入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

      ’17年「秋」(64)

2017年10月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

        Photo by Ume氏

 昨日はあんなことを書いた。あまり安易な観光地開発が日本国中にはびこり、自然がしぜんでなくなってしまってもよいのだろうかという日頃の思いを、つい漏らしてしまった。
 
 この独り言は一応、入笠牧場内のキャンプ場と山小屋の広報宣伝も買って出ている。そのことは充分に承知している。そういう立ち位置からすれば、昨今の観光事業や政策にあれこれ異を唱えるのはいかがなものかという気もしないではない。また、つい「安易」と書いたが、どこの自治体であれ、企業であれ、安易に巨額の投資をするわけがないし、村起こしのために温泉を掘ったり、山の斜面を切り開きスキー場を造ったり、湖のそばに観光施設を造たりしたい気持ちはよく分かる。上手くいけば、細々とした農業や林業しかなかった寒村にも新しい仕事ができ、人も集まる。
 しかし、一時の成功例はあっても、長く続かせるためには、立ち上げ以上の苦労と努力が要ると言われる。観光地が自然と融和するにも、相当の時間がかかる。上手くいけば人工物が自然や景観と一体化するが、調和できずに終わってしまう例もある。成功したようで、一過性の賑わいで幕を閉じる場合もあるし、そうなれば、一度いじくってしまった土地の復元も難しい。
 
 上高地、日本有数の観光地であり、その地位は今後も変わらないだろう。しかしもし、ウエストンを案内した有名な山案内人である上条嘉門次氏が、河童橋に立ったら何と言うだろうか。「何だ、このザマは」なんていって、怒り出したら面白い。
 神々の生まれてくる瞬間、などとも評される荘厳な朝焼けの穂高の山並み、太古の面影を見せる鬱蒼とした森、そしてその間を流れる靄のかかった梓川の清冽な水の色、こうした情景は幸い、と言っても良いだろうが、人工的な夾雑物でしかないホテルや旅館、それに蝟集する観光客を圧倒している。だから上高地が時代の変遷に耐え、今も人気を保ち続けていられる訳で、訪れた人々は梓川の両岸に建つ土産物屋や旅館やホテルも、いや自身を含めて観光客も、上高地の一部と受け入れ、それでも、彼の地の魅力は損なわれてないと感じているのだろう。あそこまでいけば信仰にも似て、しかし有名な寺院や神社などそこのけである。
 
 初めてこの地を訪れた時、吊り尾根の夕暮れを見て、夕陽に染まった岩肌の美しさが今でも目に浮かんでくる。半世紀も昔のことである。以来、春夏秋冬、幾たびあそこを訪れ、通過していったことだろう。(つづく)

  これからの季節は時代遅れの山小屋がオススメ。キャンプ場及び山小屋の営業内容につきましては、「H29年度の営業案内」「続H29年度の営業案内」を参考にしてください。
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     ’17年「秋」 (63)

2017年10月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昼ごろになれば雨も止むだろうと期待して、手作り弁当を持って上がってきた。1日見なかっただけで、「焼合わせ」から先の落葉松が思いのほか落葉していた。この辺りも「座頭沢」の一部になるのか日の当たりが悪く、それで昨日の乗鞍高原で目にしたような、裾野一体に広がる黄金の樹海にはなれないまま、敢え無く散ってしまったのかと思ったりした。
 昼近くになって、外の寒暖計は3度から4度の間を指していた。キャンプ場の炊事場を掃除していたとき、水の冷たさが指先に応えたが、この気温で納得できた。きょうは気温が下がるとの予報だったが、止むはずの雨はまだ降り続けている。

 昨日久しぶりに訪ねた乗鞍高原や白骨温泉、秋の行楽の時季としては意外と閑散としていた。閉店や休業している店や宿も目に付いた。いずれも名の知れた温泉地である。にもかかわらず、あの行楽客の数では「観光による土地の活性化」などというお題目を皮肉るようで、飲食店や宿泊施設で働く人たちのことまでが気になった。冬場は混み合うあの蕎麦屋も、行ってみたが閉じられていた。 
 狭い日本に、観光地が増え過ぎてはいないか。訪問客を当て込んで、どこでも似たような設備が建てられ、整備が行われ、自然を痛め傷付け、余分なことになってはいないだろうか。こう言っては何だが、そうした観光地を訪れる人たちに阿(おもね)り、いたずらに快適さや便利さを提供し、その結果がどうなったかを知っているだろうか。客足の絶えた行楽地、廃墟と化した別荘地、有名スキー場の今を見れば、きっと教えてくれる。

 明日は午後から安曇野穂高に出掛け、同地に1泊する予定。

 これからの季節は時代遅れの山小屋がオススメ。キャンプ場及び山小屋の営業内容につきましては、「H29年度の営業案内」「続H29年度の営業案内」を参考にしてください。
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      ’17年「秋」(62)

2017年10月24日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

        Phooto by Ume氏

 一昨日に続き、きょうも上には行かないで、木曽から乗鞍方面にこれから向かう。少し調べておきたいことがあるからだが、今週、そして来週も、仕事の合間を見て他所の土地や山へ出掛けたいと思っている。調べたい内容については、ここではまだ書かないでおくことにしたい。愉快なことではない。
 10月もすでに後半に入ってしまった。今週末、そして来週も、〝静かな予約"が入っている。

