入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     「秋」 (35)

2015年09月30日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 家を出ると毎朝、天竜川の造った河岸段丘のさらに上に出る。林を抜けると遠くまで田畑が広がり、すぐ目に飛び込んでくるのが南アルプスの仙丈ケ岳である。今朝もその堂々たる山容を見ながら右折して一般道路に出た。すると今度は、こっちも見ろと言わんばかりに、右手に中央アルプスの山並みがその存在を訴えてくる。光線の加減もあって、仙丈ケ岳よりも山肌がかなり鮮明に見える。森林限界を超える辺りは紅葉が始まっているらしく大分赤味を帯びてきているが、それよりも下部にはまだ紅葉は下りてきてはいない。今に山肌全体が色付いて、赤と茶系の激しいまでの色彩に染まる頃には、稜線に初雪が降る。

  会釈して 山は雪だと 言い交す  一伯

 このところ罠に掛かる鹿は雄ばかりだ。何度でも書くが、動物の世界は、雄と雌では格段に違う。本質的には人間とて、肉体的には例外ではないかも知れないが、あまり性差のない社会にしようと努力しているようだし、職業によっては完全に、女性の方が男性を支配しているように見えることもある。
 ともかく人間のケースはさておき、雄鹿の話。鹿を捕獲した場合はまず昏倒させて、素早く仕留める。できるだけ恐怖や、苦痛のないようにとの配慮だが、これが雄鹿と雌鹿では同じ鹿かというくらい違う。相手も暴れるし、反撃もしてくる。角や後ろ足に当たれば、こちらの被害も大きい。そして雄の生命力、これが人間よりも強いという人もいるほど凄い。角もこの時期になれば立派に成長し、なかなか一撃で倒すのは難しい。止めてからも、息を引き取るまでが長い。それを見守るのは、こちらの精神的苦痛も相当に大きい。
 しかしである、いくら有害獣に指定され、捕獲が奨励されているとはいえ鹿は立派な野生の生き物ある。その生命を奪うのだ。こちらに肉体的、精神的負担があっても当然だし、鹿の反撃も、これまた当たり前すぎることだ。容易ならざることをしているのだという認識は、屠る鹿への最低の礼節だろう。

 今日から10月。山はまた一段と秋色を深めた。
 入笠牧場の宿泊施設及びキャンプの営業に関しましてはカテゴリー別の「H27年の営業」を、また天体観測に関心のある方は「入笠牧場からの星空」をご覧ください。


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「秋」 (34)

2015年09月29日 | 牧場その日その時


  昨日の夕暮れ、山並みははっきりと見えていたが、薄い筋状の雲が御嶽や乗鞍、そして穂高や槍の頭上に棚引いていた。それ以外、暮れなずむ広い空には一片の雲もなかった。あの人たちは恐らく知らなかっただろう、あういう夕空にこそ、凄い夕焼けが現れることを。あの人たち、そう、以前にチラッと書いた映画の撮影隊の人たちのこと。
 その茜色の残光を西の空に眺めながら、山道をわざと遠回りして千代田湖に下れば、折しも東の空から極大満月・スーパームーンがなかなかの貫録を見せて昇ってきていた。
 途中、小屋に立ち寄った自転車乗りの夫婦を追い抜いてきた。ちょっとスピードの出し過ぎではと思ったが、あの人たちも美しい夕焼けと極大満月に見とれながらも、転倒せずに無事キャンプ地に帰っただろう。


  マユミの桃色の実が目に付くようになった

 そうだもう一つ、例の入笠の黄色の野良猫についても書いておこう。昨日の朝、牧場北門の数百メートルも手前で、その野良猫を見た。それまでそんな場所で目撃したことはなかったから、猫の活動範囲がまた広がったかと驚いた。ところがそれよりもっと驚いたのは、その日の帰り道、もうすぐ大ダオ(芝平峠)という所まで下ってきて、車のライトの中にその猫の姿が飛び込んできた。車で走れば15分くらいだが、歩けば2時間とか3時間とかかかるだろう。どういう行動をとったか分からないが、ほぼ1日をかけてそこまで来たようだ。
 ここにきて、山の夜は一段と寒さが厳しくなってきた。さしものノラも山中での暮らしを諦め、里に下る決意をしたのだろうか。うまく芝平にでも行き着き、あの集落の廃屋にでも落ち着ければよいが、そのまま舗装路を行けば人里に達するには遠過ぎよう。どういう経緯でいつから野良猫になったのか、冬を乗り切る術や知恵があるのか、何も語らないノラ。

 今日も秋空の下、気持ちのすっきりとする天気が続く。白樺や小梨の葉も大分黄色く色付き、山ブドウの葉は紅葉している。遠い昔、友達と山ブドウを採って、ブドウ酒を造ったことがあった。そして後日それぞれが持ち寄って、神社の境内で味比べまでした。思えばまだ、中学生のころだった。

 高橋さん、PH送ってくれたこと気付きませんでした。ありがとうございました。大谷さん予約届きました。お待ちしてます。巣鴨さん方からの極大満月、どうでした。

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     「秋」 (33)

