入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’19年「冬」 (29)

2019年01月31日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょうで1月も終わる。早かったと言えば早かったが、このひと月をあれこれと思い返すと、短いとも言えない。またしても、芝平の山奥でイナダだか真鯛だかサバだかが獲れると連絡を受けたので、午後には出掛ける。そういえば、そのころからこの辺りも雪になるらしい。
 と、いうようなことを呟いていたら、漁労長・百姓山奥いつもいる氏から電話が入り、隠れ家に帰ってきたからいつでも来いと。もちろん魚も有難い。が、それを理由にまた芝平の山奥へ行けるのがいい。特にきょうのような雪催いの日にだ。HALも連れていってやろう。


 やってくれました漁労長、まな板の魚が躍ってる

 上のPHの他に、もう1匹イナダ、そしてサバ半身を頂戴して帰る。一度にこれだけの魚がヤモメノ暮らしの許にやって来ると、その扱いを考えなければならない。誰かを呼んで、今宵は天婦羅も揚げ、小宴でも開こう。
 
「私は人生が終わったときに、はかない夢があります。色々な散骨法ありますが、雲のない晴れた夜に、大気圏突入し流れ星となる散骨です。燃え尽きる。」と、珍しくかんと氏から。いいですね。いっそ、かつてわれわれがそうだったように、大宇宙の星屑に還るなるのはどうでしょうか。無窮の遠(おち)へ永遠の旅を続けるという。
 末広さんからも、昨日の呟きに賛意を頂きました。暖かくなったら、今度は星空を眺めにお出掛けください。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’19年「冬」 (28)

2019年01月30日 | 入笠牧場からの星空

  ふたご座流星群                          Photo by かんと氏

 入笠牧場の小屋の前は、夜になれば絶好の星の観望地となる。今や、天体観測は、観光客誘致にかなりの効果があるらしく、どこそこの空が日本一だとか、いやその調査は古い、実はウチの方が・・・、とか喧(かまびす)しいことになっている。当牧場でも、効果は別にして、そういうことをウリにもしているから、あまり大きな声で批判めいたことを言うのは控えたい。
 ただし、今年になって打ち上げられたロケット「イプシロン4号」の搭載した衛星の中身には、違和感を感じた。何でもそれには、他の実験や研究機材と一緒に、ビー玉くらいの大きさの金属球が何百個も積み込まれていて、来春、その金属の玉を宇宙に放出して、人工の流れ星をつくるのだという。結構大きなニュースになったから覚えている人も多かろう。
 これを企画し、実行したのが民間企業の「ALE(えーる)」という会社で、同社の女性社長は、一般の人にも宇宙の魅力を伝えたいのだとか言ってた。非情に優秀な人だそうだから、こんなお題目のような説明とは別なことも、ベンチャー企業を牽引する立場として、きっと考えているだろう。
 このロケットの打ち上げには35億円の国費が使われているらしい。そのことについては素人だから、安いのか高いのかの判断はできない。現在地球を周回している宇宙ステーションは、わが国が負担する金額だけでも1日1億円ほどもするというから、費用対効果を疑問視する人もいる。防衛費とからめて議論する人もいる。
 しかし、そのことは入笠とはほとんど関係ない。問題は、あそこから眺める夜空である。一体そうまでして人口の流れ星を一般の人に見せることに、どれほどの意味があるというのだろう。もう充分に地球の外周は汚れている。この上、あの脆弱でわずかな空間・層に、商業主義的なものをさらにドンドンと持ち込んでも大丈夫なのだろうか。そのうち夜空に、大きな広告でも現れはしないかと心配になる。
 
 きょうのかんと氏の流れ星を見て欲しい。寒さに耐え、一晩中じっと天体ショーを待つ。それができるのも天然の現象だからで、それをわれわれは崇高に感じたり、神秘的に思ったりするわけだろう。ホタルの光に、無粋な灯を当てる必要などない。
  
 今、地方の観光地で盛んに行われている電飾にも、かなり抵抗を覚えていると、そんなことを呟けば、時代遅れと言われるだろうか。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’19年「冬」 (27)

2019年01月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日の続きになってしまうが、南稜のことで思い出したことがある。友人のUがプロの山岳指導者と一緒に、阿弥陀の沢に氷登り(アイス・クライミング)の訓練に行ってたときのことだったらしい。南稜から一人の単独行者が降りてきたので顔を見たら、何と登山家のM氏だったという。Uも氏の主催する登山学校には何度か参加したことがあったため、そこで師と生徒、ばかりかもう一人の師との間でも、気まずい雰囲気になったらしい。それはさておき、驚いたことにその時のM氏は、手に羽毛服を持っていただけで、他に何の荷物も持っていなかったそうだ。その後、あの距離を歩いて茅野の駅まで行ったのだろうか。
 友人のUの話では、M氏の指導は懇切丁寧で、信頼できたという。しかし、その氏もで実に数々の物語を残してやはり山で死んだ。佐瀬稔著「狼は帰らず」のモデルになった森田勝氏のことである。近年評判になった山岳小説で、映画にもなった「神々の銀嶺」は、焼き直しと言えるほど相当の部分を前書に負っている。また「銀嶺」は、昨年の5月、エベレストの南西壁で亡くなったクリキ氏(栗城)氏にも、何らかの影響を与えた可能性がある、と思っている。

