入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「秋」(37)

2020年10月05日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 夕暮れの第1牧区へ上がっていったら、谷を隔てた向こうの第4牧区に牛たちの姿が見えた。そこへ夕霧が流れ込んできて、先急ぐ晩景の趣が深まった。季節にもよる、天候にもよる、そしてその景色を眺める時間によっても違うし、また見る者の心境も影響して、見慣れた風景が多様な表情を見せ、変わる。(10月4日記)

 昨日第1牧区へ行ったのは、残留牛2頭の様子を見たかったからで、明日6日の下牧に際し最も厄介で困難が予想される牛たちだからである。午前中にご機嫌伺いした際は、2頭は御所平のいつもの場所にいた。この場所が見下ろせる塩場からは500㍍くらい離れていたが、それでもクラクションに反応して立ち上がるのが見えた。ところが近くまで歩いて行って呼んでみたら、痴呆の進んだ老婆のように反応が鈍く、その場を離れようとしない。確かに27番は15歳、老婆と言っても差し支えない。やむなくその時は諦めて帰ってきた。
 それで昨日、再度、夕暮れ時を選んで行ってみたわけだが、驚いたことに2頭は第1牧区の入り口近くにいた。しかも、まるで痴呆が治ったかのような反応を見せた。塩場で呼んだらまず"老婆"が来て、25番は少し離れていたが、明らかに喜びを見せて飛び上がるように走ってきた。午前の素っ気ない素振りと、夕闇の中での態度とでは、まったく別の牛を見るようだった。人間の女性と同様、牛も難しい。
 きょうは「集牧」と言って明日に備え、全頭を囲いの中へ集めるため、下から2名ほどが応援に来ることになっている。しかし、彼らも一緒に第1牧区へ上がっていけば、この2頭は異常とも言える警戒心から、間違いなく馬並に逃げ回りどうにもならなくなる。何としても一人で相手の警戒心を解きながら下まで誘導し下ろすしかない。
 第4牧区にいる35頭の牛たちは、AB両放牧地に分散したままの状態でいる。国有林の中にある第5放牧地は昨日のうちに閉じた。恐らくこの牛たちは一人ででも誘導してくる自信がある。それだけの調教をしてある。しかし、こんなことを言うと、いつかの時のように思わぬしっぺ返しを食らうことになるかも知れない。ともかくそんなわけで、この独り言は早朝に済ませた。
 本日の朝飯:焼き魚(赤魚の粕漬)、キュウリと塩イカにゴマの実(味噌漬け)まぶし、納豆、ミョウガとわかめの味噌汁。今夕はまた一人鍋。山のやもめ暮らし、何らの不自由あるなし。
 
 キャンプ場の緑の草地に、コナシの黄色く色付いた葉が落ち葉となって、美しい模様を作りつつある。本日はこの辺で。
 

 
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