Photo by Ume氏(2枚とも)
捕らわれの鹿は、どうも11頭と2頭のふたつの群れらしい。雨は止まないが、霧が晴れたので罠の中を見ると、11頭の鹿が1枚目の写真とほぼ同じ位置の草の上に横になっている。そしてそこから2,30メートル離れた所にもう1頭が、やはり横になって休んでいる。しかし、もう1頭いるはずの鹿の姿が見えない。
11頭を率いているのはかなり大型の雄で、双眼鏡で見ればかなり成長した袋角が分かる。この段階では精力剤として珍重されるが、これが秋になれば4尖の立派な角になるだろう。どの鹿も、休んではいても首をすっくと立て、目を開き、絶えず周囲の警戒を怠ることがない。それも、見る方向は同一ではなく、まるで役割が決まっているように各々その方向をたがえ、ずっと変えないでいる。特に雄鹿は300メートルくらい離れたこちらの動静が分かるかのように緊張を解かず、こっちに目を向けたまま微動だにしない。
この時季は妊娠している雌鹿がいるが、この雄鹿1頭で、引き連れている10頭を身籠らせるのだとしたら、その繁殖力たるや侮(あなど)れない。しかも、単独で行動することが多いから、まだ付き合いのある群れが他にもいるかも知れない。浮気者奴。繁殖力旺盛な日本鹿は4,5年で倍になるという数字もある。あっ、今1頭が立ち上がった。と思ったら、またすぐに横になった。
姿の見えなかった鹿は、群れから離れた単独の鹿から、さらに10メートルほどの距離をとってやはり草の中に横になっていた。ということは、この2頭は単独行動をしていて、運悪く巻き込まれたのかも知れない。いずれにしても罠の中には13頭の鹿が、逃げられずにいる。
約1時間して、ようやく雄鹿が立ち上がり、動いた。釣られるようにもう1頭が従った。しかし、他の鹿は動かず、見る方向も変えずそのままにしている。緊張が和らいだように思えたが、それは一瞬のことで、また野生の動物の警戒感がここまでヒシヒシと伝わってくる。勝手知ったいつもの森の中とは違うことを、とっくにこの鹿たちは分かっている。
明日はかんと氏の天体写真、お楽しみに。
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