Photo by Ume氏
久しぶりに山容を見せた中アの山肌、思ったほど紅葉は進んでいなかった。駒ヶ岳、空木岳、いずれに対してもそれは期待外れというよりか、安堵感に近かった。上に来て、北アの穂高や槍、北方の鹿島槍、五竜、そして白馬と、遥かな山並みの色合いも、薄い青色にかすかに茶色が混ざっているかどうかというくらいだった。雨ばかり降ったし、また明日からもそのようだが、多量の葉を散らしながらもこの季節はまだ続きそうだ。
上に着くと、間もなく牛の声がした。昨夜帰るとき、第4牧区の電気牧柵のモニターが大量漏電の警報を出しているのに気が付き、暗い中をしばらく点検してみたが不良個所を見付けられず、諦めて帰った。だから、牛たちのことが心配だった。それに、雨が続いたので給塩を控えていたから、それも気になっていた。
塩場に行くと、昨夜はどこにいたのか全頭が待っていた。この牛たちは昨日になって、つまり下牧を二日前にして、それまでいた囲い罠から放牧地に移動していたのだ。明日の下牧を考えると、もうきょうだけのことに、山あり、川ありの広い第4牧区に散らしてしまうよりも囲い罠に置いた方が良いだろうと、移すことにした。
いつものように笛を吹きつつ誘導を始めると、牛たちの群れは素直に付いてきた。4か月の付き合いが長いか短いかは分からないが、大きな図体をした牛が列をなし、さんざん怖がったゲートを通り抜けてくる姿を目にすれば、それは彼女たちを調教した管理人への最大の〝孝行″と思えた。
明日パドックまで誘導し、検査を済ませてトラックに乗せてしまえば、それが別れだ。牛たちには、今までとは全く違った「家畜としての宿命」が待っている。それを知らず、モクモクと草を食べてる姿を見守るのも、きょうまでだ。
Ume氏の渾身の作がまた届きました。ご期待ください。
これからの季節は時代遅れの山小屋がオススメ。キャンプ場及び山小屋の営業内容につきましては、「H29年度の営業案内」と「続H29年度の営業案内」を参考にしてください。