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『ララピポ』奥田英朗

2014-09-17 | 読書

内容(「BOOK」データベースより)
みんな、しあわせなのだろうか。「考えるだけ無駄か。どの道人生は続いていくのだ。明日も、あさっても」。対人恐怖症のフリーライター、NOと言えないカラオケボックス店員、AV・風俗専門のスカウトマン、デブ専裏DVD女優のテープリライター他、格差社会をも笑い飛ばす六人の、どうにもならない日常を活写する群像長篇。下流文学の白眉。


奥田英朗は不思議な魅力がある。

「下流文学の白眉」って、お上品な表現してるが実態はエログロ小説です、アングラでエロいしグロい。最初のうち村上龍の救いのないエログロを思い出して、読んでて気が滅入った。マンガで言えば「闇金ウシジマくん」とかそういう類。

それぞれ主役の違う6つの短編がうまく絡み合ってて、そういうのは最近多いので慣れてるけど、それぞれ悲劇的ラストに打ちのめされて、救いの無さに正直うんざりもしてこれは読み終わるかなあとそんな気持ちになったもんね。

ところが最後の話でそれまでの主役たちを様々な形でかろうじて救ってくれて、で上記にある一文「どの道人生は続いていくのだ。明日も、あさっても」と、幾分か晴れ晴れしさに包んで軟着陸。

つまりぼくの中でどお~んと落ち込んだ気持ちが最後にスカッと爽やかに変わる、その原因がこの一冊の薄い本なのだから、これはまさしく「白眉」かもしれない。

大臣になってもホームレスになっても死んだらみな一緒、でも生きてる限り明日は平等にやってくる、ならば愉快に生きようぜ、愉快じゃないなら少しでも愉快に近づこうぜ、という著者のメッセージ性はぼくの勝手な解釈かも知れないが、考えてみればどの作品にも精通して描かれているかもしれない。

奥田英朗といえば伊良部シリーズだけど、あれも「人より劣っててもややこしい問題に苛まれてても、気持ち一つで案外と楽しい人生が送れるよ」といった弱者への応援歌的な視点があるよなあ。

今回特にそれが顕著にショッキングに描かれてたわけで、「感動巨編」とか「不朽の名作」とかには絶対ならないけど、それでももしかしたら地味に傑作なんじゃないかな。

『ジョジョの奇妙な冒険』は「人間讃歌」だそうだけど、これもある意味人間讃歌だと思う。とても地味な。

ちなみに題名「ララピポ」は「ア・ロット・オブ・ピープル」を外人が発音したらこう聞こえるのだそうです。