2015年09月28日 | 牧場その日その時


  勿体ぶっていた秋もようやく、今日は真っ青な空を惜し気もなく見せてくれている。ひんやりとした森の中に入っていくと、そこにもツタウルシの紅葉が始まっていた。この落葉松に絡みついたツタの葉も、一様に赤だったり黄色だったりするよりか、そこにまだ色付かない緑の葉が混ざっていたりした方がいい。そのほうがかえって、赤も黄色も、そして緑の色も、その色合いが落ち着いて見え、周囲の枯れた雰囲気ともほどよく調和するような気がする。
 今日のような雲のない青い空の下のいつもの風景は、時間が停止してしまったかのようにまるで動きを感じない。それよりも、雨に濡れた草花や、それらの咲く林の中にいたほうが、よほど季節の繊細な動きのようなものが伝わってくる。





 昨夜が中秋の名月であったことをうっかりと忘れていた。しかし、かろうじてだが、月を見損なってはいない。客を送りがてら名月を見て、客が「今夜は満月かな」と言った記憶が残っている。満月を新月から15日としているから実際とは違うこともあり、事実、今夜の月が本当の満月で、さらに楕円軌道を描く月が、最も地球に接近するスパームーンの日でもある。
 
  ここの夕焼けは紅葉に負けない。今日の3枚のPHはF.R君の作。
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     かんと氏の「入笠牧場秋の星空」 (2)

2015年09月27日 | 入笠牧場からの星空

         網状星雲 Photo by かんと氏

  確かに、夜中に起きて10億年先の地球の未来を思い煩うくらいなら、酒でも飲んで寝たほうがましだ。それに前にも書いたが、50年、100年先の人類のことすら覚束ないと言われればそうなのに、このお粗末な思考力で億年まで行っては、本当に危ない。
 
 しかし頭脳明晰なある人は、脆弱不安定な惑星である地球を捨て、広大無辺の宇宙へとフロンティアを求めて旅立っていく人類を予言する。またある人は、人類の窮極の課題は不老不死だと言い、そのためには肉体を脱ぎ捨てた幽霊のような未来人を語る。
 どちらも快適なことだとは思えない。そんな未来に生まれるよりも、たとえ数十年の生命であっても、今の方を望む人の方が多いように思うがどうだろう。幽霊になって、愛だ恋だを語れるのだろうか。いくら億だ兆だの恒星を有する銀河でも、この地球のような美しい惑星が、ごろごろと他に存在するとは考えられないし、考えたくない。


         白鳥座サドル付近                             Photo by かんと氏

 ところで、これだけ文明が進んでも、それを享受できる人よりもできない人の方がはるかに多い。独裁や専制に苦しむ人は絶えない。こうした問題に対する上手い解決の方法が見付からないまま、われわれは数限りない不幸をつくりここまで来た。
 平和を求めることは正しい。戦争を嫌悪することも正しい。この無窮の宇宙で、われわれは貴重な存在かも知れない。だから、「生き続けなければならない」ということも分かる。しかしそうしたくとも、われわれの根源的なところに、もしかしたら致命的な欠陥が潜んでいるかも知れない、知的生命体の宿命として。攻めたり守ったり、守ったり攻めたり、そういうことがこの先も、まだ続くだろう。今この瞬間でも殺し合いは続き、祖国を捨て、安住の地を求めて彷徨する人がいる。

 かんとさんの美しい天体写真には相応しくないことを書いたかも知れない。星空を眺めていると、いろいろなことが頭の中に浮かんできて弱る。

 そろそろ紅葉狩りの計画を立ててください。秋の星空も魅力です。
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     「秋」 (32)

2015年09月26日 | 牧場その日その時

        撮影地点の背後に罠を仕掛けているので、見回りのついでについ同じ対象を撮りたくなる

  この季節の森や林、あるいは草原でも、色彩の主流はまだ緑の色がその役割を離そうとしない。しかし少しづつ、黄色が緑の色に染まり、溶け込み、全体からすれば周囲の色合いはイエローオーカーに近い黄色味を帯びて、しばらくは落ち着く。
 そしてもう少しすれば、そうした緑と黄色のほどよい調和を無視するかのように、所々に艶やかな赤や朱の色が現れる。ウルシやモミジ、ナナカマドがそうだ。色付いた葉は血のように鮮烈で激しく、そうかと思えば明るい暖かなオレンジの色もある。淋しい周囲の雰囲気が一変し、その時だけ明るさが戻る。
   

  そろそろツタウルシの紅葉が見頃に

 久しぶりに遠くで、鹿の鳴く声がした。虫の音はさっきからしている。夕暮れとともに、権兵衛山の中腹まで霧がまた下りてきた。今日は土曜日だというのに、静かな一日だった。里ではあちこちで運動会が開催されているらしい。

 巣鴨さん、TNKさん嬉しいコメントありがとうございました。今後もここでの感想やアドバイスをよろしくお願いいたします。

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