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『奪取』真保裕一

2014-07-08 | 読書

内容紹介
第10回山本周五郎賞、第50回日本推理作家協会賞長編部門受賞。
偽札造り──それは究極のだましのゲーム。
「そのお札を使ったところで、誰が被害者になるわけでもないんだ。おれの手を放れた紙幣は、また次の誰かの手へと伝わっていく。誰も気づかず、どこにも被害者はいない。札を造り上げた者だけが勝利者となる。
……おれは決めたぞ、雅人。この先何年かかるか分からない。けど、必ずこのゲームに勝利してやる!」


上下巻で900p超の力作、これは読み応えあった。もうお腹いっぱい!

なにせ偽札作りってことで製紙・印刷技術が内容の8割がたになる、専門用語と数字の海にこれはちょっとキツイなと思ってたら、突如ハリウッドばりの大立ち回り!

しばらくするとまた印刷用語が溢れて。だんだん専門語部分は斜めに読むようになってしまったが、ストーリーは変わらず魅力的。緊迫感がずっと続くような。

ただ、キャラに共感できないってのは致命的だなあ、残念だ。
だって普通に考えて偽札作りってかかった手間に比べて実入りが少な過ぎだし。

結局ある種の芸術家魂を満たすために作るという「職人」の世界、自己満足の世界じゃないの?
そんなに器用ならもっと情熱傾けること他にいくらでもありそうな気がする、って言っちゃったら野暮だろうけど。

日本の紙幣製造技術がいかに凄いか、現在の紙幣にどのようなテクニックが埋め込まれてるか、などを知ることは出来たがそれ以上でも以下でもないってところか。

ただの紙切れを価値づけしてその「信用」をもとに成り立つ世界、ちょうどここ最近金=ゴールドが急落しているって言うし、「価値」ってなんなのかな、という感慨に至りました。