入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

        「夏」 (26)

2015年07月31日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など



  今日は良い天気になりそうだ。いつもなら入笠山と権兵衛山の鞍部、「アラスカの森」から「仏平」へ抜ける辺りは、伊那側と富士見側の気象がぶつかり合うため、この時間は大概ガスが発生している。今朝はそれがない。
 と、書いたのが午前6時、気温は15度だった。牧区を巡回して牛や罠の点検をし終えて管理棟に戻ってきたら8時半近かったが、夏の強い日差しを受けて気温はすでに25度まで上がっていた。車の中のラジオの予報は、37度くらいになる所もあると警告していたから、さすがにここも今日は暑いだろうと覚悟していた。ところが昼になっても気温は変わらない。いつの間にか青空よりも雲が空を覆い、日の光を遮断している。その上、いい風が吹く。まさに草原を渡る嫋嫋(じょうじょう)とした風である。物言わぬ牛にも、このくらいの陽気が一番快適だろう。

 ここは相変わらず静かなものだが、各地の山は中高年の登山者が目立つらしい。たまに富士見側へ行ってみると、その人の多さに驚く。ほとんどが中高年で、山頂に行くにはお花畑に幾つかの順路があるが、よく「どちらが近いか」と近くで交通規制に当たっている監視員に聞いている。どう歩いたところで、そこから山頂まではせいぜい3,40分なのだが、少しでも楽をしたいようだ。手許には案内を兼ねたパンフレットを持っていても、近くには案内図があっても、とにかく何事でも尋ねることに躊躇しない。2万5千分の1の地図の見方どころか、その存在すら知らぬ人たちばかりだろう。
 よく山では、「引き返す勇気」ということが言われる。言ってる意味が分からないわけではないが、「勇気」というより「気力」だろう。不測の事態に遭遇したとき、それを乗り越えるには、折角何時間もかけた時間を、あるいは距離を、逆転させてゼロに戻さなければならないときがある。安易な方法に逃げて、事態をさらに悪くさせないためには、もう一度引き返す、登り直す、気力が要る。そしてその気力を支えるには、心の余裕が必要だ。
 例え夏山であっても、中高年は遅くも3時には一日の行動を終了すべきである。もし道に迷ったとしても、暗くなるまでにはまだかなりの時間がある。それだけあれば、既知の縦走路に戻ることができるだろう。
 バランスや跳躍力は若いころとは比較にならないほど劣化している。つまらぬところでいとも簡単に転倒する。滑落の可能性も潜んでいる。そういう山に行くのだから、せめて自分の力だけで調整可能な時間的余裕は、しっかりと計画に入れておくべきだと申し上げたい。

 F/C:Nさん、コメント多謝。皆さん頑張ってくれていて、頼りにしてます。お力添えをよろしくお願いいたします。

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        Ume氏の入笠 「夏」 (27)

2015年07月30日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

 午前5時、朝はまだ、雲が流れ、霧が湧き、今日一日の天候を決めかねているようだ。権兵衛山は例のごとく霧に閉ざされたままだが、その霧はここまでは下りてこない。少し明るくなって青空が透けて見えるかと思うと、また別の雲というのか、霧というのか、灰色や白いベールが執拗なまでにそれを邪魔する。どういう大気の状況ににあると、これほど空は主体性を失ってしまうのだろう。
 囲い罠の中の鹿が活動を始めたようだ。昨日は丘の上の草むらに身を潜めて終日姿を見せなかったが、こんな夜明けの平穏な一時なら安心だと分かるのだろう。その実、自分たちを捕えた張本人にさっきからじっと、その行動を見られていることも知らず。
 罠に閉じ込められたばかりのころは4頭がいつも一緒に行動していたが、今見ていると単独でフェンスに沿って、慎重に下の方に下りてくる鹿もいる。何とか今のうちに、脱出口を見付けようとしているのだろう。これ以上見ていては情が移るばかりだ、止そう。
 優柔不断な朝も、ようやく青い空を覗かせ始めた。高い空を一羽の鳥が東の方に飛んでいく。

 久しぶりに夕立が来た。ただ雷鳴は聞こえず、管理棟に戻ってきて間もなく、雨も止んだ。上空の雲はそれほど厚くはないのか、目の前の森には、夕暮れ時の日の光をそれとなく感ずるほどの明るさがある。何だか今に虹も出そうな雰囲気だ。
 今夜で山の人になって三晩を迎える。冷凍庫にはまだ肉や魚があるが、冷蔵庫には卵と納豆ぐらいしかない。ここで暮らしているとどうしても、食はおろそかになるが、まずは風呂に入り、それからだ。実は今朝は1時半に目が覚めてしまい、それから寝てない。汗を流し、FMZ君の送ってくれたビールを有難く飲めば、暮色に染まる牧場(まきば)の夕暮れがまた一段と趣きを深め、一夜の天国への近道を教えてくれるだろう。

 Ume氏は仙丈へライチョウの取材にいったようだが、その後どうしたことか。8月12日からのペルセウス座流星群、天文ファンの間では期待が高いが、かんと・TBI氏グループ以外に、その方面からの問い合わせはY先生だけだ。天文ファン、どうした!?

