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『ソクラテスの弁明・クリトン・パイドン』プラトン

2015-09-03 | 読書

内容(「BOOK」データベースより)
自己の所信を力強く表明する法廷のソクラテスを描いた「ソクラテスの弁明」、不正な死刑の宣告を受けた後、国法を守って平静に死を迎えようとするソクラテスと、脱獄を勧める老友クリトンとの対話よりなる「クリトン」。ともにプラトン(前427‐347年)初期の作であるが、芸術的にも完璧に近い筆致をもって師ソクラテスの偉大な姿を我々に伝えている。


『船に乗れ!』に頻繁に引用されるので久しぶりに読んでみた。確か大学のときこれで小論文書かされた記憶。

30年ぶりに開いた頁には、熱心に波線やら二重線やら引いてあって、全く覚えてないが当時は必死に読んでたのかな。

まあ内容紹介の通り、ソクラテスは不正な死刑宣告を受け、抗うことなくそれを受け入れ己の正義を通すのだけど、町の物知りを自認する人を片っ端から論破して恨み嫉みから訴えられた結末。
ぶっちゃけこんな屁理屈ジジイは嫌われるだろう間違いなくw

訳文のせいかそれとも古代ギリシャ当時の言い回しなのか、いちいち回りくどいことこの上ない。弁論家として正確を心がけ論理的に齟齬のない発言を目指せばこうなるのか。それにしたって
「いいかね、クリトン、それには私なりの深い考えのあってのことなのだ、今からその自説をかみくだいて説明したい。それはつまりこういうことなのだよ。~」

と、一事が万事こんな調子で始めるのでイラつくw
で、どんな優れた哲学を展開するのかと思えば結局「正義を貫くことが神への道に通ず」みたいな宗教がかった結論ばかりで。

いやまあ、当時の時代背景というのも鑑みなくてはならないのだけど。それはつまりこういうことなのだよw

古代ギリシャのこの時期は「衆愚政治」と言われる民衆支持の多寡で方針を決めていたとか、多数決の原理というのは一見正しいようだけど、声の大きい人の意見が通りやすい面もある。だからソクラテスは大衆に人気の高い知識人政治家に論争をふっかけ、尽く論破してしまったわけ。

結果、プラトンなど若者の絶大な支持を受け時代の寵児となった、論破されたほうは面白く無いから訴える。にもかかわらず自己の所信を力強く表明したもんだから死刑にされちゃった。

弟子や知人が金を積んで許しをえようとしてもあるいは脱獄を勧めても、一切受け付けず「ここで法を破るのは今まで自分を守ってくれた国家への裏切りだから」と。

『パイドン』のなかでは死後の世界、魂の不滅を論理的に証明せんと熱弁するのだけど、21世紀人にはいささかうさんくさいかな。
もし身近にこんな人いたらたまったもんじゃないけど、本で読むぶんには愉快な爺さんです。


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