入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

冬の入笠牧場 (6)続 その日その時

2014年02月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など




 みろく山の会の到着はまだだろうと思いながらも、軽い散歩のつもりで弁天前の三叉路まで行ってみる。今日も天気がよく、風もない。
 ウサギの足跡が遠くの森から目の前の雪原を横切り、さらに急な雪の斜面を登りその向こうに消えている。何か目的でもあってのことだろうか、足跡は一直線に続いている。急いでいるようにも見えるその焦慮の訳を、ウサギに聞いてみたいものだ。
 弁天前からは北アルプスがよく見える。見慣れた山々の景色を眺めながら、この先いつまで入笠で、今のような平安を味わっていられるだろうかと考える。ただウットリと雪山に見とれていれればよさそうなものなのだが、つい。

 ふと人の声がしたような気がした。昨日残してきた雪道の上のスノーシュー(ズ)の跡を目で追っていくと、小梨の枝の間に動く人影のようなものが見える。来た来た、予想よりも大分早く。どうもトップで引っ張っているのは、女性のよう。
 総勢13名、そのうち女性6名。最高齢者は”歌を忘れぬ80歳”(と、お呼びしてもよいでしょうか?)。顔見知りの人とそうでない人が半々ぐらいか。OZWさん、リーダーの女傑AKWさん、そしてロマン派ADCさんは無論いる。
 
 小屋で人心地したら、もうまた面倒な足回りの装備をし直して、雪の森に三々五々元気な後姿が遠ざかっていく。
 明日は入笠山の頂上を踏んでから、ヒルデエラ(大阿原)経由テイ沢の予定とか。朝5時起きの7時出発だと。怖ろしい。                          
                                
                                         2月23日記(つづく)


 
  
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬の入笠牧場 (6)その日その時 

2014年02月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 ― かくして22日、冬山の夜が来た。

 酒の酔いと心地よい孤独感が訪れる。無音、ゆっくりと過ぎてゆく時間も酔いを深める。
 
 外に出てみると、冬の星座の中でも一際目をひくオリオン座が主役を張っている。気温はマイナス10度ほど、風もない。
 大犬座のシリウス、小犬座のプロキシオンとともに冬の大三角形を構成するベテルギウス、近年その距離が600数十光年に改められただけでなく、すでに爆発しているかもしれないなどという話も聞く。
 双眼鏡を取ってきて、オリオン座の三ツ星の下の星雲M43に焦点を合わす。妖しい光は深い闇の中で、宇宙の物語の断片を語ってくれているようだ。
 
 オリオンの三ツ星では思い出すことがある。
 もう昔のことだ。日本赤軍という極左の日本人メンバーが、イスラエルのテルアビブの空港において銃器を乱射し、その結果多数の死傷者を出すという事件を起こした。
 日本人3人のうち生き残った1人が、死刑判決を覚悟した裁判で「信じているわけではないけれど、この手で殺した人々も自らも、死んだらともにオリオンの三ツ星になれる思うと救われる」、という意味のことを言った。丸刈り頭、朴訥な青年の顔立ち、着ていたストライブ模様のシャツ、事件の凶悪さからは程遠い印象のこの男は、終身刑を打たれた。その後心身を沮喪したとも報じられたが、あの事件からは40年以上にもなるだろう。彼にとっては、死刑よりも重い判決となったのかもしれない。
 こんな冬の夜の山奥にいて、異国の地で虜囚となった1人の日本人のことを、しばらく頭の中から追いやることができずにいる。

 
 明日23日には「みろく山の会」の会員13名が来る。懐かしい顔も当然入っている。
                                      2月22日記(つづく)

  

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬の入笠牧場 (6)弁解編

2014年02月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 

 
 昨日のブログを読み返してみると、管理人はまるで酔っ払い。そんな状態で入山第1夜を迎えたのかと受け取られかねないが、実際には当然いろいろな作業をした。例えば、スノーシュー(ズ)を履いているうちにガスボンベを雪の中から掘り起こしガスをつかえるようにして、ハウスとキャンプ場トイレへの通路を確保。ひとたびスノーシュー(ズ)や二重靴を脱いでしまったらまた履くのは大変だから、思いつく屋外でのその他の仕事もみんなやってしまう。
 それからハウス内のストーブの点検・給油、室内の清掃、例年のことながら”トイレの床下の住人”アナグマから蒙るる被害状況の確認と修理、電灯の付替え等々。そうそう、雪を溶かして水を確保するのも重要な仕事だ。

 

 どうやって管理棟内にはいったかの詳細は避けるが、もう一か所の入口付近の除雪にも苦労した。ウッカリ、スコップを全部倉庫にしまってしまったため、手やちり取りでその作業を行わなければならなかった。
 以上のような仕事をし終えた上でようやく入山を寿ぐ祭が始まり、夢か現か判然としない状態のまま22日の記録は綴られた、というようにご理解いただけたら幸い。ウーン。

