入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     「冬ごもり」 (34)

2019年12月31日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by F破氏

 気温が緩み、冬の山の凛とした気が失せた。昼の気温は零度まで落ちない。TさんとFさんは8時ごろ、南沢から釜無方面の森を歩いてくると言って出掛けていった。Fさんは小屋に残り、先程になってOさんが来た。法華道を登ってK君がそろそろ到着するはずだが、まだのようだ。山奥氏からもまだ何の沙汰もないが、氏については何の心配もいらないはずだ。
 マナスル山荘は、今年も越年の入山者が結構いると聞く。それでも、小屋の前の林道を行く人影はない。この程度の雪でも、登山者の行動に影響するようなら少し情けないと思うが、ただし周囲の林の木々はすっかり雪を落とし化粧気のない素顔を晒しているばかりで、強いて森の中に出掛ける気が湧かないとしても分かる気がする。
 3時になったら、年越しの準備をするつもりでいるので、その前に本年最後の呟きを済ませておこうと、そう思って努力をするのだが、いつにも増して何も浮かんでこない。あまり神妙な気持ちになって、訳の分からないことを呟くのは大晦日でもあるし避けたい。年末恒例の第九は聞き逃した。無念。昨夜の試験的鯛の鍋料理は大成功だった。
 今、K君が着いた。法華道は山椒小屋跡辺りから雪があったようで、だとすれば例年に比べかなり少ない。それでもこの時季、あの古道を来る登山者がいるのは喜ばしいことだし、後に続く人が出て欲しい。

 今年がもうすぐ終わろうとしている。何も特別なことなどなかった一年だったが、それでも去っていく時の区切りには、哀惜と感謝の気持を持って送りたい。
 そして、この呟きに耳を傾けてくれた多くの人たちに感謝申し上げます。どうか良い年を迎えられますよう。
 



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     「冬ごもり」 (32)

2019年12月30日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                      Photo by Ume氏

 午前4時、信じられないことだが気温は零度をわずかに割っただけで、マイナス1度まで下がっていない。念のため、部屋の中に置いてある水タンクを揺すってみたら、驚いたことに凍っていなかった。どうやら寒暖計は正確のようだ。昨日の朝は8時の段階でマイナス10度、それが最も気温の下がるはずのこの時間において、昨日の昼の気温零下1度より、若干とはいえ高いとは・・・。
 軟弱と嗤われるだろうが一昨夜は、寝袋と布団を併用した。ところが久しぶりのことで寝袋は窮屈だった。それで昨夜は羽毛服を着て寝た。それが祟った。そこまでのことをする必要など全くなかったのだ。
 午前3時に目が覚め、再度眠れそうになかったので炬燵に移動して本を読んでいた。外の気温を知った後も、羽毛服は脱がず、あまり効果のない年代物の石油ストーブの世話になりながら、それを格別に過剰とは感じない。普段身に着けている毛のシャツと羽毛のベストを着ていないからだろう。
 衣類に関して独り言ちれば、今回はフリースを持ってこなかった。その代わりに古くて重い脱脂してないセーターにした。それと言うのも、最近、フリースに対する信頼が揺らいだからだ。極く個人的な体験に基ずく意見だが、あれは1年くらいで保温効果が激減してしまうということが分かった。某社が安価な製品を大々的に売り出す前から、ゴアテックスとの組み合わせでフリースには長年世話になってきた。今も3着持っている。
 しかし、里ではまだしも、年寄りがマイナス10度を超えるような環境では、新品ならいざ知らず、セーターの方が余程信頼に値するというのが、こんな突拍子もない時間の独断だが、さて如何に。ついでに最近の下着、あれも気を付けないと汗をかいた後、物によっては綿と同じような事態になりかねないこともある。

 きょうのUme氏のPH、撮影日は少し前になるが、これがほぼ現在の入笠(伊那側)の姿、実力。
 K務さんによれば、テイ沢には人の歩いた跡はなかったとか。そんなものだ。