 紅葉の中、木曽から乗鞍、さらに足を延ばして白骨温泉まで行ってきた。紅葉は入笠よりも進んでいて、白樺の木などはすでに散ってしまっていた。驚いたことに、乗鞍岳は冠雪していた。もう、10月も後半、そういう時期がきたということをしみじみと感じて帰ってきた。
 明日はまた入笠から。
 
 この時期の入笠、特に紅葉については、決して失望することはないので、ぜひお出掛けください。
 これからの季節は時代遅れの山小屋がオススメ。キャンプ場及び山小屋の営業内容につきましては、「H29年度の営業案内」「続H29年度の営業案内」を参考にしてください。
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     ’17年「秋」 (61)

2017年10月23日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 台風一過とはいかず、すっきりとしない天気の中を上に来た。途中、小豆坂トンネルを抜けてすぐ、目に飛び込んできた山室川の水量の多さに驚いた。流れ下る間に枝沢からの谷水も集め増水したのだろう、濁流となって、場所によっては氾濫しそうなほどの勢いで流れていた。いつもなら渓相を美しく見せている岩の殆どが、駆け下る土色の水流に呑まれ、見えなかったほどだ。



 心配していた倒木は、林道を塞ぐほどのことはなかった。それでも、所によって道路の上に落ちた枝や、散った落葉が思いのほか多く、また、芝平を過ぎてからの未舗装の続く山道は、案の定そこを川同然のようにして流れた雨によって掘られたり、削れられたりして、これからまだ1ヶ月近くある通勤のことを思うと、気が滅入った。
 「池の平」の少し手前のちょっとした森には、落葉松の他に白樺やブナなどの落葉樹が残っていて、ここまで上ってくると一息つく代わりにそれらの木々を眺めながら、季節の移り変わりをあらためて感じたり、確かめたりすることが半ば習慣のようになっている。
 今朝はカエデやモミジの紅葉が特に目立って見えた。台風に連れ去られてしまったかと案じていた季節がまだ残っていたわけだが、その中でも、柔らかなオレンジ色をした控え目なモミジの葉の色が、赤や黄色よりも却って目を惹いた。まだ紅葉は続いていた。これからもまだ期待できそうで、普段は目立たない緑や黄色の葉が、意外とたくさんあるのに驚いた。

 管理棟も小屋も台風の被害はなかった。それでも、周囲から流れ込む水が道路に溢れたり、一部には溜まっていたりしていて、その上きょうばかりは枯れ沢もいっぱしの沢になって、大量の水を集め、奔放な水の流れを下流へと送っていた。

 これからの季節は時代遅れの山小屋がオススメ。キャンプ場及び山小屋の営業内容につきましては、「H29年度の営業案内」「続H29年度の営業案内」を参考にしてください。



 
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      ’17年「秋」(60)

2017年10月22日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など



 雨。うんざりするほど聞いた雨の音を、きょうも朝から耳にしながら、上に行かないで下にいる。牛がいればこうはいかないが、もう、こんな天気を押してまで行く必要はなくなった。秋雨前線に「超大型の台風」がぶつかり、天気はひどい荒れ模様になるという。そうした予報だか警報を、幾日も前から聞いている。これで、今まで丹念に色付けがされてきた秋の山々や森も、色彩を失い、季節もそれらしく進むかも知れない。
 
 確かに、きょう届いたKさんのコメントが言うように、葉をすっかり落とした初冬の森や林を歩くのは紅葉の時期とはまた違って、枯葉の落ちつくした山ならではの深い山気や雰囲気を味わえるだろう。長い秋の続くことを願っていたのに、いつの間にかそういう季節を心待ちにしているというか、その用意が気持ちの上ですでにできている、そのことに気づかされて驚いた。
 こう書く間もなくすぐに、上越や秩父の寂しく、少し暗い印象の山々の記憶が甦ってくる。しかし不思議なことに、入笠周辺の晩秋の風景はその中にはない。その理由はよく分からないが、あえて書くなら、心に浮かんできた山々がもう行くことのない山域として、すでに整理がついた懐かしい記憶だけの山になっているのに対して、入笠は現実そのままの山で、絶えず変化している。まだ記憶やら心象やらも散らばったままの状態で、整理がついていないからかも知れない。こじつけのようだが、そんな気がする。
 やがては、もちろん、10年以上を過ごした入笠やその周辺こそ、一番懐かしく思い返す日が来るだろう。枯れ葉がいつしか大地にしみていくように、10年以上の牧人の日々が、年月が、記憶の中に場所を見付けてしみこんでいき、そしていつかは、芳醇な旨酒に変わるだろうと、そんなふうに考えて期待をしている。
 もっとも、それまで長生きできればだが。クク。

 芝平峠より迂回したあの山道は、旧武田の金山跡といい、晩秋のある日にぜひ歩いてみたい、お勧めです。

 これからの季節は時代遅れの山小屋がオススメ。キャンプ場及び山小屋の営業内容につきましては、「H29年度の営業案内」「続H29年度の営業案内」を参考にしてください。

 
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