 
     雪に埋もれたキャンプ場のトイレ

 言い訳がましいことを書いていたら、今日のスペースがなくなってしまった。「海山さん」には深甚なる感謝を伝えたい。このブログが続いているのも、みんなあなたたちお二人のお蔭。カールママさんにもコメントありがとうございました。また、熊本からわざわざ来られたXさん、よもやその日、山小屋「農協ハウス」に退化した管理人や、元気な男たち、ご婦人方が13人もいたとは思いもよらぬこと。接見能わず残念でした。また山桜の咲くころお出かけください。仕事の多忙な東京野歩路会の井上さん、「祭は終わった。蕩児の帰還の時が来た」は誰の言かと。今度お見えのときに分かります。ハードボイルド川島さん、盆栽の似合うのがまた素晴らしい。わが奇人の会の「百姓山奥いつもいる」氏は、豪雪の中、もう10日以上にもなるのに孤独に溺れ、人の顔も見ず、山奥の小屋で酒と雪かきの日々とか。ご苦労様です。奇人に「別格」が付いたら、もう会からは除名ですよ。
 (明日も続きます)


 

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬の入笠牧場 (6)

2014年02月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 「番外編」では、車で「ど日陰の曲り」まで行けなければ「法華道」を登ると書いた。しかし、14,15日の豪雪の状況などの考慮して、今回はもっとも安全・確実な富士見パノラマのゴンドラを利用させていただくことにした。富士見パノラマリゾートのK氏を始め関係者の方々にはお世話になりました。
 
 
  忸怩たる思いもないわけではないが、ひとりでラッセルしながら「法華道」登るとなるとどれほどの時間を要するか予想もつかず、迷いぬいた末今回は避けた。千代田湖から芝平峠のコースは、高遠興産の社長に聞けば「人も通れない」ほどの雪だと。

 
 

 ゴンドラの山頂駅からは、豪雪で3,4時間もかかりはしないかと心配する人もいたが、予測通り1時間ほどで管理棟に着く。
 途中マナスル山荘前からは踏み跡がなく、新雪の上を進む。スノーシュー(ズ)の威力を感じながらも、背中のザックの重さが気になる。ビール500ccと350ccが各半ダースづつ入っている。
 
 もう、思い返すだに疲れてしまうが、かつては登攀具、食糧、衣類、寝具そしてテント、一体それらをどうやってザックに詰め込み、長い山道を登っていったのだろうか。今回はビールの他は食糧と羽毛服、それに少々の着替えだけ。食糧は、発泡スチロールの小箱に入れるというガードの固さ、というかこれはもう堕落だろう。

 ほぼ正午に到着。入口の戸が開かず、さんざん苦労して小屋に入る。寒い。見慣れた風景とは言え外が見えた方がよいと、防寒用にレースのカーテンの上に架けておいた毛布をまくり上げる。

 

 ビールよりも今日は冷えてドロドロしたウイスキーが美味い。酔いの深まりとともに何もする気になれず、音楽を聴きながら呆けている。「G線上のアリア」、「ソルウ”ェイグの歌」、タイスの「瞑想曲」・・・。

 夕暮れとともに気温が急速に落ち始めた。さっきからずっと何をしていたのだろう。冬の山の夜は長い。もうすぐ底のない闇の中から、遠い過去の牧人たちの、不可思議な想像力が名づけた星々の群れが、冬の夜空に輝きだすことだろう。2月22日記。(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬の入笠山(続番外編)

2014年02月17日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

  天竜川と中央アルプス

 長いこと入笠にも行けないまま、ブログからも遠ざかっていた。操作も久しぶりのことであれば、PHの取り込みにも苦労するような始末で、よくこんなことで半年近くも勝手なことを綴ってこれたもの。

 今日は犬を連れて、天竜川へ出かけた。今週の土曜日(22日)からようやく3泊4日の予定で入笠に登るのだが、犬も一緒で大丈夫かとその確認をしておきたかった。HALはすでに何度も冬の入笠を経験しているが、もう1匹のキクはどうなるか心配だ。このブログの読者の中には、この犬の少々(でもないか)凶暴で攻撃的な性格をご存じのかたもおられよう。


    手前がアサンジ・アジモへタ・キク

 上にも食糧は置いてあるが、もうその内容までは覚えていない。10食以上を持ち上げるのは、結構きつかろう。それにビールは前回すべて飲んでしまったから、最低でも半ダースは要る。ウイスキーとワインはまだあった。インスタントやレトルト食品はなるべくなら遠慮したいとなると、食糧計画も簡単にはいかない。昔は一体山で何を食べていたのだろう。

 山へ行くのはすき焼きを食べるためと、休憩の快感を味わうためだと言った男がいた。この男が山へついて来るようになって、堕落した。しかし、下山して駅前の肉うどんで済ますことができず、山行費用よりも高くつくことを覚悟で焼肉を食べるようになった責任は、この男ではない。

 ずっとずっと以前、マッキンリーのアメリカンダイレクトで消息を絶ってしまったOさんからは、「山でビールを満足するまで飲もうなんて、途方もないことですよ」とたしなめられたものだ。以来山でビールが切れると、必ず彼のことを思い出す。そして我慢した。しかしもう、我慢しても仕方ないという気もする。前述の”すき焼き男”ではないが、いまでは山に行くのは、・・・止めておこう。

 今回のコースは、高遠興産によって除雪されていれば千代田湖・芝平峠経由で「ど日陰の曲り」まで車、そこから徒歩で1時間半くらい。そうでない場合は、芝平の諏訪神社から法華道を4,5時間の予定。

 長い間のブランクにもかかわらずアクセスしてくださり、ありがとうございます。


    油小路HAL2001
   
 

 
 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする