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『図書館戦争2~4巻』有川浩

2012-08-30 | 読書
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お盆の間に貪るように本ばかり読んでいた。
ちょうど1年前に読みかけであった本作を一気に読みきる。

内容(「BOOK」データベースより)
正義の味方、図書館を駆ける!―公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として『メディア良化法』が成立・施行された現代。超法規的検閲に対抗するため、立てよ図書館!狩られる本を、明日を守れ



正化33年という架空の年号による近未来が舞台となってるが、描かれた社会は現代日本。公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる「メディア良化法」(実質上の検閲の合法化)が施行された世界。

検閲に際しては武力行使さえ許される。

メディア良化法を運用する「メディア良化委員会」とその実行組織「良化特務機関(メディア良化隊)」の言論弾圧に唯一対抗できる存在が図書館だった。かくして図書館は表現の自由を守るために武装し、良化特務機関との永きに渡る抗争に突入することになる。

というわけで、現代日本で重火器を使用した戦闘が実現されるのだけど、そこらの生半可なライトノベルと違い軍事的知識が半端無いため、リアルな軍組織、作戦行動、戦闘が繰り広げられる。

痛快なエンターテイメントとはこういうことだ。
著者有川浩という人はまぎれもないエンターテイナーだと思う。前に書いたか。

本を守るために機関銃を手にするというと大げさな気もしようが、作品の根底にあるのは現実世界でも問題視されている「言葉狩り」。

「床屋」という言葉を使ったがために検閲対象となるなど、軍が絡むか絡まないかの違いはあれど、リアルと変わらない。知らなかったがメディアでは「床屋」は実際に差別用語として認識されてるそうだ。

まあ、現実にこのような戦闘が起こったら先進諸国から糾弾され、内戦状態とされて政治的干渉を受けそうなものだけど、そこは置いといて。

案外と漢字の言葉が多く、検閲のおおもとが法務省だったりして政治的思惑が入ってくる関係で堅い表現も少なくない。っつーか、法律の解釈などがしょっちゅう出てきて、それでも読みづらさがないのは疾走するようなスピード感溢れる展開。

そして登場人物たちが魅力的なのは著者の持つ優れたバランス感覚のなせる技だろう。

今の自由に読みたい本を読める世界というのは当たり前のように感じているが、実はとても奇跡的で貴重なことかもしれない、なんて感じてしまう。

あえて苦言を呈するなら、女流作家ということで仕方ないが、ちょっとばかり甘ったるいんだよなあ。社会の動向とともにキャラクターたちの恋愛模様も展開するのだけど、思いっきり女性視点で描かれてるので、いささか辟易する描写も。いや、そこも人気の要素なのはわかるけどね。