入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

続 冬の入笠牧場 (4)

2013年12月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

 天気:快晴、気温:零度(昼)

 山は雲ひとつない素晴らしい天気。風もまったくない。ただし牧場に入るまでは、ほとんど日の射さない林道をひたすら歩く。前日につけた車の跡も貴婦人の丘までで、そこからは気持ちのよいパウダースノウの上を快調に行く。富士見方面と戸台方面に分岐する弁天前の三叉路には、この時期例年だと富士見から登ってくる猟師の車の轍があるものだが、今年はいつもより早い大雪で、それもない。北アルプスは北部の三国境辺りまで見え、中でも穂高と槍がほどよい位置におさまっている。

 小屋までは1時間半から2時間位とみていたが、実際には2時間を10分ばかりオーバーして、昼を少し回っていた。冷え切った部屋のストーブを点け、早速ビールを飲む。朝あまり食べずに来たから、空腹に効く。室内が暖まるまで外に椅子を出して、周囲の見慣れた風景を眺めるともなく眺める。小屋の周囲にはいろいろな動物の足跡が残っているが姿は見えない。前回来たときは、小鳥が幾羽も忙し気に小梨の枝の間を飛び回っていたが、その姿も今日はない。

 当初の2泊の予定なら、2日目を好きなだけ使って周囲を歩き回ればよいが、1泊だけとなると何もしないで小屋の中にいては勿体ない。まだアルコールのぬけない身体に、無理してそう言い聞かせる。そして面倒な支度をして、第1牧区へ行ってみることにした。二重靴を履き、スパッツを付け、スノーシュー(ズ)を履いて、手袋だ防寒衣だと・・・。そのとき撮った写真が、昨日の3枚と今日の1枚である。4枚の写真が多くを語ってくれるだろうから、余計なことを言うのはよそう。

 夜が来た。オリオン座が東の山から時間をかけて登ろうとしている。目が慣れるまで外にいるのが、高所用の羽毛服を着ていても堪える。気温はマイナス10度かそこらだ。情けない。
 穏やかだ。聖夜に相応しい。何かしたいとも、しようとも思わない。それでいて、いい夜が満ち、溢れ、酔いとともにゆっくりと過ぎてゆく。

                 
                 
 
 翌朝早くに、電話で天気が下り坂だと知らせてもらう。
 「祭は終わった。蕩児の帰還の時が来た」と、あの作家は言ったものだ。登ってきたときに残した雪の上の足跡をたどりつつ、また同じ道を帰ろう。

 ど日陰の曲りを少し下ると、そこまで除雪がされていてまたもや驚く。ここからだと、小屋まで1時間と少々で行けそうだ。後で知ったことだが、高遠興産の間伐は、その辺りの谷だという。また来よう。山の方がよく眠れる。

  

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冬の入笠牧場 (4)

2013年12月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など







 夕日を追いかけるようにして、雪の斜面を登る。無風。無音。

 天気:快晴、気温:零度(昼)

 24日のクリスマスイブ、予定どうり犬を2匹連れて車で登る。芝平の工事現場から上は車の通った跡がない。積雪は予想以上に深い。20センチはある。芝平峠からは轍があり、走行は少しラクになる。焼き合わせで車を捨てるか迷うも、そのまま続行。ところが、最も危惧していたど日陰の曲りで轍は消えてしまった。引き返すこともままならず、そのまま突っ込む。何とか貴婦人の丘まで冷や汗をかきながら到着する。ローギヤで半クラを使いすぎたか、いやな臭いもする。
 
 しかしそこからは、車では無理。例年ながら、強い風で雪が大量に吹き寄せられている。歩いていくつもりでその準備をしながら考えた。「もし夜間に降雪があれば、もう車では下れまい」と。気温が低く粉雪とは言え、車体は雪面と頻繁に接触を繰り返した。これ以上になれば、以前そういう車があったが、春まで放置しなければならない可能性もある。春の雪ならとうの昔に”カメ”になり、スタックしているところだ。友人に天気予報を見てくれるよう電話すると、「夜間は曇りだ」という返事がかえってきた。

 焼き合わせに車を残し、再度歩いて登ろうか思案しながら下ってきたが、結局下山と決定。ところが、しばらく行くと驚いたことに、高遠興産のタイヤドーザーが除雪しているのに出くわす。今冬この辺りで間伐の仕事があり、そのための除雪だという。しばらく話すうちに、翌日もう一度、今度は犬を連れないで登る気になる。やはり、2匹の犬を連れていては、いろいろと厄介なのだ。

 で、翌日の25日、焼き合わせに車を残し、スノウシュー(ズ)に履き替えて再度入笠牧場へ。(つづく)
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冬の入笠牧場 (3)

2013年12月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

天気:晴れ、気温:不明

 思ったほど雪は多くない。それでも、日陰は20センチほどの積雪があり、4駆にした車も走行には気を遣う。北門を過ぎた所で、いつものように第1牧区の方に目をやると、幾頭かの鹿の姿が見える。

 

 こんな時期、山に来るのはハンターぐらいか、戸台方面へと轍が続いている。大型の囲い罠は解放したままだが、鹿が出入りしているようではない。これだけの積雪であれば、雪をどけて草を掘り起こすのも容易ではないだろう。

 

