月末を控え、納金のために高遠支所へ下った。紅葉真っ盛りの中、林道には色鮮やかな落ち葉がさながら絨毯のように敷き詰められ、その夥しい量に自然の持つ力の途方もなさ、圧倒されるばかりの無駄を改めて感じさせられたものだ。
今年は夏が長かったから、里の紅葉は色彩を欠き驚くほど貧相で、他方杖突街道の走る狭い藤沢谷の田は、刈り取られた稲株からまた新しい芽が出始め、いつもなら感ずるこの時季の放置された田の閑散とした風景ではなかった。
往路は久しぶりに芝平の谷を下ってみたが、その荒れ放題の道に辟易して、帰りはいつものように千代田湖経由にした。
その途中、松倉の集落を走っていた時だった、1本の電話が入った。高遠支所のT君からで、その内容には驚いたというより、呆れて言葉をなくした。
いつのことだか知らないが、テイ沢から小黒川林道に出て、そこからは右、林道に沿って流れる小黒川を上流に向かって行くべきなのに、下流へ下ってしまった人たちがいたというのだ。高速道路を逆行する人もいるご時勢だから、こういうことも起こりうるのだろう。
戸台までは20㌔、どこまで下ったのか知らないが、親切な人の目に留まり、お蔭で大事なく車で送り返してもらったそうだ。それにしてもこういう時の登山者の心理というのは、引き返すよりかとにかく人里へ出たいという一心で固まってしまうものなのだろうか。
以前にも、高座岩からは20分も歩けば御所平峠に着き、そこからは山道を右に下れと教えたのに左の法華道に進み、20分どころか2時間以上もかけて荊口へたどり着いたやはり3名ほどの女性の登山者がいた。
こういう人たちに対して、行政はどこまで責任を持たねばならないのかは知らないが、調べに来るという。
それもいいが、あんな所で道を間違える人がいるなら、そういう心配をしなければならない場所が他にもいくらでもある。にもかかわらず、これまで行政は何もしてこなかったと言っていい。
伊那側のそこらここらにある不出来な道標、案内板は材料を工面して個人で用意したものだ。今は営業を中止してしまった種兵小屋の高橋さん夫婦も、それとは別に山道を整備し、同じことをしてくれた。その嚆矢となったのが、今は亡き北原のお師匠である。
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本日はこの辺で。