内容(「BOOK」データベースより)
夏のはじめのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。あたたかくて、せつなくて、いとおしい。こころの奥に届く忘れられない物語。第32回(2004年) 泉鏡花文学賞受賞
なんとも不思議な空気感、夢か現か渾然とした小川洋子独自の世界。
登場人物には名前がなく、時代も場所も判然としていない。それ故どことなくファンタジー的なふわふわした空気の中で物語が展開する。
「ブラフマン」と名付けられた動物がなんなのかも明らかにしていないところがこれまた不可思議感を増す。
ブラフマンとは、ヒンドゥー教またはインド哲学における宇宙の根本原理。神聖な知性として見なされ、全ての存在に浸透している。それゆえに、多くのヒンドゥーの神々は1つのブラフマンの現われである。初期の宗教的な文書、ヴェーダ群の中では、全ての神々は、ブラフマンから発生したと見なされる。(ウィキペディア)
なんのこっちゃわからないが、要するに哲学を孕んだ物語なのでしょう。
題名から「死」を想像することは容易なわけだが、思い起こせば小川洋子は必ずってほど死=別れを物語の骨子にして、単に悲しいとかだけでなくより哲学的な見せ方をしつらえてるような。
著者の作品を説明するのによく現れる「静謐」という言葉。今回も静謐をそのまま文章にしたような本。
人により好き嫌いは別れると思うけど、こういうストーリーではない何かを売りにしたような小説はあとで読み返したりして案外と長く楽しめたりする。
ちなみに高崎線に乗って深谷から浦和までの往復で読み終わるのでお手軽です。