 K務父子はきょう帰り、越年の人たちがやって来る。結果的には、馴染みの顔触れになったが、とにかく、牧場の片隅にある古い小屋を、新年に向けて開けるということに意義があると思っている。今年も残すところついに二日、神妙な気分になる。

 今年度の「冬季営業」の詳細については、下線部をクリックしてご覧ください。
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     「冬ごもり」 (31)

2019年12月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 今朝8時の気温マイナス10度、快晴。久しぶりに体感する寒さ。窓は凍り付いて開かない。霜は降りたようだが、一昨日の夜に降った雪がかなり残っていて、せいぜいコナシの鋭い枝を白くしているのが分かるくらいだ。
 そんな中、あの寒がり屋のHALはどうしたのか分からないが、暖かい寝床を拒否して、ずっと一晩中外の雪のない枯れ草の上で寝ていた。犬は寒さに強いように言われているが、それは耐えられるというだけで、やはり暖かい場所が好きなのは人間と変わらいはず、もしかしたら、折角用意してやった行火(あんか)を嫌ったのかも分からない。

 昨日上に着いたのがちょうど正午で、晴れていたが気温はマイナス1度だった。一昨日から昨日にかけて降った里の雨が、上では雪だったようで、枯れ木橋を過ぎてからは相当湿気を含んだ雪だったのだろう氷結していて、その量にしても予想外だった。
 朝のうちに連絡があり、予約の3人家族は一人減って、父親と小学一年の息子だけになってしまった。車で行ける限りは、人数に拘らず受けるとしたから、こちらは了解した。小屋にした方が良いか、管理棟の10畳にするか迷ったが、それは本人たちに任せることにして、取り敢えず受け入れの準備を済ませておいた。
 2時までには到着すると言っていたK務親子を、30分ほど前に車で迎えにいき、途中で拾うことができた。結局、広すぎる小屋を嫌って、隣の10畳に落ち着いた。
 サンタの贈り物だというドローンをY君が飛ばすのを見ていたら、今度は種平小屋夫妻が通りがかり、少し休憩をしていった。いつも二人はHALを可愛がってくれ、HALも懐いている。犬の身になったら、飼い主はあの人たちの方が幸せかも知れない、なんてことをつい思ったりする。

 昨日から、入笠へも登山者が結構来ているらしい。それでも相変わらずここは静かなもので、こんな雰囲気のまま年末を過ごし、新しい年を迎えるのも悪くない。きょうはK務親子がテイ沢方面へ行くらしいから、一人でのんびりと持ってきた本を読んで過ごす。そうそう、明日からは越年の登山者がここへも来る。取り敢えず、出汁(だし)でもひいておくか。

 今年度の「冬季営業」の詳細については、下線部をクリックしてご覧ください。

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     「冬ごもり」」 (30)

2019年12月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

 今上に行けば、こんな眺めが待っているだろう。真っ青な空と接する遠くの白い雪の山並み、左から空木岳、そして西駒ケ岳、中央よりやや右が御嶽山で、一番端っこは乗鞍かと思ったが、どうも穂高のようだ。
 
 手前の谷は時々この呟きに出てくる初の沢。流れは沢としては緩やかで、芝平の集落まで下り、山室川に流れ込む。だからこの谷に沿って、どうして山道ができなかったのか不思議だった。北原のお師匠に聞いてみると、「中尾根」と呼ばれた尾根が「岩っこルート」よりさらに初の沢寄りにあったという。地元の人々が使っただけで、今ではその足跡を知ることも、たどることも難しいだろう。
 その際に師から、初の沢の途中に「ウスボラ」と地元の人たちだけが呼ぶ場所があることを初めて聞いた。遡行には難所とされた「ニクノタテ」という場所がその辺りにあり、その名前は以前から耳にしていた。一昨年、種平夫妻と入渓した時には、残念なことにそれらしき場所を確かめることができないまま通過してしまった。来年の夏にでも、もう一度行ってみようかと思っている。
 この広大な山地に生えている木の大方が落葉松の人工林である。戦後各地で盛んに行われた植林で、苗は一人ひとりが背負い入山し、一日に何百本も植えたのだという。この頃になって、その貴重な森や林が皆伐され問題になっているが、先人がしたと同じようなことがまたできるかとなれば、もうまず無理だろう。これも次世代へ送られる課題になってしまう。
 山は雪に埋もれて眠るだけだ。