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        「夏」 (25)

2015年07月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  昨夜、夕焼けを見ようといつもの場所へ行ったら、西の方角はあいにくの厚い雲で、ふと見上げた頭上の雲がまさに茜色に染まり出していた。急いでもっと広い空の見える高台に移動すると、白い月と夕焼け雲が、入笠山の上に浮かぶように見えていた。
 山の人になって今朝、2時半に起きて外に出てみると、満天の星の圧倒的な輝きにに驚かされた。すでに月の光の影響はなく、牧場(ここ)だけの夏の夜空が広く、深く、壮大な眺めを見せていた。
 星空はいつ眺めてもいい。「無窮の遠(おち)」という言葉は讃美歌で知ったが、この言葉以上にこの宇宙の広大さを、深遠を、実感させてくれる言葉を知らない。確かにキリスト教が説くように、「私たちは終点」ではなかった。「み空」はわれわれのためにあるのではなかった。偶々宇宙の極小域のそのまた小さな惑星に生まれた、ちっぽけな存在でしかなかったことを近代の科学は解明し、われわれはそれを受け入れた。星空を眺めれば、その認識がむしろ、何も語らぬ暗黒の宇宙の途方もなさを、不可知であることを、かえって逆に抗いようもなく、ひしひしと感じさせてくれる。
 敬虔な信徒であったあの人たちとは違い、人類がとるにたりない矮小な存在であろうとも、そんな事実に不服であったり、「「耐えられない重荷」だと思うことはない。



 撮影隊は予定通り、朝の6時ごろにやって来た。しかしこういう時に限って、牧場は深い霧に覆われてしまった。それでも辛抱強く待ち、9時過ぎにやっと撮影が始まった。
 ・・・そしてまた長い一日が過ぎ、たった一日の縁かも知れないが無事終えた撮影隊一行を、夕暮れの中に見送る安堵感もいいものだ。プロジェクトの成功を祈る。

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        「夏」 (24) 

2015年07月28日 | 牧場その日その時



 「オイ、そんな所でなにしてんだ?」
 「何言ってるんだ、早くここから出してくれ、頼む」
 などという会話が、牛と囚われの鹿の間で交わされたのだろうか。同じ偶蹄類同士、親近感はかなりあるようで、一緒に草を食んでいるところをよく見かける。今朝、大型の囲い罠に鹿が4頭入っていて、すると牛たちはわざわざその近くまで行ってからどっかりと横になり、フェンス越しに反芻を始めた。鹿は仲間が助けに来てくれたと喜んだだろうに、その期待を裏切って平気を決めているのが牛である。一昨日に掛けた貴婦人の丘の罠にも、小鹿が1頭掛かっていた。

 何度も書くが、決して雨が嫌いというわけではない。霧の立ち込める草原や森を、雨に降られながら歩くのも悪くはない。しかし、今日のように商工会議所のメンバーが来ることになっていたり、商業撮影の下見や本番があるといえば決まって雨になり、頼みの天気予報も複雑な昨今の天気状況では台風を当てるぐらいが精一杯のようだから、本当に予定が立たないし、立てれば狂う。こんな山の中で、外で仕事をする身でないと、このあたりのことは分からないかも知れない。
 予報では、30分後は100%の確率で雷雨のようだが、賑やかな鳥のさえずりが聞こえてくるだけで、雷鳴はまだしない。明日は早朝から撮影の立ち合いのため、今夜は山の人になる。

 まだまだ夏の予約は山小屋もキャンプ場も余裕しゃくしゃく、静かな牧場と周辺の山、そしてどこにも負けない美しい星空をご堪能ください。
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        「夏、星空の競演」 (23)

2015年07月27日 | 入笠牧場からの星空

天の川銀河                          Photo by Ume氏

 上のUme氏の作品は、7月20日の夜から21日の朝にかけて撮影されたもので、氏の言によれば「『赤道儀もどき』を利用した広角レンズによる撮影」とか。集光力は肉眼を超えるが、牧場(ここ)に来れば、ほぼこんな天の川に出会えることだろう。
 一方かんと氏は、以下の3点。19、20日と連泊し、予想以上の好条件の星夜に恵まれた。他にもう1枚天の川のパノラマ写真もあるが、次の機会に紹介させていただく。なお、かんと氏、今回は望遠鏡を使用してない。


 アンタレス周辺                       
 

 デネブ周辺の天の川銀河


 たて座の天の川銀河

 この夜幕営したFさん、先日はコメントありがとうございました。上の写真があの時に撮影された星空の作品です。入笠牧場の実力!です。
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