 風もないので外にいても寒くないが、まだツララができてない。夜間の気温はそれほど低くはならないということか。それとも日中の気温が低いために、屋根に積もった雪が融けないのかもしれないが・・・。

 

 管理棟前の轍。スノーシュー(ズ)を履いて周囲の森の中を歩くつもりが、想定外のことあり今回は中止。またすぐ来るから、次回は美味いものをたくさん持って、泊りがけで。そうだ、今年も「ひとりぼっちのクリスマス」は、入笠にしようか。

 

 鹿に見送られて、山を下る。親子なのか姉妹なのか、カメラを向けても逃げようとしない。



 芝平峠から見る八ヶ岳。

 

 途中、ガレ場の手前で、下から登ってきた車とすれ違う。かなり無理して横に避けて待っていると、車はエンストを繰り返すばかり。どうやら運転者は若い女の子。ようやく通過したところでギョ、なんと助手席に北原のお師匠! 運転免許を取ったばかりのお孫さんの、教習中だと。やさしい、元気なおじいさんは80ウン歳だ。オソレイリマシタ。

 さんざん手を焼かされ(10日間も上に泊まった)、挙句に骨折し、残留した牛に、ささやかなクリスマスプレゼントを持って上がってきたことがある。あれからもう2年も経つが、助けてやれなかったその牛が雪の中で倒れ伏していた姿を、また思い出してる。
 そういえば、今年はマッキーもお陀仏になってしまった。合掌。 
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冬の入笠牧場 (2)

2013年12月09日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

 天気:晴れ、気温:未計測

 日の射さない灰色の冬空のせいだろう、雪をか被った中アや北アの峰々が、今日(12月9日)はいつにも増して寂しく見える。

 先週、久しぶりに東京へ行った。皆が過分なまでに歓待してくれ、紅灯の巷で高い酒も頂いた。懐かしい顔にも会えたし、美味い物も馳走になった。都立美術館では、慌ただしくターナーの作品も見ることができた。
 予定していたかつて暮らした玉川上水の流れる街へは、翌日いつものように井之頭公園内を歩いていった。古い記憶を無理して呼び出していたせいもあっただろうか、次第に疲れが出てきた。そして、もはや自分とは関わりのない、単なる記憶でしかない所を歩いているのだと思うと、急に信州へ帰りたくなってきた。その夜は人と会う約束もしていたし、ホテルも予約してあった。しかし、思い立ったらどうしても止まらなくなってしまった。入笠が恋しかった。

 今年は雪が遅く、風景は前回来たときとあまり変わらない。それでも牧草は枯れ、木々はことごとく葉を散らし、山々は眠りに入ったように見える。小さな沢や流れは氷結したままで、日中の気温はあまり上がらないことが分かる。心配していた水場は、水量こそ落ちたが、透明な水が湧き出ていて心配することはなかった。ハンターが犬でも追って入ったのか、管理棟の下の牧場ゲートは外されていたが、その先のもうひとつのゲートは施錠してあり人の入った様子はない。
 
 道々考えた。来年は遠回りしなくてもすむように、市道からキャンプ場へ直接下りる道を作ろう。初の沢の源頭には幾か所か得意の丸太橋も架けよう。鹿に食べつくされた貴婦人の丘は、一般開放も考えてみよう。牧場の管理には熱心だったが、訪れる人たちへの思いは、足りなかったかもしれない・・・。

 冬枯れの牧場の風景を眺めていると、いつにかそこから去った牛たちのことが頭に浮かんでくる。たったの4か月とは言え、短い牛たちの生涯を思えば、ここでの暮らしこそが最も幸福なときであっただろう、と。 
 
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冬の入笠牧場 (1)

2013年12月03日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

 天気:晴れ、気温:4度C

 取水場の凍結が気になり、また牧場に上がる。この時期、上流にある水の取り入れ口が一部凍結して、水量も落ちる。気温が下がれば取水場も凍り、水が止ってしまう恐れがある。まだ積雪量も大したことなく雪に頼れないため、毎年のことながら頭の痛い課題となっている。
 
 ちょうど、県の有害動物対策のY氏とO氏が、監視カメラの回収に来ていたので、一緒に第1牧区に登る。塩場から日当たりの良い御所平方面を見て呆然。およそ50頭もの鹿が、のんびりと草を食んでいる。中には満腹したのか反芻している鹿までもいる。
 この牧区は来年の3月までの予定で、県が試験用の電気牧柵を施設し、鹿の侵入防止に対する効果を調査中だったが、冬季は雪のため電気を止め電気柵も落としてある。1メートル程度の通常の牧柵など鹿にとっては無いも同然。これ幸いと、食べる物の乏しくなった周囲の森からやってきたのだろう。
 折角苦労して守ってきた牧草が、これでは根こそぎやられてしまう。といって、対策があるわけではない。早く多量の降雪を期待するしかない。


           わがもの顔でノサバル鹿、鹿、鹿・・・来年はこの森に罠を集中する


           風の音もない静かな牧場は、もうすぐ雪に埋もれる

 下に帰れば、7か月放置したままの陋屋が、庭が、畑が「何とかしてくれぇ」と悲鳴を上げている。冷え切った隙間だらけの家の中を少しばかり暖め、零下の夜と闘わなければならない本格的な冬が、また来る。(12月2日記)

 山小屋「農協ハウス」の冬季営業については、11月1日のブログをご覧ください。





 
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