入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「秋」(56)

2020年10月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

 あれほど苦労と危険を犯して捕らえた老牛27番までを逃がし、誰もが疲れ果てて帰ってきた。どうやら、捕縛していた綱の持ち主を次々に襲い、ひるんだすきにまんまと逃げおおせたようで、牛に勝負あり、と言うしかない。
 そうした最中に現場を離れ、待機していたトラックまでの往復の間でも、25番1頭だけを残した場合、事態はさらに困難になりはしないかということを考えていた。老牛27番をロープで繋いで、水と食料を運び、25番を近くに留めておくようにした方がまだ、その先の手立てが生まれるような気がしないでもなかった。だから、2頭を逃し、残留という結果には、25番を捉え損ねたときほどに落胆をしないで済んだ。

 一昨日と昨日、再度使う機会が訪れるのか分からない檻を、単管の間に牛が首を突っ込めないよう周囲をネットで巡らし、8本の支柱を使い檻全体を強化した。その間にも、檻から数百㍍離れた落葉松林の大岩の傍に、2頭の牛たちが根城のようにしている場所を突き止めておいた。
 一昨日は遠くから場所の確認だけで済まし、昨日はさらに接近し、20㍍くらいの距離から沢を挟んで「Autumn Leaves」を聞かせてやった。長いロープを3本も引き摺った27番は、それがどこかに引っ掛かり、動けない可能性もあった。
 牛たちが美声に酔うはずもなかったが、少しも逃げようとする態度を見せないので、注意しながら接近を試みた。5歩、10歩・・・、牛はそのまま動かない。25番はそうしようとすればいつでも逃げることができるはずなのに老牛の傍らから離れようとしない。ついに2頭の牛に手を伸ばせば届く距離まで接近した。抱えていた配合飼料をそれぞれの目の前にある手ごろな大きさの石の上に置いてやると、牛たちはそれを素直に食べ出した。
 その間に、27番が引き摺っていた気になる一番長いロープを、近くの太い木の枝にブーリン結びで繋いだ。取り敢えず27番はそれで確保できたが、以後、水や食料を自由に得ることはできなくなる。これが正しい処置かどうかは分からなかった。当の牛は食べる方に夢中でそのことに気付かなかったと思う。きょう、状況次第では、27番の自由を奪っているロープを含め安全の為、全てを切ってやることも考えている。
 まだそれほど楽観はしていないがもう一度、2頭の牛たちとのの関係改善、信頼関係を取り戻すことができるかも知れない。ただ、そう思いつつも27番を自由にする前に、25番をくくり罠で捕まえることができないかという考えも、頭の端にはあるのだが。(つづく)
 本日はこの辺で。
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