 入笠へ行ってから3日が過ぎた。あれからも雪が降ったから、きょうの写真よりこの辺りもかなり積雪を増しただろう。そろそろ車は無理かも知れない。こんな気持ちの良さそうな林道、スノーシューズやスキーの出番である。また行ってみよう。当然、その時は羽毛服も持っていくが。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’19年「冬」 (26)

2019年01月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 西山(中央アルプス)は雪だ。雪が白い垂れ絹のように麓まで山の姿を隠してしまっている。部屋の炬燵の中で、すでに充分に積もった根雪の上にさらにもっと、雪が降り積もる様子を想像している。足の辺りに、柔らかい雪の感触が甦る。乾燥した粉雪は捉えどころがなく、なかなか前進させてくれないあのもどかしさも一緒にだ。

 また昔話だが、多分今ごろの時季だった。阿弥陀の南稜から頂上へ行くつもりで一人で入山した。その日の夜は過去に幕営したことのある見晴らしの良い、緩やかな雪原にしようと決めていた。初めての時は、まだ枯れた木が何本も倒れずに残っていて、今ならそんなことは許されないが、それで豪勢な焚火をしたこともあった場所だ。ところがその日は意外に時間がかかり、ついにはまだ樹林帯の中のわずかな平地を選んでテントを張るにようなことになった。
 本能のようなものかも知れないが、単独の場合は余計に、周囲が開けている場所に設営したくなる。風や、雪崩のことも考えた上でだが、目当てにしていた場所はまず安全な、急な登りが終わる樹林帯の途切れた場所だった。諦めて、実生から生えたモミの木の間の窮屈なねぐらと、いつものことながら極寒の長い夜に震えた。
 そのころは、だんだん山へ一緒に行く相手がいなくなたころで、単独行は必然のように考えていた。一人で味わう孤高の快感、冬の山のあの孤独感を、誰かが言った「地球の回る音が聞こえる」ような重い沈黙とともにその夜も、全身で感じていただろうか。
 翌日、風雪の中を頂上まで登った。そして愚かにも多分、軽くこなしたと自惚れて帰ってきただろう。また少し偉くなったような気がしていたかも知れない。
 
 それから何十年もして、こうして雪中の山行を振り返ってみて、そのころの自分を嗤いはする。それでも、当時の諸々の錯誤や思い込み、熱狂を取り除いても、山は残る。何も誇れるようなことはできなかったが、山を選択したことは今でも自分ではそこそこ納得している。だから、入笠牧場の管理人をこれだけ長く務めることができたのだとも。(1月28日記)

 あれからまた、入笠の雪の量は増えただろう。きょうのPHも1月26日の撮影。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’19年「冬」 (25)

2019年01月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 突然のことながら、今週末の小屋の営業を中止することにした。予約してくれた3人の方々には、すでに連絡し、承諾を得たものの、大変に申し訳ないことをしてしまった。予約を受けた側としても断腸の思いでいる。もちろん、予約者数の問題などではないことは、強調しておきたい。一度受けた以上はたとえ一人であっても、そういうことを理由にはしない。
 ここでも呟いたように昨日、雪の状況などの下見を兼ねて上に行ってきたのも、降雪量によっては、下から歩いて行くことになるからだ。慎重な判断が要るし、そうなれば天候いかんでは緊張もする。いつも山は、入笠はと、気楽に呟いていると思われるかも知れないが、「古来稀」なる年齢を考えればそうばかりではない。雪の山道を歩いて登るとなれば、2時間そこそこの記録もあるが、今の時季ならやはり4時間ぐらいは見ておく必要がある。週末に備えて張りつめていた気が抜けて、これからの1週間が真っ白になってしまった。
 当然、中止の理由を明らかにすべきだろうが、どうしても都合が付かなくなったということだけにしておきたい。ただ今回のように、こちらから中止したことは、これまでに一度もない。体調不良でもなければ、知人とか友人の不幸でもない。また、なぜ冬の営業にこれだけ血道を上げるのかもだが、同じ入笠でも、静かな伊那側の冬を体験し味わってほしいからで、個人的には自己満足以外には何もない。それと、伊那側の入笠や牧場への「声なき声」にでもなれたらという思いは、まだ捨てずに持っているつもりだ。
 昨日も弁天様まで雪道を歩いて来た人の足跡が、そこで引き返しているのを目にした。もう少し奥まで行けばよかったのにと思えるような足跡に見えた。冬のテイ沢もいいが、本家・御所平峠から高座岩までの往復とか、峠から御所平を通り御所が池までの往復もある。昨夏に一組だけ見掛けたが、入笠山の西側に位置する大沢山を周回する雪の林道を歩くのもいいものだ。ただ、登山口から入笠山頂まで片道30分ほどで往復できるほど甘くはない。冬山であることに変わりはない、と言っておくべきだろう。

 きょうのPHは昨日の荊口の様子。これから山室川に沿って上り、芝平を通過して牧場までまだ20キロ近くある。(19)で触れた古刹「弘妙寺(ぐみょうじ)」はこの橋を渡り少し行けばある。

冬の営業案内」をご覧ください(下線部を左クリックしてください)。予約は早めに頂ければ幸いです。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする