうし、何かあれば責任を厳しく追及される今のご時世、あくまでも慎重であったことは想像に難くない。安全第一で下された判断であったろう。しかし、こういう悲劇を招いてしまった。
 新聞の3面は「注意報さなか訓練」と、大きな見出し。こういう書きぶりで、何かあるとすぐに報道機関は人為的な誤りに事故の原因を求めたがる。例えば、しばらく降雪がなく昼夜の寒暖の差が大きかったため夜間には雪面が氷化していて、その上に新雪がかなり降り積り、その雪の質も気温の変化の影響を受けて重量が嵩み、表層雪崩に繋がった、などと仮に言ってみたとしても、今さらである。スキー場で安心していた、判断が甘かったと言っても、これまた今さらでしかない。
 もしこの講師や生徒が予定通り茶臼岳登山を強行していたら、今度は別の事故に巻き込まれた可能性はあるが、この雪崩事故からは、免れることができただろう。しかしそうしなかった判断の方が正しかったと思うし、スキー場を利用したラッセルの訓練を選択したことを責めることは難しい。このスキー場を利用した栃木県の体育連盟による登山講習会は、30年以上も行われていて、その間事故はなかったという。
 先日だって、山岳救助に携わる飛行歴の長い操縦士によるヘリコプター事故が起きたばかりだ。冬の山は、こんなふうにいろいろな負の可能性ばかりが溢れている。防げないことはある。
 スポーツ庁は原則として高校生の冬山登山をしないよう指導しているという。確かに、冬山登山をもっと厳しく禁じていたなら、こんな事故は起こらなかっただろう。しかし、そういうやりかたで問題決着・解決とするなら、責任逃れで、安易過ぎると思う。東京はいつ地震が起きるか分からないから行くな、と言っても行く人は行くし、その危険な首都に1千万以上の人が暮らし、オリンピックも開かれる。「安全、安心」と声高に言ってみても、どうにもならないことはいくらでもある。
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    ’17年「早春」 (24)

2017年03月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 もう外は雨が降ろうが、雪が降ろうが、この〝勝手な独白″は一足早い新緑の態勢を変えない。ここに掲載の写真は、Ume氏の作品のように完成された水準の高いものもあれば、目を閉じて撮ったのかというような独白者の駄作もある。しかし、季節を戻すことはもうしない。それら玉も石も混じる写真を参考に、入笠牧場の春をあれこれと想像していただければと思う。
 
 今日の写真は、5月になったばかりの第2検査場の近くにある山桜が開花した様子で、実は2年前の写真だ。山中にあって、小さな可憐な花を咲かせる野生の桜の木は、みな山桜だと思い込み、そう呼んできた。桜にもいくつか種類のあるくらいは知っているが、里の桜と、山の桜で済ませている。
 ともかく、花なら木に咲く花が好きで、桜なら爛漫を惜しまぬソメイヨシノよりも、和服のような清楚で控えめな山桜の方が好きだ。開花と芽吹きがほぼ同時の山桜だが、それぞれの木がその開花・芽吹きの時期にこだわりまちまちだから、あっちの森へ、こっちの谷へと、花を見る者の探求心をそそるようで心憎い。
 こんなふうに桜の花は咲いても、ご覧のように白樺の木はまだ芽吹いてもいない。白樺とよく似たダケカンバときたらもっと遅い。いつまでも無精姿を晒すのをやめて新緑の衣を早くまとうようにと春の日は、そのまばゆい光でもっと急かせてくれたらと思う時がある。

 昨夜の雪で、西山(中ア)は白い衣の裾を麓まで下げてしまった。ここと標高差で100メートルにも満たないような裏山まで、これまた雪がベッタリと付いたまま融けようともしない。入笠へ車でい行くことは、これで当分の間は無理となった。

 思い出を 解かしていくや 春の雪  -TDS
 TDS君、ありがとう。
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    ’17年「早春」 (23)

2017年03月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日の昼の天気予報では、夜の8時ごろから雪の予報だった。しかし、降らなかった。降らなくて結構、もういい、そう思っていたら夜間に、というより朝方になってから雨は雪に変わったようだ。午前9時過ぎ、霙はまた雨になったが、入笠はまだ雪かも知れない。そうだとすると厄介なことになる。
 近隣に不幸があり、一昨日その葬儀に参列した折に眺めた入笠周辺の中級山岳は、思っていたよりもまだ雪があった。その上にさらに降雪が続くとなれば、「ど日蔭の曲がり」などと呼んでいる一番の難所は、まだこの先1か月くらい、車での通行は不可能になるだろう。4月末から始まる連休の前には除雪が行われるが、それまでの1週間ばかりは、片道1時間以上をかけて雪道を歩いていかなければならないかも知れない。
 今一生懸命に思い出そうとしているのは、昨年はどうだったかということだが、恐らく車で行けたと思う。昨年は雪が少ない年だった。日誌を調べたら、2014年も車で行けた。過去10年間のうち、最初の年は5月1日が仕事始めで問題なかったが、それ以降9年間のうち車で管理棟まで行けた記憶は2回しかない。それ以外に、間伐のため業者が除雪してくれた年があったかも知れないが、記録はそれだけだ。
 3,4年前までは、牧場に残置しておいた軽トラックが動いたため、初日の帰りはそれで可能な所まで来て、後は通行できない林道は歩く、というようにしたからそれ以降は大分楽にはなった。しかしもう、牧場の軽トラックは使い物にならなくなってしまって久しい。

 ただしこういう日々が、必ずしもいやだということはない。弁当と用心のための雨具、羽毛服を入れたザックを背負い、雪で埋まった林道を登っていく。落葉松の林に混ざった杉や、モミの木には雪が付いていたりして、そのせいか幾分暗く、ひんやりとした山の静けさが何ともいい。周囲の森の雰囲気はまだ冬のままだが、それでも新鮮で、溌剌とした新しい季節の予兆を感じてしまう。鳥の声がしたり、雪の中からせせらぎの音が聞こえてくることもある。誰もいない山の中にひとりで入っていけるということが、子供じみた冒険心にも似た懐かしい喜びでもある。

 Kへ、大丈夫、11年前のこの日のことは覚えている。元気でやっているか。
 
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