  昨夜の雨は止んだ。朝方はかなり風が強かった。年末から新年にかけての天気ことをよく知らないまま、明日から上へ行く。昨年と変わらず、里では新年を迎えるにあたり何もしないが、それでも、折角あの山小屋で年を越そうとして来る人々には、心ばかりだが何か振る舞いたいと思っている。山奥氏が釣ってきてくれた魚もあることだし。
 それにしても、ここでの暮らしよりも不便で、ここよりも寒い世界へ行くことが、越年の行事になってしまった。

 海老名出丸さん、F枝さん、本年最後の通信になりますか。ありがとうございました。

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     「冬ごもり」」 (29)

2019年12月26日 | 入笠牧場からの星空

     Photo by かんと氏

  星の狩人なら、もちろん要らざる説明だが、それでも、冬の大三角形やオリオン座を実際に見たことのない人のために、かんとさんの助けを借りて少し説明しておきたい。
 
 落葉松の先端が尖った黒い影、その真上に輝いている星が全天で一番明るい星、シリウス(大犬座)。冬の大三角はこれを頂点にして上方に広がり、美しい二等辺三角形を構成する。右斜め上の黄色く見える星に注目しよう。これが、オリオン座の四つ星の一つ、すでに消滅の可能性まで疑われているベテルギウスで、三角形の右の一角になり、もう一つの角はそのまま視線を左へ水平に移動していくと見える白い星、これが小犬座のプロキオン。 
 これで冬の大三角形が分かったと思う。かんとさんの説明によれば、その逆三角の底辺の中間あたりの赤っぽい微光の集合がバラ星雲で、そこを冬の天の川銀河が流れている、と説明してくれている。銀河は夏は左方向へ、冬は右方向へと変わって見える。
 今見たベテルギウスを四角形の左上と考えれば、オリオン座やその三ツ星、またオリオン星雲も分かりやすいと思うが如何か。この星と斜め下方に対抗する星、この写真ではシリウスに負けないような明るい光を放つ星だが、これがリゲル。オリオン座の右下の一画になり、この星は冬のダイヤモンドを構成する6個ある星の一つでもある。
 バーナードループも写っているが、ムーこれはカテゴリー別の「入笠牧場からの星空」で見てもらうことにしたい。

 星空の魅力は、美しさだけでなく、その神秘性にもあるのだと思う。先ごろ、初めてブラックホールの撮影に成功したことが、大きなニュースになった。その光さえも閉じ込めてしまう天体、その暗黒の天体が、しかし太陽の65億倍もの質量を持つと報じられては、度肝を抜かれ、言葉を失ってしまう。10倍、100倍なら何とかついていけるかも知れないが、太陽の65億倍である。それも巨大な星が、凄まじい密度に収縮した結果で、といっても太陽から海王星までの距離の9倍近い大きさ(400億キロ)、そんなものが大宇宙にはゴロゴロと存在しているのだろうか。怖しい話だ。
 というふうに、星空を眺めることは、われわれの日常をはるかに超えてしまった世界を垣間見ていることになるのだろう。138億年であり、ウン億光年の世界をである。たった100年すら生きられないわれわれが。

 かんとさん、ありがとう。海老名出丸さん、今回の星景写真はどうでしたか。

 今年度の「冬季営業」の詳細については、下線部をクリックしてご覧ください。

 
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